ギーゼキングのドビュッシー

ギーゼキング(Walter Gieseking)のドビュッシー作品集が1,000円程度で売っていたので買ってみた。彼は1956年に亡くなっているので、自分が生まれる前に活躍していたピアニストだ。
CDは5枚組で、それぞれの紙ジャケの裏に虫眼鏡じゃないと見えないくらいの字でレコーディングデータが載っている。何々…Studio No.3 Abbey Road…なぬっ!更に驚くことに、レーベルがEMIではなく、PARLOPHONEとな! 元来パーロフォンは、クラシック音楽の本道からちょっと外れた音楽を専門にしたレーベルだったが、ドビュッシーなんかは当時のクラシック界では、まだまだ現代音楽として扱われることも多かったので、このレーベルで録音されたのかもしれない。とここで思ったのが、ジョージ・マーティンのこと。この作品集は53~55年に亘って録音されているのだが、ビートルズの初レコーディングが62年だから、年齢的にこの録音に係わっていてもおかしくはない。Wikiで調べてみると、マーティンは50年にEMIに入社しているが、パーロフォンのマネージャーになったのは55年とある。う~ん、かすってはいるがどうなんだろう?これはもう、彼の自伝かなんか、詳しく載っている文献を漁るしかないか。ていうか、だから何?という気がしないでもない(笑)まあ、面白い偶然があったよ、という話でした。

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ドビュッシー作品を一番理解している演奏といわれるが、個人的にはテンポや解釈に違和感を感じたりする作品もいくつかあった。録音はMONO、保管状態は良いと思うが、やはり時代を感じてしまうのは仕方ない。このCDは2011年にリマスターされた音源を使用しているが、実はSACD盤も存在しているという歴史的な作品だ。2013年にパーロフォンはワーナーに売却されたので、このCDもワーナーから発売されている。

バンドの行方

今の時代、音楽活動を続けるってのは、そんなに難しい事じゃないし、ネットを使えばCDなんか作らなくったって、作品を世に出すことも可能だ。でも、バンドを続けるってのは、そう簡単な事じゃない。もしもバンドマンのあなたが、今、何の不自由もなく、バンド活動を続けられているのなら、その事実に感謝しなければいけないと思う。

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約2年前、久しぶりに、というか新しいバンド体制になってからは初めてのライブを行うことが出来た。それで弾みがついて、コンスタントに活動出来ると、自分だけじゃなく、他のメンバーも思っていたはずだ。しかし、現実はそう甘くはなく、バンドはしばしば活動休止状態に陥った。その殆どは不可抗力によるものだが、まわりの音楽仲間の活動を見るにつけ、何か忸怩たる思いがいつもくすぶり続けていた。その間、ジャムセッションや、ライブのサポートやらで、お誘いいただいたりして、それは本当に嬉しかった。活動を続けているという事実が、自分の中の矜持を保ち続けたのだ。こんなふうに、まわりのみんなに助けられて、今回、久しぶりにライブの舞台に立つことが出来た。準備期間の時間的な制約から、完全な状態での演奏が出来なかったのだが、それでも、このステージに帰って来れた事は大きな喜びだった。さて、この先、このバンドは、一体何処へ向かっていくのだろう? というか、次のライブは一体いつになるんだっ!!

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OLive Drive Live at Pappy's 2019.04.30

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座音会ライブVol.02  会場に足を運んで下さった皆様、錦糸町パピーズの皆様、関係者及び参加の皆さまお疲れ様でした!

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36年目の後悔 - 大滝詠一『NIAGARA CONCERT '83』を聴く(その1)

死ぬほど好きになった女の子がいて、しかし、ある日突然別れを告げられる「あなたとはもう逢いません」と。それからウン十年経ったある日、友人から連絡を受ける。彼は、自分は不治の病に侵されている、そして、死ぬ前にどうしても伝えたい事がある、と言い、こんな話を始めた。実は、あの時彼女がお前と別れたのには理由があるのだと。…まあ、ドラマとか映画とかではかなりありがちなストーリーだが、例えば、自分が生きていてこんなシチュエーション、即ち、ある出来事に対して何十年も経ってから後悔したり悲しんだり、或いは逆に、嬉しくなったりする事ってあるんだろうか? ビートルズが来日した時自分はお子ちゃまだったので、もしもその当時、チケットが手に入ったのに行かなかったとしても(当たり前だけど)、そりゃ、後悔もへったくれもないけど、もし、その時の自分が中学2年くらいで、しかも、ビートルズには興味がなくて、そのチケットを誰かに譲ってしまったとしよう。その数年後、熱狂的なビートルズマニアになっていたとしたら、そりゃもう、大後悔って事になるだろう。 

