『LAPHROAIG SELECT CASK』 ラフロイグ・セレクトカスクを飲る

今夏、酒量販店などでちらほら見かける様になった『LAPHROAIG SELECT CASK』。サントリーの公式を見ると、プレス記事にてその詳細を知る事が出来る(こちら)。要するに、既存の樽から選びぬかれた原酒を更にヴァージン・アメリカン・オーク樽で後熟させたものらしい。箱の能書きを見ると、まず、「クォーターカスク」=これは通常の1/4の大きさの樽で熟成させたもの(原酒が樽に接する面積が広いため短期間で熟成できる)。もうひとつが「PXカスク」=バーボン樽(オーク)で熟成させたものをクォーターカスクに詰め替えて熟成、更にペドロヒメネスシェリー樽で後熟。最後が「トリプル・ウッド」=ヨーロピアン・オーク・カスク。これらのカスクをヴァッティングしたものを、最終的にアメリカン・ヴァージン・オーク樽にて後熟させたもの、ということらしい。原価的には「クォーター」が最も安く、次が「トリプル」で「PX」が一番高い。「クォーター」は「ラフロイグ10」よりも安価だ。従ってここでは、これらのカスクが、どれくらいの割合でヴァッティングされているのかが重要になる。販売価格は「10」と同等(約4,000円)なので、「クォーター」が多い可能性が高い。もしそうであれば、若い勢いのあるもにになるはずだ。ラフロイグ好きな人間には、この「クォーター」が好きな者も大勢いる。「10」には無い樽の香りや渋みがあり、酒自体の持つ勢いもあるからだ。



では早速テイスティングしてみよう! まず、いつもの様にテイスティング・グラスに少量の酒を注いで、鼻を突っ込んでみる。潮の香りが強く、ほのかにヨード香を感じるが「10」と比較してかなりおとなし目で、ガツンとした刺激はない。一口目を舌で転がす。何とも形容し難い複雑極まりない味だ。何か松茸の様な味も見え隠れするし、梅の様な酸味も感じ取れる。しかしながら、雑味は全く感じられない。それよりも何よりも、甘い…ひたすら甘い。「クォーター」の持つ樽の渋みや苦味はかなり控え目だが、勢いの中にも上品さが感じられる。鼻からは甘い香りが抜け、余韻は長く続く。
ここからはティースプーンで徐々に加水して行き、トワイスアップまで。1杯目で甘さ、樽香が共に増すが、2杯目で、何故か急に酸味が増し、爽やかな味わいとなる。この後、酸味と甘味が目立ち、トワイスアップまであまり変化はない。さすがに腰砕けにはならいが、落ち着きのある味わいとなる。スモーキーさは極めて上品だが、やはり、ヨード香は影を潜め、ラフロイグらしさはかなり減ってしまう。
ラフロイグは、一口飲んだ瞬間から虜になる人と、拒絶反応を示す人に別れてしまうが、この「セレクト・カスク」はヴァッティングによって、こういった好き嫌いが出るのを極端に押さえているといえる。ラフロイグのクレゾール臭がたまらない、なんて人には、これはちょっと物足りない。ちょっと上品に、そして、甘くなりすぎた。個人的には、やはり「10」に軍配が上がる。


今宵のお供はヨーヨー・マの『プレイズ・ピアソラ』(YO-YO MA「Soul of the Tango」)と、ご存知、ハーママ特製のビーフ・ジャーキー。