書籍

『大滝詠一 EACH TIME 読本』を読む

『大滝詠一 EACH TIME 読本』(別冊ステレオサウンド)を買った。毎年3月21日に発売される大滝のリイシュー作品とほぼ同時期にに刊行されて、今回で4冊目だ。本書の主な編集方針は、作品がどの様な作業を経てリイシューされたかに尽きるのだが、当然ながら毎…

『大滝詠一 レコーディング・ダイアリー Vol.3』を読む

『大滝詠一レコーディングダイアリーVol.03 1983-1985』を手に入れた!このVol.3は『EACH TIME』のレコーディングを日付ごとに解説したものである。Vo.2は『ロンバケ』のレコーディング方法を大滝の証言や残されたトラックシート等を元に紐解くというものだ…

金色のリボンとジャン・コクトー

普段風呂に入る時は、BluetoothやSDカードの使える防水スピーカーで音楽を聴いているのだが(基本的には曲を飛ばしたりしないので数十枚のアルバムが順繰りに再生されている)、ゆったりと湯船に浸かっていると、今まで聴こえなかった音、いや、聴いていなか…

シオドア・スタージョン『人間以上』

P-MODELが1993年に発表したアルバム『Big Body』に収録されている「HOMO GESTALT」という曲がある。この「ホモゲシュタルト」という意味が、当時は全く判らず、なんとなく、Homo sapiensとドイツ語のgestaltの造語っぽいものという認識でしかなかった。平沢…

ついにFINALを迎える『鬼平犯科帳』

時代劇は子供のころからわりと慣れ親しんできた存在であった。今どきの考えでは、時代劇というと古臭い響きでしかないが、実は時代と共に多様な変化を見せており、いわゆる"勧善懲悪"といったありきたりなものばかりではなかった。ただ、演出も度が過ぎると…

北方健三『岳飛伝』の文庫化がついに開始!

「北方水滸伝」の最新シリーズ、『岳飛伝』がついに文庫化した。全17巻という事で、約1年半の長丁場となるが、逆に考えれば、それだけ楽しめる期間が確約されたという事でもある。北方水滸伝シリーズは『水滸伝』で描き切れなかった梁山泊のその後を"青面獣…

高田郁『あきない世傳 金と銀』

高田郁の新シリーズ『あきない世傳 金と銀』(源流篇)とその最新作(早瀬篇)。 前作『あい』は初挑戦となる実在の人物を描いた作品だったが、そのせいかちょっとばかり詰め込み過ぎで、消化不良といった感じだった。しかし、今回は太鼓判を押せるほどの出…

『エッセイ集 微熱少年』松本隆

立東舎文庫。何やら聞きなれない文庫名だが、立東をリットーと書けば納得するだろう。リットーミュージックが今年設立した文庫レーベルだ。その第一弾のひとつとして刊行されたのが、この『エッセイ集 微熱少年』だ。このエッセイ集には初出の一覧等のデータ…

『J・A・シーザーの世界』が[完全版]となって復刊!

廃刊となっていた『J・A・シーザーの世界』が[完全版]となってついに復刊した。どうやら寺山修司生誕80年記念の一環らしいのだが、オリジナル版の奥付を見ると発売が2002年4月とあるので(増刷がないとすれば)、実に約14年ぶりの復活となるわけだ。実は事前…

2015年も終わりだね〜

今年も色々な書籍を購入したのだが、ブログではあまり書く機会がなかったので、ごく一部ではあるが紹介してみようと思う。 まずは今年一番話題となった芥川賞受賞作品、お笑いコンビ「ピース」の又吉直樹の『火花』から。芥川賞受賞後だったので、再掲された…

夏休みの読書感想文

夏休みの宿題を毎日コツコツと片付けて、休み中に終わらせる奴は物凄く偉いと思う。だが、休みの序盤、つまり7月中に全てを終わらせてしまうような奴は、逆に鼻持ちならない。もちろん、自分はそのどちらでもなく、夏休み中に終わらないタイプの人間だった…

『テクノポップ・ディスク・ガイド』

80年代当時のテクノポップは、現在のいわゆる"テクノ"とはその意味合いが大きく異なる。テクノの発生を時系列的に説明するなら、肥大化した商業ロックが蔓延していた70年代後半、突如としてパンクが発生し、直後にテクノポップ、ニューウェーヴが出現、暫く…

とりあえず読む、ただひたすらに!

ここのところ色々と忙しく、読まれぬままの書籍がかなり溜まってしまい、徐々に寝床を侵略し始めたのだが、ここに来てようやく一息入れることが出来たので、現在猛烈な勢いでこれらの本を読み進めている次第。さて、今回はそんな大量の書籍の中から、文庫本…

「日経WinPC」が休刊へ

既製PCマシンの性能に対し不満を感じた時、その対処方法としていくつかの選択肢があるが、一番手っ取り早くて安上がりなのがパーツの交換や増設だ。ただし、これもやがて限界に達してしまうので、最終的には新たな既製マシンの購入か、新規で自作機を組むか…

高田郁 『銀二貫』

世の中にはよく判らない「賞」ってのが沢山あって、例えば食品なんかが、何かの金賞やら大賞やらを受賞しているだけで、食べてもいないくせに絶対の信頼感を寄せてしまう。有名なモンドセレクションなんてのは、要するに食品を格付けする為の審査機関で、そ…

つる屋は本日より再開です。

先月のとある日曜日。何時もの様に新聞の書評面を読んでいると、全面広告に目が止まった。そこには北方謙三『史記 第2巻』の文字が。おぉー!と思わず歓喜の雄叫びをあげた次の瞬間、その隣の一文を見て驚愕…「つる屋は本日より再開です」。来た、ついにキタ…

北方謙三 『史記 武帝紀』文庫版刊行!