今年もこの季節がやって来た。大滝詠一関連の何かしらのブツが発売される季節。それを我々はお布施の時期、と呼んでいるのだが、今年は何とライブアルバム。あの伝説の、83年の西武球場でのそれらしい。えーと、ここで注意。伝説の、なんて言ってるけど、実は、自分にとってはそれほど思い入れのあるもんじゃない。何故かというと、当時の自分は全くもって大滝詠一マニアじゃなかったから。『ロンバケ』にしたって、友人からダビングしてもらったカセットしか持っていなかった。もちろん、その内容は高く評価したし、何よりも松田聖子の『風立ちぬ』は既にマストアイテムにさえなっていた。だが、遡って彼の作品を聴いてみようという感情には至らなかったのだ。それは恐らく、後追いで聴いたはっぴいえんどの作品…というよりも歌唱が、『ロンバケ』のイメージと大きくかけ離れていたからで、何かで耳にしたそれ以前のアルバムも、難解というイメージが強かったからだ。いわゆる”ナイアガラー”になるのは、貸しCD屋で何かの拍子に借りた『ロンバケ』以前の作品に嵌り、しかも他のCDがほぼ廃盤になっていると知った80年代も終わろうとしていた頃だった。要するに廃盤状態が飢餓感を煽り、コレクター魂に火が点いたといったところだろう。だから、このコンサートの当時、大滝に対する思い入れみたいなものはあまりなく、単に、はっぴいえんど出身の、稀代のヒットメーカーという印象しかなかったのだ。だから、このライブアルバム自体にありがたみは感じるけれど、仮に世に出ていなくても困らない、くらいの心境で、むしろ、初回生産限定盤に付属の、大滝をはじめ、シリア・ポールや布谷文夫の動く姿が拝めるDVDの方が、その何十倍も魅かれるものがあるのだ。

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さて、実際にブツを手にしてみると、なるほど、これはたいそう貴重なもので、CD1枚目がタイトルアルバムで、2枚目が大滝の愛するオールディーズナンバーをカバーしたライブ音源集、そして3枚目がお楽しみのDVDとなる。まあ、これで6,480円はどうなの?ってのは言いっこなしだが、とりあえず、お楽しみは最後にして、まずは83年のコンサートから。

曲は、インストが延々と続き、大滝本人はなかなか登場しない。ではこの時間を利用して、ブックレットを読むことにしよう。このブックレットの見てくれはどうやら当時のパンフを再現したものらしい。表紙には「ALL NIGHT NIPPON SUPER FES.'83 ASAHI BEER LIVE JAM With  EIICH OHTAKI  RATS & STAR  SOUTHERN ALL STARS」の文字が躍る。その時突然何かが脳裏をかすめた。と同時に背中に嫌な汗が流れ、体は固まったまま動かない。あの時、36年前の、あの時の、閉じ込められた記憶を必死に蘇らせようとしていた。

今から36年前。バンド仲間から突然電話がかかって来た。今日、サザンのコンサートがあるんだけど行かない?友人が行けなくなってチケット貰ったんだけど、と。場所は…西武球場だってさ、遠いね。あと、ラッツ&スターと…大瀧詠一だって。今から急いで出れば間に合うけどどうする? んー、遠いから、適当に出ようよ。サザンに間に合えばいいんだから…多分そんな会話。

いやね、思い入れなかったんだからさ、それ、観に行ったとしても大して感激しなかったんじゃないかな? そうかな? 本当にそうだろうか? 仮にそうだったとしても、自慢にはなるな(笑)。オレ、大滝個人で行われた最後のコンサートに行ったんだぜ!とか。でもさ、正直、後悔したんだよ。36年目に。なんであの時、じゃあ急いでいこうぜ!って言わなかったのかってね。だってさ、今じゃ、帰りの電車が殺人的に混んでいて、くたくたになって帰宅したって記憶しか残っていないんだから。 

 

この項続く。

 

 

 

お正月に何を聴く 2019(その2)

