ウイスキーに合うアルバム No.02 - ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ 『血と汗と涙』(1969)

プログレとは、何か説明の付かないバンドを押し込めるには持って来いのジャンルで、もしも、このバンドに「Spinning Wheel」という最大のヒット曲が無ければ、間違いなくプログレだったはずだ。ところが、この曲、あまりにもブラスが決まっていたのだ。故にジャンルはブラスロックである。しかも、シカゴと並ぶ有名所だ。だが、このアルバムを聴けば、その範疇には収まりきらない事はすぐに判る。何しろ、プロローグとエピローグに相当する部分がエリック・サティの「ジムノペディ」である。当時、サティという名前は、現在ほどポピュラーではなかったはずだ(というか、彼の名前が社会的に浸透しているのは日本くらいで、アメリカでも本国フランスでも知名度は圧倒的に低い)。曲の大半は、途中でリズムが4ビートに変化したり、完全にボーカルパートが無くなってしまったりと、まあ、ブラスロックというよりはジャズだ。プログレにならなかった大きな理由は、このアルバムに収録された曲が、そういったジャズやファンク、ブルースナンバーであったり、泥臭い南部の雰囲気を漂わせていたからだ。だからこそ、このアルバムはウイスキーに合うのだ!
この、ブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ『血と汗と涙』Blood, Sweat, and Tears (BS&T)"Blood, Sweat, and Tears(1969)"は彼らの2ndにあたるが、バンドの立役者であったアル・クーパー他のメンバーは既に脱退。新ボーカルにデヴィッド・クレイトン・トーマスを迎え入れたこの時点で、バンドは別物になったと言っていいだろう。私が以前お世話になった外バンで、ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」をカバーすることになったのだが、アレンジの参考に、様々なアーティストのバージョンを聴き比べた。そこで偶然にも彼らのカバーを発見したのだが、これが完全にプログレw 思えば69年はキング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』が発売になった年でもある。アプローチとしては非常に近い部分を感じたりもする。ただ、バンド名からも判る様に、彼らは非常に泥臭くて暑苦しい、野郎の集団である。そらー、バーボンをショットグラスで呷りたくもなるじゃないか! しかし、よく調べてみると、彼らは非常にインテリな集団だったりする。個人的には、やはりプログレというジャンルに押し込めたかったバンドである。


最大のヒット曲、「Spinning Wheel」


ローリング・ストーンズのカバー「悪魔を憐れむ歌」。完全にプログレ


2000年のリイシュー盤にはライブが2曲追加されているが、うち1曲は18分にも及ぶ長尺だ。

Blood Sweat & Tears

Blood Sweat & Tears