『大滝詠一 レコーディング・ダイアリー Vol.3』を読む

大滝詠一レコーディングダイアリーVol.03 1983-1985』を手に入れた!このVol.3は『EACH TIME』のレコーディングを日付ごとに解説したものである。Vo.2は『ロンバケ』のレコーディング方法を大滝の証言や残されたトラックシート等を元に紐解くというものだったが、今回はレコーディング時にスタジオの状況を同時録音したカセットテープと、アシスタントの大森政人の残したスコア(ASSI USEと呼ばれるもの)を元に検証している。『EACH TIME 40th Anniversary VOX』に同梱されたブックレットより、レコーディング時に同時録音された夥しい量のカセットテープ。本書より、大森の奮闘ぶりが伺えるASII USEと呼ばれるスコア。
この大森さんの残したスコアは簡単にいえば、曲の進行と、特定位置の頭出しを主な目的として構成されているもので、大滝の指示のもと、リアルタイムで書き直しが行われている。つまり、同録のカセットテープの内容とこのスコアを追って行けば、最終的な完成形まで辿ることが出来るということなのだ。言い換えれば、どれだけアシスタントエンジニアが重要な仕事であったのかということの証明に他ならない。読み進めていくうちに、大森さんがどれだけ過酷な状況下でこの仕事をやってのけたのかという事が、身に沁みて判る。
ところで、本書に掲載されているコラム3には、大森さんの先輩にあたる渡邉茂実氏によってアシスタントエンジニアの仕事ぶりが証言されている。大森さんから話を伺ったところ、大森さんは主にリズム録り、いわゆるベーシックトラックを担当したが、この時はチーム一丸となってレコーディングに取り組んでいたとのこと。
 大森さんはいつも我々のバンドの曲をアレンジして譜面で渡してくれるのだが、毎度目にしているコード譜の文字が、このスコアと同じである事に気付いて胸が熱くなったりする。同じメンバーであることが嬉しくもあり、なにか不思議な縁を感じる今日この頃、なのである。