年末に入手したアルバムは全部で6枚だが、実は年内に間に合わず、年明け5日過ぎてから到着したブツが1枚あった。それはディランのドキュメンタリー作品『ノー・ディレクション・ホーム』のサントラ盤である。マーティン・スコセッシ監督によるこのドキュメンタリーは3時間を超える長尺モノで、そこに収録された情報量はとにもかくにも膨大である。ディランの音楽的ルーツも詳しく描かれているし、自分が知らない時代の、随分と若いディランを見ることが出来る。これを観たのは数年前なんだが、その時は何故かサントラ盤の存在に思いが至らず、最近になってamazonでディランの作品を調べていて発見したのだ。この盤はディランのブートレグシリーズの内の1枚なんだが、何故か、現在は廃盤扱いで、新品はかなりの高値で取引されているのが現状。しかし、中古価格はそれほどでもなく、運よく超美品を1,800円でゲットした。 

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サントラ盤は、映像やナレーションがない分、曲そのものに没頭できるのが良い。ドキュメンタリーはロイヤル・アルバート・ホールでのライブ、「Like A Rolling Stone」で締めくくられるが、前回書いた『偉大なる復活』のそれと比較すると面白い。前者は、冒頭で、あまりにも有名な客とのやり取りがある。バンド化、エレキ化したディランに対し、旧来のファンが"Judas!"[裏切り者!]と叫び、対し、ディランは"I don't believe you" "You're a liar" とやり返すのだが、字面ではかなり緊迫している様な雰囲気でも、実際にはそれ程でもなく、もっと淡々としたやり取りでしかない。ただ、ディランには反論したいような感情も見え隠れするが、とりあえずは演奏を聴け!といったところだ。実際に、この曲からはそういった抑え込んでいた感情が爆発しているようにも聞こえる。ただし、バンドの演奏は割とゆったり目で、間延びしているが、それでもこの時代の表現方法としては十分だったのかもしれない。これに対して『復活』の方はかなり強力だ。このライブ盤は、バイクの事故後隠遁生活を送っていたディランが、1974年に再開したツアーを収めたものだが、こちらのバージョンは、同じバックバンド(バンド名をホークスからザ・バンドに改名)でありながら、テンポも速く力強いし、歌唱も荒々しく自信に満ち溢れている。これは、再びステージに立てたことに対する喜びなのかもしれない。

バンド化=商業主義という考えから、旧来のファンに糾弾されたのにもかかわらず、この曲が大ヒットしたのは、時代の流れが確実に変わったこのと証明に他ならない。

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さて、ここからが本題。冒頭に書いた6枚の内の残り3枚は、前回紹介したモビー・グレープを知るきっかけになった、細野晴臣率いる、YMOの40周年記念盤(ハイブリッドSACD)だ。YMOのアルバムはアルファレコードのディストリビューターが変わる度にリイシューされているが、自分が所有しているのは1998年に東芝EMIから発売されたものだ。原盤管理会社になってからはソニー・ミュージックと契約しており、アルバム単体でのSACD化は初となる。また、バンドの表記が「YMO」で統一されたのは今回が初めてかもしれない。そのSACDだが、これは今や主流となったフラット・トランスファーではなく、巨匠ボブ・ラディックの手による最新リマスターを使っているが、正直、これには賛否両論あると思う。YMOの場合、録音に関しては悪いという印象はないし、CDにしても、新たにリマスターを施すほどの理由は、購買意欲をそそらせる以外に思い浮かばない。まあ、それが一番の理由でもいいんだが、SACDなら(特別な理由がない限り)フラット・トランスファーが望ましかったと思う。もちろん、ボブ・ラディックくらいの腕ならば、どこからも文句は出ないだろうけど。ついでだが、初回限定盤は、ハイレゾ音源ファイルのダウンロード権(期間限定)が付いてくる。

