追悼、加藤和彦

楽家加藤和彦氏が17日…とここまで書いて、なかなか次の言葉が書き出せない。死因はどうやら自殺らしいが、各部屋に遺書らしきものが残されていたそうで、相当な覚悟を持って死を選んだようだ。現時点で、その原因は明らかにされていないが、とにもかくにも、日本ポップス、ロック界の重鎮をひとり失った事には間違いない。
氏の経歴については今更述べるまでもないが、やはり、日本のポップス、ロック界に於ける、サディスティック・ミカ・バンドの存在は計り知れないほど大きいものがあった。当時の日本のロックは、未だ英語圏ロックの枠から抜け出せないでいたのに対し、彼らのサウンドは、日本語ロックとして非常に洗練されたものであった。特別に英語を意識せず、日本人が普通に日本語のロックを演奏する…それが商業的な成功を収めるのには、非常に困難な時代であったのだ。同じ日本語ロックでも、はっぴいえんどバッファロー・スプリングフィールドのような泥臭いロックを標榜していたのに対し、ミカバンドは明らかにポップであった。そして、彼らによって蒔かれた種は、80年代に一斉に花を咲かせ実を結ぶ事となったのは言うまでもない。フォーク・クルセダーズ、ミカバンドから現在に至るまで、脈々と受け継がれてきた日本人の日本語によるポップ感覚は、間違いなく氏によって齎されたものなのだ。
ご冥福をお祈りいたします。


サディスティック・ミカ・バンドの各アナログ盤LPとCDのBOXセット。下左は最後のオリジナルアルバムとなった『ナルキッソス』のCD。歴代3人目となった女性Voは木村カエラ