新しいテイスティング・グラス

毎年、2月のバレンタインから5月の父の日辺りまでは、デパートなんかのギフトコーナーが賑わう時期である。洋酒メーカー各社もこの時期には様々なギフトセットに力を入れるようで、バレンタインやらホワイトやら(最近では、結ばれたカップルが4月14日に、お互いに贈り物をする"オレンジデー"なるものまであるらしい)に、ほぼ無縁の自分も、この時期はこういったギフトを目当てに(要するに、自分への贈り物だがw)催事場をうろうろしたりするのだ。洋酒のギフトは、多くの場合、洋酒本体+小物(例えばグラスであったりハンカチであったり)のセットなのだが、殆どの場合、価格が洋酒単体で買った時と全く変わらないか、或いは殆ど変わらない程度なのだ。即ち、おまけの小物はタダ同然で手に入るというわけ。
ウイスキー好きの自分は、初めて口にするボトルを飲む時なんかには、必ずテイスティングをするのだが、この時使うのが"テイスティング・グラス"で、その形から、よく"チューリップ"とか呼ばれているものだ。香りをじっくりと味わいやすい様にそんな形になっているのだが、このグラス、良いものになると結構な値段がするし(まあ、ピンキリだが)、気に入った形のものになかなかお目にかかれなかったりする。去年、お気に入りのグラスを、見事に割ってしまい、仕方なくショットグラスで代用していたのだが、3月のホワイトデーの辺りに、某スーパーの催事場にて、このチューリップが付いた"新・山崎"のギフトセットを発見した。この新・山崎は丁度2年前に発売になったばかりのシングルモルトだ。いわゆる"無印"で熟成年数は未表記、山崎ブランドの最下位にあたるものだ。外飲みでは何度も口にしているこの山崎だが、きちんとテイスティングしていなかったのと、このグラスの形がえらく気に入ってしまい、迷う事無く即ゲットしてしまった。価格はもちろん本体のみの場合と同じで、350mlで1,680円(税込み)だったと記憶している。ここの所忙しく、酒は毎晩呷るものの、じっくりと味わう事が出来ず、すっかりと間が空いてしまった。



まあ、今更ここで、新・山崎のテイスティングをレポートしても面白く無いかもしれないが、ちょっとだけ。
そもそも、山崎シリーズは、本当に良く出来たウイスキーで、日本人に向けて作られた最高峰のシングルモルトのひとつであると言っても過言ではない。それが、いくらシリーズ最下位にあたるボトルであっても、そこは兄譲り、極めて上質な仕上がりが期待できる。その売りはなんといっても、貯蔵樽にワイン樽を使用した事で、赤み掛ったその色合いはこれに由来するものらしい。早速、新しいテイスティング・グラスに注ぎ、すこしばかりくるくると回した後、鼻を突っ込んでみる。すぐに甘くてすっきりとした果実の香りで鼻腔が満たされてゆく。上品ではあるが極めて明るいタッチは12年とはあきらかな違いがある。果実系の香りはワイン樽に由来するものだろう。味わいは甘みがあるが、オイリーな感じはせず、雑味も極めて少なく、あっさりとしている。多少の苦味が出るのは若さのせいか? 後はシナモン系の非常に爽やかな余韻がいつまでも持続する。何と言ってもこのまとまり方が秀逸だ。
山崎にこの価格帯の製品を持ってきたのは、発売当時も今も続く、ハイボール・ブームを考えての事だろう。山崎のテイストでワンランク上のハイボールを楽しもう、といったところか。外でこのハイボールを頂いた事は何度もあるが、意外と腰砕け感が無くきっちりと飲めるという印象を受けた。さて、今年の夏も暑くなりそうだし、たまには山崎でハイボールってのもいいかもしれない。


今宵は、ん十年前によく聴いていた石黒ケイが、2004年に発表した『ライブセレクション』を聴きながら。おつまみは、ハーママから頂いた、ご存知、絶品のビーフジャーキーだ!

石黒ケイライブセレクション

石黒ケイライブセレクション