追悼。ジョージ・マーティン

去年の11月、ビートルズのデビューシングル「ラブ・ミー・ドゥー」でリンゴの代わりにドラムを叩いた事で有名な、アンディ・ホワイト氏が死去した。新聞等では"五人目のビートルズ"として紹介されていたが、この"五人目"というのは、実はたくさんの人々が存在している。…そんな話をブログの記事にしようかな?なんて考えていたら、先日、ジョージ・マーティン氏の訃報が飛び込んできた。
実際、ビートルズに関わった深度でいえば、マネージャーであったブライアン・エプスタインか、このジョージ・マーティンのふたりを上げる事が出来るが、音楽的な意味での繋がりでは、やはりマーティンが一番だろう。もの凄く乱暴なものの言い方をすれば、ビートルズの楽曲の半分はジョージ・マーティンで出来ているといってもいい。彼の偉大な点は、ビートルズから、彼等の持つオリジナリティーを奪わなかったという点だろう。もしも彼が、音楽的(楽典的)に正しい事だけをやろうとしていたら、ビートルズの成功はなかったかもしれない。だから、クラシック畑の外部プレイヤー達は彼等の注文や曲の構成について、一応に驚きの声を上げたのだ…ありえない!と。彼等のアイディアを尊重し、それを実現した事が彼の最大の功績だったと思うのだ。メンバーは彼へ絶対の信頼を寄せており、殆どのオーケストラのスコアは彼の手によるものだった(ポールが完成を焦って、外部に発注した「シーズ・リビング・ホーム」と、アルバム『レット・イット・ビー』に収められた幾つかの楽曲を除く)。
以前、このブログでも紹介したが、「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」での作業は神がかり的なものであった。そもそもこの楽曲は、完成形としての異なる2つのバージョンが存在しており、それぞれ、キーもテンポも異なるものだった。ひとつはバンド演奏がメインとなるバージョン。もうひとつはマーティンのスコアによる管弦楽器とリンゴのドラムにSEを追加したもの。選択に迷いあぐねたジョンは、マーティンにこう指示した。前半はバンド、後半は管弦、これをニコイチで頼む、と。デジタル処理で音程や速度が自由に変更出来る現在ならいざ知らず、当時は、キー(音程)を落とすためにはテープの速度を落とさねばならず、逆に上げるためにはスピードを上げなければならなかった。つまり、どちらかにキーを合わせようとすれば、双方のテンポが合わなくなってしまうのだ。ところが、試行錯誤の末、ある速度に合わせると、偶然にもキーが合った。繋ぎ目となるその地点は、曲の開始からぴったり1分後。それは、恐らく言われなければほぼ気付く事はない、奇跡の繋ぎ目なのだ。


Take-7


Take-25&26


このビデオだと59秒辺りが繋ぎ目となる。

ジョンは『ザ・ビートルズ(通称:ホワイトアルバム)』に於いて、リンゴの為の楽曲、「グッド・ナイト」を書き上げた。もちろん、スコアはマーティンに丸投げした。ジョン曰く、(リンゴの曲にしては)ちょっとやり過ぎた。おやすみ、ジョージ・マーティン。