ウイスキーに合うアルバム No.05 - ジミ・ヘンドリックス 『ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン』(1997)

名曲とはいつのまにか自然と耳にしているものだが、自ら求めずに不意打ちの如く脳味噌に入り込んだ「紫のけむり」"Purple Haze(1967)"は、フニャフニャとした中学生の脳味噌にはあまりにも強烈過ぎた。更に、モンタレー・ポップス・フェスティバルでの放火プレイに完全に打ちのめされて以来、彼の虜になる(ただ、正直に告白すれば、ドラマーの立場としては、そのバックでキチガイじみた演奏をしていたミッチ・ミッチェルの方に、より夢中になった)。例の如く、アルバムを自由に買うことの出来なかった少年は、ベストアルバムとライブアルバム(サントラ盤)で何とか我慢するのだが(とは言っても、共に2枚組の大した代物だった)、そのレコードは、本当に擦り切れるまで聴きこんだ。
さて、当時はジミの音源についてのややこしい事情などは知る由もなく、死後残された膨大な数の未発表曲が、さまざまな編集盤にバラバラになって収録されている事には、何の疑問も抱かなかったが、その原版権が遺族の元に還ったのが1990年代後半。これによって、生前、2枚組として発売されるはずだったアルバムが、本人の構想と非常に近いとされる形で世の中に送り出された。それがこの 『ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン』"First Rays of the New Rising Sun(1997)"だ。これまで様々な編集盤で既に耳にしている曲ばかりなので、新たな発見は少ないが、ひとつのオリジナル・アルバムとして通して聴くと、これは『エレクトリック・レディランド』"Erectric Ladyland(1968)"と肩を並べる名盤となっていたはずだ。バンドとしては、紆余曲折あってこのアルバムに行き着いたので、アレンジが緻密で、それまでのアルバムとはちょいと次元が違う。ジミの曲としては珍しくリラックスできる曲もある。だからこそ、このアルバムはウイスキーに合うのだ! その最たるものが「僕の友達」"My Friend"だ。この曲を聴くだけで、すぐにグラスが恋しくなるw 彼は生前、自らを"ブルースマン"と呼んでいたが(因みに、ミッチは"ジャズマン"、ノエルは"ロックンローラー"だった)、このアルバムに収録されたいくつかのブルース寄りのナンバーを聴くと、彼の本質を垣間見ることが出来るはずだ。アルバムを最後まで聞いた者へのご褒美は、ギターの弾き語り「ベリー・バトゥン・ウィンドウ」"Belly Button Window"。その頃には相当酔いも回って、この偉大なるギタリストの、かつての雄姿に思いを馳せるのだった。


2010年にリイシューされた最新盤。ハズレ曲一切なし!


輸入盤ならDVD付きでも千円以下で買える。

http://www.youtube.com/watch?v=Is-0NZQhHog
"My Friend"

http://www.youtube.com/watch?v=IE0GRGRIhtk
"Belly Button Window"
※以上、視聴制限によりプレイヤーを埋め込めませんでした。

First Rays of the New Rising Sun (Bonus Dvd) (Dig)

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