『犬狼伝説(上・下)』(デジタル・リファイン版) 原作:押井守 作画:藤原カムイ

以前書いた記事でも紹介した通り(こちら)、今年に入って「犬狼伝説」の様々なプロジェクトが形となって現れてきた。その第一弾とも言えるのが、このコミック版『犬狼伝説(上・下)』のリイシューだ。この作品は今までにも何度かリイシューされているが、今回は“デジタル・リファイン版”と銘打たれており、これまでに発表された藤原カムイ作画の全作品加筆修正版である。加筆修正のポイントは、デジタル原稿(入稿)とアナログ原稿の質感の違いが著しかったため、両者のそれを近づける為の作業を施したとの事。(ただし、今までのリイシューでも、その度に加筆修正がなされている。)
犬狼伝説」自体がここまで生き永らえたのは、このコミック版の成功によるところが大きいと思われる。押井守単体での作品は、映画にしろ原作(小説)にしろあまり面白くない。内世界を徹底的に追求しすぎる、言わば設定オタクだからだ。本作は、押井が原作を書き、他の人間がその世界観を表現するといった逆パターンだからこそ成功したと言える。実写版である『紅い眼鏡』(コミックより先)、『ケルベロス-地獄の番犬/Stray Dog-KERBEROS PANZER COPS』は、一部マニアに受けはしたが、一般的に評価されることは無かった。結局、『うる星やつらビューティフル・ドリーマー』の様な大傑作を生み出すには、彼の持つ世界観による侵食を、ぎりぎりで抑えきるだけの体力を持った原作が必要だという事なんだろう。

犬狼伝説 上―KERBEROS PANZER COP a Rev (歴史群像コミックス)

犬狼伝説 上―KERBEROS PANZER COP a Rev (歴史群像コミックス)

犬狼伝説 下―KERBEROS PANZER COP a Rev (歴史群像コミックス)

犬狼伝説 下―KERBEROS PANZER COP a Rev (歴史群像コミックス)