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さて、今回発売されたのは1st『イエロー・マジック・オーケストラ』(発売当時の正式な名義とタイトルは「細野晴臣 イエロー・マジック・オーケストラ」)とUSリミックス盤『イエロー・マジック・オーケストラ』、そして『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』の3枚だ。YMOテクノサウンドと言えば、初期のこれらのアルバムを思い浮かべる人がほとんどだろう。このピコピコサウンドは世の中を席巻し、街中からこの音が聞こえない日はなかった。昔、ずっと若い頃、例えば、自分はなぜビートルズが来日した時、あの武道館にいなかったのだろう…とか、なぜ、『Sgt』が発表された時に子供だったんだろう…とか、まあ、自分の生まれた時代に対して、何となくコンプレックスを抱いていたわけなんだが、パンク、テクノ、ニューウェーヴの時代を迎えたその瞬間、そういった思いが全て吹き飛んだ。平沢進も言っていたが、「朝起きたら全てが変わっていた」。とにかく、毎日が新しくて、しかも、そういった時代が何年間も続いたのは奇跡みたいなもので、その時代の真っただ中に生きている自分は幸せ者だとさえ思った。そして、その新しいものの中心にいたのが、このYMOだったのだ。

む~ん、長くなりそうなので、この項続く。

 追記:近々、YMOSACDの記事としてまとめる予定です。

 

 

お正月に何を聴く? 2019(その1)

数年ぶりに復活のこのテーマ。しかし、もう1月も終わろうとしている今、こんな記事に興味を持つ人もあまりいないだろうという予感もするが、とりあえず、まあ、新年一発目という事で、早速行ってみよう!

ところで、ここ数年、元日は「座音会」という音楽サークル?(笑)の新年会で、お察しの通り、新座のとある秘密基地にて、飲めや歌えの大騒ぎが行われており、その後2~3日は、ブログを書く気力さえも湧かない。そんなわけで、このテーマもついつい書きそびれてしまっていたというわけ。しかし、今年は年末に数枚のCDを手に入れたんだが、こいつがずごぶる良くて、年末年始はこれで随分と楽しませてもらった。まあ、そんなわけで、これらのブツについて是非とも書き留めておこうと思った次第だ。

さて、暮れに入手したアルバムは全部で6枚。まずは、そのうちの2枚だが、数年前にSONYから限定生産で発売された「ギターレジェンドシリーズ」からだ。これは1枚1000円(2枚組1500円)という価格で、文字通りギターの名手にスポットを当てた企画。もちろん、超名盤ばかりだが、限定生産という事で、いつか買おう買おうと思っているうちに、あちこちのネットショップでちらほらと品切れの表示を見かけるようになった。まあ、安い事は安いんだが、輸入盤ならこの程度か、もうちっと安いんで、別段急ぐことはない。更に、これは後で判ったんだが、実はこのシリーズ、歌詞カードが入っていない。入っているのは薄い紙の解説書だけで、まあ、それでも読む価値は十分あるんだが、対訳はともかく、歌詞だけは付けてほしかった。話を戻そう。このシリーズ、実は去年第2弾が発売されたんだが、まず、第1弾から『フィルモアの奇蹟』(The Live Adventures Of Mike Bloomfield And Al Kooper )、そして第2弾から『偉大なる復活』(Before The Flood-BOB DYLAN / THE BABD)を購入した。『フィルモア』はカセットで所有していたが、愛聴盤になるまでには至らなかった。しかし、ここに来て、急にこの手のセッションアルバムが聴きたくなってしまった。チョイスしたのには別のちょっとした理由もあるんだが、それは後ほど。そして、ディランとザ・バンドの共同名義によるアルバム。こっちは全くの未聴盤だが、ディランの曲に関しては、ほぼ知ってる曲ばかり。対して、ザ・バンドの曲はほぼ知らない。というのも、実はこの手のサウンド(当時はサザンロックと言われていたがザ・バンドはカナダ出身)にあまり興味が湧かなかったので、つい素通りしていたというのが本音。したがって、表面をなぞったくらいで、実際に買ってまで聴こうとは思わなかったのだ。ただ、近年、ディラン関連のドキュメンタリー等を見るにつけ、その存在をオミット出来なくなっていて、そこで、この共同名義である『復活』をチョイスしたのだ。このシリーズはギターレジェンドだから、エントリーされたのは、恐らくディランのギターではなく、ロビ-・ロバートソンのそれに違いないだろう。しかし、彼のギターが凄いのはともかく、ザ・バンドのバンド自体の演奏が完璧すぎて、非の打ち所がない。特に、レヴォン・ヘルムのドラムが最高で、ドラマーにとってお手本の様な演奏を堪能することが出来る。それにしても、この2枚、名盤と称されるだけあって、本当に聴き応えがある。正直、聴いていて、聴き流すという事が出来ない。例えば、何か本を読みながら、とか、PCに向かいながら、なんて事をしていても、気が付けば、じっと耳を傾けているだけの自分がそこにいるのだ。 

