ちょっとした記念日にワインでも買おうかなと思い立ったのだが、残念ながらワインについては門外漢で、知っている事と言えばごく限られた一般常識程度のことだけ。ただ、シェリー酒についてはちょっとだけ知識が有る。それはウイスキー好きだから、である。
モルトの熟成過程でバーボン樽を使う事はよくあるが、こと最終段階の熟成=フィニッシュ用の樽として、シェリー樽が使われることも少なくない。こうして出来たウイスキーには、単にシェリー・カスクと冠することもあれば、オロロソ・カスク、だとか、ペドロヒメネス・カスクといった具合に葡萄の品種を冠する事も多い。
シェリー酒というのはスペインにおいて製造された、白葡萄の酒精強化ワインの事で、アルコール、主にブランデーを添加したワインであるが、ソレラシステムという熟成手法が用いられている。簡単に言うと三段積みにされた樽の一番下から一定量を抜き取り製品化、抜き取った分だけ二段目目の樽から補充、更に、二段目の樽へは三段目から補充。三段目には新しい原酒を足す、といった具合だ。まあ、秘伝のウナギのたれの三段逆スライド方式版といったところだろう(多分使い方間違ってるw)
というわけで、久しぶりにペドロヒメネス(PX)のシェリーを買ってきたのだが、あれ、シェリーってどこで売ってるんだ?って思うくらい、本当に置いてなかった。確かに、主流ではないにしろ、一定数の愛好家はいるはずだが、特にシェリー酒のコーナーもなく、なぜこんなに廃れているのか不思議でならなかった。それに、自分の様にウイスキーの樽から興味を持ってシェリーへ行き着く人間も少なからずいるはずだ。商機なんてのは実にニッチなところから生まれるのであって、例えばPXカスクを使ったウイスキーの近くにPXのシェリーを置くだけで、手に取って見る客は絶対にいるはずなんだな。大体、ウイスキーなんて知識や蘊蓄と一緒に飲む酒なんだから、とりあえず飲んでみるかって客も必ず出てくるはず。まあ、ここで文句を言っても仕方がないので、本題へ戻ろう。
久々のPXは記憶していた以上に甘かった。見てくれは子供用の風邪薬のシロップかイソジンで、赤黒くてドロッとしている。白葡萄がこんな色になるのも面白い。なんでも、一定期間天日干ししたものを原料として使うとのこと。ただ、これは食後の飲むデザートとも言われている酒なんで、普段ウイスキーメインの者にとっては一杯飲んだだけでもう満足、なのである。正直、甘すぎて頭が痛くなってきたので、モルトで口直ししてから寝たんだが、いくら度数が高いと言っても所詮はワインなんで、日持ちが問題となってくる。アイスクリームにでも掛けて食べるといいよと教えてもらったが、普段はあまり甘いものを口にしないので、炭酸で割って飲んでみようかと画策中。他に肉料理かなんかのソースに使えそうだが、そうはいっても2,000円以上するんでちょっと勿体ないかな。