お正月に何を聴く? 2013

毎年恒例となりましたこの儀式? タイトルの通り、今年初めて聴いた音楽を、ただ単にぐだぐだと書き綴って行くだけというもので、大した意味はございません。正確には、正月に酔っ払いながら初めて聴いた音楽、なんですけどね。
さて、今年一発目は何を聴こうかと思案していたところ、急に思い出したのが、昨年多くのアニメファンを驚愕させた『ジョジョの奇妙な冒険』のEDで使われていたイエス("Yes")の「ラウンドアバウト」("Roundabout")。この曲の使われ方が最高にかっこよかったのを思い出した。イエスといえば、一昨年、日産のCMで「燃える朝焼け」("Heart Of The Sunrise")が使われたが、この両方が収録されている『こわれもの』("Fragile"1971)を、今年最初に聴く1枚にしよう! とりあえず、今回、音楽のお供としてチョイスしたのは、最近お気に入りのモルトタリスカー("TALISKER 10")であります。


ジョジョのエンディングを繋げたもの。エンディングは徐々に変わっていく…なんちって。

『こわれもの』はイエスの方向性を決定付けた1枚であるが、特にリック・ウェイクマンの加入が大きな意味を持つ。このアルバムでの彼の役割は大きく、10分近い大作となる前述2曲は、彼無しでは実現されなかったであろうし、後の大作主義へと繋がる事もなかっただろう。その大作主義アルバム『危機』("Close To The Edge"1972)『海洋地形学の物語』("Tales From Topographic Oceans"1973)を最後に彼は脱退、その後釜に据えられたのがパトリック・モラーツだったが、加入後の新作『リレイヤー』("Relayer"1974)は、あまりよい評価を得る事はなかった。が、しかしである。このアルバムと彼、モラーツを好きな人間は意外と多くて、実は、自分もそのうちの一人なんだなあw 演奏技術の点では断然ウェイクマンに分があるが、先鋭的なフレーズの斬新さで言えば、フリー・ジャズやラテンに傾倒していたモラーツの方に軍配が上がる。以前、このブログでも書いたけれど、モラーツがイエス在籍中に遺した作品ってのは、物凄く少なくて、オリジナル・アルバムでは『リレイヤー』のみ。ライブ盤では『Yesshows』(1980)、そしてビデオ作品の『イエス/ライブ 1975』("Yes: Live - 1975 at Q.P.R."1993)だけ。『Yesshows』はウェイクマンとモラーツ、それぞれの演奏曲が収録されており、比較して聴いてみるのも面白い。ただし、ウェイクマンの収録曲は、『究極』("Going for the One"1977)で再加入した後の演奏。その頃はシンセサイザーがポリフォニックへと移行する時期であり、音の派手さではウェイクマンに大きな分があるので、その辺りは差し引いて評価してもらいたい。そんなわけで、2枚目はこの『Yesshows』を聴く事に。




75年のライブより「錯乱の扉」。残念ながら音響のトラブルでモラーツのKBの調子がイマイチ良くない。

ところで、Yesと言えば、それ以前にライブ盤の大作『Yessongs』があるのだが、そのOPでも、『Yesshows』のOPでも、そして、その後のライブでも度々使用されていたのが、ストラビンスキーの「火の鳥」のED部分である(単なる出囃子で、音源はオーケストラ演奏のもの)。個人的に「火の鳥」と来て一番に思い浮かべるのが、冨田勲の『火の鳥』(1975)だ。このアルバムは十代の頃死ぬほど聴いたので、細部に亘って熟知している…つもりだったのだが、2004年にリイシューされたリマスター盤を聴いた時、スピーカーから、当時聴いた事のない様な音が沢山溢れ出したのには驚いた! しかし、当時は録音自体があまり良くないので、特に最初の2枚、『月の光』(1974)『展覧会の絵』(1975)は、リマスターされたとはいえ、ちょいとばかり難がある。非力であったムーグIIIの音を分厚くするために大量に投入されたリバーブと、度重なるリダクションが音質を低下させているといった印象。しかし、この『火の鳥』以降の作品は、録音状態もかなり良好である。そんなTOMITA版『火の鳥』を聴きながら、グラスを傾けると、酔いもかなり回ってくる。


冨田勲シンセサイザー作品、初期の代表作4枚の紙ジャケによるリイシュー盤。

そういえば、年末に放送された初音ミクの特番『初音ミクのかたち』(2012.12.24 MXTV)で、冨田勲御大が自身の作品『イーハトーヴ交響曲』にミクが出演したのを受けて、インタビューに答えていたのだが、初音ミクに魂はありますか?、という質問に、(いささか強い口調で)「そりゃあありますよ!」と仰っていたのが印象的であった。思えば、氏がMoogIIIと出会ってから40年以上の月日が流れ、当時、どうしても表現できなかった"人の声"をようやく創り出すことが可能となったのだ。これに魂が無いわけが無い。そういった何十年もの年月の流れと、そして、これから先の、何十年か後の音に思いを馳せながら、もう一杯、グラスを傾けつつ、正月の夜は更けて行くのであった。


こわれもの

こわれもの

イエスショウズ

イエスショウズ

火の鳥

火の鳥

イーハトーヴ交響曲

イーハトーヴ交響曲