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フィルモアの奇蹟』(The Live Adventures Of Mike Bloomfield And Al Kooper )1969

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『偉大なる復活』(Before The Flood-BOB DYLAN / THE BABD)1974

 

では、次に行こう。先にも述べたが、基本的にアメリカの南部だとか、西海岸だとか、その辺りの音楽ってのは、当時中学生だった自分にはちょっと馴染みがなくて、直接そこへ飛び込んだりすると大やけどを負ったりする。それは、クラプトンの『安息の地を求めて』で実証済みで(こちらはスワンプとレゲエの融合。何度も書くが、今ではマストアイテム)、とりあえず、この辺りのアルバムにはうかつに手は出せないという雰囲気だった。結局音楽好きな仲間が誰も買わなければ、聴かれることのない音楽ということになっちゃう。

ところが、である。何かのきっかけで、空前の大ブームを起こしたバンドのメンバーが、当時こんなバンドに影響を受けました…なんて発言をすると、俄然興味が湧いてきて、どうしても聴きたい!となるわけだ。発言元はYMOの…というより「はっぴぃえんど」の細野晴臣、そのバンドはバッファロー・スプリングフィールド、そして、モビー・グレープだった。それでも、当時は、すぐにそれらを聴く事が出来るような環境ではなかったし、何よりも懐具合が寂しすぎた(笑)。モビー・グレープのセカンド『Wow』を聴いたのはもう10数年前だが、このバンド、いろいろと問題を抱えていて(Wiki辺りを参考にしてもらいたい)、アルバムの入手がなかなか難しいので有名だ。せっかくリイシューされたと思ったらすぐに廃盤になったりと、マニアにとってはなかなかの曲者。そんな彼らの、永らく廃盤になっていた1st『モビー・グレープ』(1967)がリイシューされると聞いたのは、2018年の暮れも押し迫った発売日の前日。すぐに注文を入れて、年末までになんとか到着した。その音を聴いた第一印象は、何といってもハンパない疾走感だった。『Wow』は様々なアイデアがてんこ盛りで、サイケデリックなアプローチが満載だが、いかんせん、奇をてらい過ぎて、いささか空回りしてる感が強かった。しかし、この1stは、そういったアイデアはあまりなく、直球勝負といった感がある。全員がVoを取れるというのは強力な武器で、頭からほぼ全員で畳みかけるコーラスワークは最強。まるでジェットコースターに乗っているかの如き疾走感に頭が痺れる。この疾走感の要は、ボブ・モズレーの弾く躍動感あふれるベースだろう。中にはキャッチーなワンフレーズを延々繰り返すだけの曲すらあって、何でも、このアルバムから5枚のシングルがカットされたそうだ。それももちろん頷ける(ただし、そういった行動があまりにも商業的すぎるとの批判から、ほとんど売れなかったらしい)が、中にはしっとりとした抒情的小作品もあり、それがまたいいアクセントとなって、アルバムを際立たせている。個人的には『Wow』よりも、こちらの方がいい出来だと思う。埋もれた名盤といっても過言ではない、素晴らしいアルバムだ。

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ドン・スティーヴンソンの右手中指が修正される前のジャケットは好感が持てるが、リイシュー元のオールデイズレコードのロゴがジャケの右上にあるのと、ジャケの下にはオリジナルフォント(字体)と異なる品番が印刷されているのは無粋というものだろう。

 

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ここで、もう少し『Wow』の話をしたい。実はこのアルバム、発売当時の初回盤には、おまけ盤としてジャムセッションを丸々1枚収めた盤が付いていた。その名も『Grape Jam』。これは全くの個人的推測なんだが、このアルバムの発売が1968年で、ジョージ・ハリスンの『オール・シングス・マスト・パス』(1970)よりも2年早いのだ。つまり、ジョージはこのアルバムからヒントを得て、3枚組のうちの1枚を丸々ジャムセッションにして、そのタイトルを「Apple Jam」にしたのではないか? もちろん、確たる証拠も何もないんだが…。そしてもうひとつ。実はこの「Grape Jam」にはマイク・ブルームフィールドとアル・クーパーが参加しているのだ!先に紹介した『フィルモア…』が発売されたのが1969年だから、これよりほんの1年前という事になる。更にもうひとつの事実。この「Grape Jam」に参加する前、ふたりはディランの『追憶のハイウェイ61』(1965)のレコーディングに参加しているのだが、言うまでもなく、このアルバムのセッションで、ディランのバンド化が一気に加速したわけだ。そういった意味で、実に不思議な縁がこの3組のミュージシャンを繋げているのだ。これが先に述べた『フィルモア…』をチョイスした理由である。

