完全生産限定盤BOX仕様『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 VOX』(NIAGARA TRIANGLE Vol.2 40th Anniversary Edition)を聴く!(その2)

散々苦言を呈したところで、次はいよいよその音質である。
前回も書いた通り、『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 VOX』本編は、Blu-ray Disc(Blu-ray Audio)に収録されたこのハイレゾ音源のみのである。従って、今回の新しいマスタリングは、通常盤を入手しない限りは、30周年記念盤との比較は出来ない、のである。で、結局通常盤を買わされる羽目になったわけだ…(笑)
というわけで、まずは通常盤の説明から。

Disc-1が本編。
Disc-2が
1.「スピーチ・バルーン 1982」
2. ニッポン放送「スピーチ・バルーン 2012」
3.「A面で恋をして」 [1981/12/3 Headphone Concert]

となっており、Disc-2の1.2.は大滝自身が語る解説音源と、ラジオ音源なので、今回はオミットさせていただく。因みに3.のみVOXとのダブり。


では本題。実は、NTV2のマスターはロンバケと違って、オリジナルマスターが1本しか存在しない。もちろん、セイフティーコピーなんかは存在するのだろうが、とりあえず、オリジナルアルバムから40周年記念盤まで全て同一のものを使用している。また、マスタリングを手掛けたのが、ロンバケ40周年記念盤と同じ内藤哲也氏であることから、同じような音の傾向を目指したのであろうことは容易に推測できる。まずはトップを飾る「A面で恋をして」。自分の場合、CDは「選書」から入ったクチだが、この曲、実は89年リマスター盤ではカットされるという憂き目に遭っている。一聴して、30周年より、滑らかさが際立つのが判る。この曲のキモは何といっても多彩なSEに尽きるが、ロンバケでは上手く収まっていたSEの類が、NTV2ではそこだけ浮いてしまっている感が強かった。ちょっと、やり過ぎと言うか、デジタルすぎたというか、だが、今回は、鮮度があるのに完全に溶け込んでいるという感じ。佐野サイドに入ると、冒頭の語り(大滝曰くハナモゲラ語)は相変わらずだが、リズムが鳴った瞬間の今までと違う感じに驚く。実はこのアルバム、三人が全く別のプロジェクトで録音していたため、それぞれの音の違いが顕著であるのだが、今までのどの盤よりもすんなりと入り込んできた。というか、その辺りの摺り合わせ具合が絶妙。杉サイドでも全く同じ。もちろん、各々の違いは厳然として存在しているのだが、違和感の様なものが取り払われた感じが強い。特に杉サイドでは、昔から、ちょっとはっちゃけた感があって、その辺りが他のサイドとズレていた気がしていたが、今回は、もちろん多少のヒステリック感は相変わらずだが、それ程の違和感を感じないのは、40年の歳月により、耳の機能が加齢で低下したからというだけではあるまい(笑)。

さて、お次は、今度こそVOX本編の内容を聴いてみよう! というわけで、Blu-ray Disc(Blu-ray Audio)に収録されたハイレゾ音源である。一聴して判るのは、やはり空気感の様なものが感じ取れるという事。CDでのこじんまりとした印象から、余裕のある広がりを感じる。「A面で恋をして」では、あたかもサラウンドかと錯覚するような、音の奥行と広がり感に圧倒される。バックで終始鳴り続けているスレイベルも、CDでは何かうるさい高周波みたいな金属音でしかなかったが、ちゃんと鈴の音してる事にまずは驚かされた。佐野サイドは、通常盤で書いた通りだが、音の摺り合わせ具合が完璧だと判る。「Bye Bye C-Boy」はコーラスがより際立って、大滝の言っていたリヴァプール・イディオムの意味を完全に理解する瞬間でもある。杉サイド「Nobody」。やや団子状に鳴る音が、あの辺りのビートルズの音である事に気付かされる。「夢見る渚」は夏気分満載のシンセに思わず80年代初頭に引き戻されるが、中音域がやや膨らみ過ぎて、大げさに鳴り過ぎる感がある。「オリーブの午后」では、ロンバケの世界再びみたいな世界が広がる。「A面で」と同じく、終始鳴り続けているスレイベルやジングルの類がノイジーにならないのが驚きで、更にベースラインの細かなディテールがはっきりと聴こえ、実はこの曲のキモとなっているのがよく判る。大滝のアルバムには曲ごとにミュージシャンのクレジットが記されていないので、これが、長岡道夫か後藤次利かは判別できないが、ベースラインや音の細さから次利の可能性が高いと思うが、スラップ(当時はチョッパーと言っていたが)はほぼ入っていない。変わって「白い港」。これは誰が聞いても次利のそれと判る。ただ、こんなに表に出ていたかなあ?と思うほどベースが効いている。もっと雄大なゆったりとした曲の流れだと思っていたが、小気味よいベースが今までの印象を覆す。最後「♡じかけのオレンジ」。CDと比較すると、シンセベースが僅かに前面に出ているが、これは長岡道夫のベースをプロフェット5でなぞって打ち込んだらしい。ブラスも結構ラウドに鳴っているがわかる。
ところで、ロンバケはVOX発売後、SACDがパッケージ化されたが、NTV2はどうだろうか? (その1)でも書いた通り、この40周年記念盤が結構ギリギリのところで成立している様な気がしてならないので、発売してくれたらありがたい、くらいのところかな。ロンバケの様に、シングルレイヤーのみでの発売はキツイかな?とも思う。
(この項、完)