ウイスキーを読み解く

新刊以外の書籍を書店で見つけるのは中々骨が折れる作業で、最近ではネット通販に頼りっきりなのだが、それでも極力書店には通うようにしている。そこには、やはり一期一会というものがあるからで、ページをパラパラとめくって、すかさずレジへ直行というものも多いし、小説などは最初の数行、場合によっては最初の1行で購入を決めるものだってある。それは、通販では絶対にあり得ない事なのだ。
今回は、そんなパラパラから出合った1冊、『ウイスキーの基礎知識』。この"基礎知識"は"現代用語の基礎知識"的な意味合いで、従って、内容的には基礎知識的なものばかりでなく、ウイスキーを取り巻く環境や、そこから派生する多種多様なアイテムやテクニック、そして、もっと根源的な部分の考察まで、ありとあらゆる切り口を持つ1冊で、まったくもって飽きさせる事の無い内容である。
ウイスキーの定義や、製造方法といった基礎知識から始まって、水の選び方や氷の削り方、まあこの辺りは普通だとしても、バカラのコレクション紹介となると、むむむと唸ってしまう。ひとつ3万円前後のグラスなど、さぞかし美味しいウイスキーが頂けるのだろう(つい最近高価なテイスティンググラスを割ってしまったばかりだったりする)。さて、面白いのはここから。まず、「ウイスキーが似合う曲Best30」なる項目がある。この辺りの記事は、やはりじっくりと読んでしまう。思わずうなづいたり、或いは未知のアルバムに興味を持ったりと、つい何度も読み返してしまうのだ。しかし、この後の特集が更に凄い。なんと、レコードプレイヤーの紹介である! 要するに、ウイスキーにこだわるなら、音楽にもこだわれ。そして、それを聴くならレコードプレイヤーにもこだわれ、とまあ、あくまでもアナログレコードで聴くのが前提なのねw USB対応プレイヤーや、フォノイコライザー内蔵プレイヤーの紹介は今時の記事としては当然だが、"Premier MK III"なんて、トーンアーム別売で40万円以上もする上級機(詳しくはこちら)を紹介するってどうなの?(オーディオの世界ではハイエンドはまだまだ上ですが)   いや、だからこそこの本が面白いと思ったのだ。そもそも、この記事が本当にウイスキーの専門書に必要だとは思えないわけで、それを承知でこういった記事を組むなんて、ウイスキーと音楽に対する強いこだわりが無ければ、中々出来ないもの。
他にも、ウイスキーの聖地、スコットランドを訪ねる記事や、国産ウイスキーの歴史等、読み物としてもかなり面白い。勿論、ウイスキー自体のカタログ的な紹介記事も充実しており、ぜひウイスキーと供に読みたい1冊だ。


上質紙オールカラー200頁で1,300円(税別)、充実した記事内容で文句なしの価格。

ウイスキーの基礎知識 (食の教科書)

ウイスキーの基礎知識 (食の教科書)