さよなら、キース・エマーソン。

ここの所、大物ミュージシャンの訃報が続いているが、まさかキース・エマーソンのそれを聞く事になるとは思わなかった。しかも死因が自死というのが何とも辛い。ここ数日でようやくその原因らしきものが報じられるようになったが、何でも、ここ最近、指が麻痺して思うように演奏ができなかったらしい。手術もしたが改善せず、しかも日本ツアーが目前に迫り、サポートのキーボード奏者まで検討されていたらしいのだ。彼は完全主義者だったので、そういった状況に耐え切れなかったのかもしれない。以前、EL&Pのレコーディングの様子を収めた動画を見たんだが、他のメンバーにこれでもかというくらい事細かな指示を飛ばしていたのが印象的だった。まあ、一流ミュージシャンなら当然なのかもしれないが、やはり完璧にやり遂げなければ気が済まない性分だったのだろう。だが、考えてみれば、彼ももう71歳になっていたのだから、演奏の衰えを今更どうのこうの考えても仕方ないし、ライブを観に行く方にしてみても、ただ往年の名曲を披露してくれるだけで御の字なのだ。テクとかそんなことはもうどうでもいいんだ、やはり亡くなってしまうのは寂しすぎるじゃないか!



自分は自他共に認めるビートルズ・マニアだが、彼等だけを集中して聴いていた時期というのはそんな長くない。恐らく、中1から中2にかけての1年間くらいだろう。彼等が音楽の骨格を形作ってくれたとするのなら、血肉となったのはいわゆる"ワーナーの5大バンド"だった。当時ワーナーとその傘下にあったレーベルから発売されていたバンド=レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、キング・クリムゾン、イエス、そしてEL&P、これらを称して5大バンドと呼んでいた。この呼称は、レコード会社の戦略でしかないが、これらのハードロック、プログレッシブ・ロックは、中二男子のハートを鷲掴みにした。EL&Pは、当時話題となっていた冨田勲の一連のシンセサイザー作品と共に聴き込んでいた。シンセという新しい楽器に、未来の音の可能性を夢見ていたのだ。やがて、これら5大バンドに代表されるような大仰でテクニックに重きを置いた音作りは敬遠され、いつしかダサイものとして扱われるようになる。EL&Pは『ワークスVol.2』『ラブ・ビーチ』辺りで迷走が始まり、ポップであるが、一方でキースの目指すロックとクラシック+ジャズの融合というコンセプトも維持され続けていた。大々的なツアーにフルオーケストラを同行させたため、赤字が膨らみ、活動も思うように続かず、ついにバンドは解散状態となってしまう。その後メンバー、はエイジア、EL&P(パウエル)やソロ活動等を挟み、再結成も叶ったが、往年の輝きを取り戻すには至らなかった。個人的には『恐怖の頭脳改革』の時期がベストだ。そこには様々なタイプの曲と、斬新なアイデアがてんこ盛りで、聴いていて飽きる事が一切無い。偉大なる才能と、偉大なるテクニックの集大成みたいなアルバムだった。ご冥福をお祈りいたします。


個人的にはこの3枚がベスト。『トリロジー』も捨て難い。


1974 カリフォルニア・ジャムでの「悪の経典#9 第三印象」