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モビー・グレープの2nd『Wow』。サイケデリックな内容でギミックも多い。78回転でプレイしろ、な~んて曲もある。

この項続く。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はてなダイアリー」から「Hatena Blog」へ

今までお世話になった「はてなダイアリー」の廃止にともない、今回よりこの「Hatena Blog」へ移行することになりました。最近は何かと忙しく、また、FaceBook等への投稿も多くなったため、頻繁に更新できませんが、マイペースで継続して行きたいと思いますので、今後とも「ぶーん日記」をよろしくお願いいたします。

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ブラインド・フェイス『BLIND FAITH』のLPを買う

中二の時、リアルタイムで初めて買ったクラプトンのアルバムが『安息の地を求めて』。正直、ハードルが高すぎて、それを理解するのに結構な時間を要した記憶がある(現在ではマストアイテムだ)。もちろん、クリームなんかを買ってもよかったんだが、何故かその辺りの時代をすっ飛ばしてしまった。クラプトン関連のアルバムは、その数年後、熱狂的なクラプトン信者から、かなりの数を録音させてもらった。そのなかの一枚が、この『BLIND FAITH』(邦題『スーパー・ジャイアンツ』)だ。ご存知の通り、あまりにも有名なこのジャケットは当時から物議を醸した。しかし、例えば、スコーピオンズの『ヴァージン・キラー』なんてのはとっくの昔にジャケットが差し替えられたりしているが、こちらは現在でも普通に流通しているようだ。先日、ふらっと立ち寄ったハードオフで、このLP盤を見つけた時、記憶していた以上にインパクトがあって、ああ、これは持っておいてもいいかなぁ、と思ったわけです(しかも安かった)。
ところで、このアルバムが発売された当時ってのは、社会的にはこの程度の少女の裸なんてのは、全く問題視されてませんでした(ただし、それは日本だけの話で、アメリカでは別ジャケで販売された)。しかし、今時の判断では、どう考えても完全にアウト! そして、レジカウンターに待ち構えるのは、見た目20代前半の女性店員だ! しかもちょっと可愛い(笑)。例えばこれが、中古レコード屋の店員ならば、そういった知識は少なからずあるだろうから気が楽なんだが、ハードオフの店員にそれは望めまい。ただ、国内盤は適当な値段…1枚モノだろうが2枚組だろうが、一律1,000円で売っているのに、例えば、パーロフォンの『OLDIES』には6,800円を付ける辺り、それなりに精通している人がいるはずなんだが、この女の子がその人である可能性は、多分、ゼロ、だろう。さて、いろいろと逡巡しながらも、意を決してレジに持って行く。精算を済ませるまでは極力目を合わせない様にしていたが、この子が何故かもたもたしているわけだ(笑)。そして、ようやくブツをレジ袋に収めたと思ったら、今、買い取りがお得ですよ〜、なんて説明をし始めた! いや、もういいから、早く解放して…。で、その子は買い取りのチラシを、入れておきますね、と言って、半分スケスケのレジ袋に入れたんだよね。そう、そのジャケットが隠れるように意図的に入れたんだ。えーと、そこまで気を遣ってくれなくていいです、はい。これは、あなたが生まれるずっと前から、超名盤として、どこのレコード屋さんにも置いてあったんです…と、心の中でつぶやいて、店を後にしました。でも、ちょっとだけ感謝しました。



ところで、このアルバム、以前からCDでは所有していて、それはなぜかというと、実はボーナストラックにジョージ・ハリスンが参加していると知ったから。当初は93年にリイシューされた盤にしか収録されておらず、デラックス・エディッション等には未収録だったが、最近のリイシュー盤には収録されている模様。ただし、されていないものも多々あり、カタログは混乱気味なので、確認が必要だ。93年のリイシュー盤なら、中古価格500円前後で入手可能。ジョージマニアは要チェックだ!

ボートラ7曲目の「Exchange And Mart」と8曲目の「Spending All My Days」にジョージが参加している。