遅ればせながら先月…ついに北方版『史記 武帝紀』の文庫版が刊行になった。かつて北方は『水滸伝』執筆中に、『楊家将』及び続編となる『血涙 新楊家将』を同時に執筆しており、その作家としてのバイタリティには目を見張るものがあったのだが、今回の『史記…

THE BEATLES ON STEGE IN JAPAN !

1〜2ヶ月に1度のスタジオ・セッションが終わると、毎回定例の飲み会へと移行するんだが、話題の9割9分は当然ながら音楽の話となる。その話にしても、ビートルズを避けて通る事は絶対にないというビートルマニア達の会話は、恐らく、他人が聞いたらまるでとん…

ローレンツ 『ソロモンの指環』

かつて、ソロモン王は、大天使ミカエルより指環を授かったという。真鍮と鉄とで出来たこの指環は、真鍮側で天使を、鉄側で悪魔を呼び出す事が出来、そして、全ての動物の会話を聞く事が出来た。動物行動学の開祖であるコンラート・ローレンツの名著『ソロモ…

ロバート・カーソン『46年目の光』 から読み解く、目に映るものの真実 その3

マイク・メイは視覚を取り戻したが、映像を正しく理解する為のニューロンが機能していなかった。彼が目に映るものを理解するのは、外国語を覚えたばかりの大人が、聞こえてくる全ての会話(外国語)を、いちいち翻訳しているという行為に似ている。目に映る…

ロバート・カーソン『46年目の光』 から読み解く、目に映るものの真実 その2

人はものを見る時に、それまでの経験や学習によって蓄積された膨大な量のデータを、無意識のうちに当て嵌めて映像化している。その過程に置いて重要な働きを担うのが"ニューロン"と呼ばれる神経細胞である。例えば、立方体が立方体として見えるのには、いわ…

ロバート・カーソン『46年目の光』 から読み解く、目に映るものの真実 その1

このブログで少し前に紹介した、ロバート・カーソン著『46年目の光』。3歳の時に失明したアメリカの実業家、マイク・メイが、手術により46年後に視覚を取り戻すといった内容で、ノンフィクションである。この本を知ったのは、約3年前の新聞の書評であったが…

ニッカ『竹鶴12』で秋の夜長を愉しむでござるの巻

サントリーは『山崎』『白州』というシングルモルトの2大ブランドを擁するが、このニッカ『竹鶴12』に相当するピュアモルトのブランドが無かった(シングルモルトは同一蒸留所の原酒のみ、ピュアモルトは複数のモルトをヴァテッドしたものを指す。竹鶴は余…

北方謙三 文庫版『楊令伝』完結!

先日、高田郁の『みをつくし料理帖』がドラマ化された。当然ながら、物語は料理を中心に進んで行く。もちろん、盗賊なんかは出てこない(あっ、火付けは登場したけど)。それは、この原作が、あくまでも料理小説だからだ。池波正太郎の作品には、読んでいる…

丸尾末広 花輪和一 『無惨絵 新英名二十八衆句』

四半世紀の時を経て遂に復刻された『無惨絵 新英名二十八衆句』。今回はポスター・ブック仕様での復刻なので、オフィシャル的には"新生"なのだが、そもそも、自分がこの作品の存在を知った時には、オリジナル版(1988 リブロポート刊)は既に絶版で、高額プレ…

綿矢りさ 『ひらいて』

前作『かわいそうだね?』は、例の「女子のめんどくせーやつ」の話だったが、あれは割りと一般受けしたらしいw コップに少しずつ、少しずつ水を足して行って、これはもう、後は溢れるしかない、という進行で、最後の最後、作者がコップを握って割ってしまっ…

"Drum Crazy"Bonzo!!

今月号の『レコード・コレクターズ』(2012年6月号)の特集は、先月の「20世紀のベスト・ギタリスト100」に続いて、「ベスト・ベーシスト/ドラマー100」だ。ギタリスト編では1位がジミ・ヘンドリックスと、誰もが期待し、予想していた通りの結果となった。そ…

書籍の広告に物申す

以前、かわぐちかいじの『僕はビートルズ』の巻末にあった次巻予告に対して苦言を呈した。それは、それがネタばらし以外の何ものでもなかったからだ。同じ講談社刊行のコミックはこういうことを平気でやるので、連載をリアルタイムで読んでいない者は注意が…

ウイスキーを読み解く

新刊以外の書籍を書店で見つけるのは中々骨が折れる作業で、最近ではネット通販に頼りっきりなのだが、それでも極力書店には通うようにしている。そこには、やはり一期一会というものがあるからで、ページをパラパラとめくって、すかさずレジへ直行というも…

岩井俊二『番犬は庭を守る』

原発事故が頻発し放射能に汚染された近未来の話。※以下ネタバレ注意!そこでは放射能の影響により、人類は臓器移植を繰り返さないと長く生きることは出来ない。男性の生殖機能は失われつつあり、正常な機能を持った男性はごく稀で、大半は子孫を残すことが出…