GRRR !

ビートルズがメジャーデビューしてから実際に活動していた期間は、たかだか8年くらいのものである。だから、そのたったの8年間が自分の人生の、それも、青春時代の真っ只中とリンクしていた人間ってのは、ある意味、とても幸運なのだろうと思うのだ。自分がビートルズの音楽に触れた時には、もうバンドは存在しておらず、だから、恐らく今も多くのティーンエイジャーがそうであるのと同じ様に、"あぁ、なんでオレは、1966年6月のあの日に、武道館に居なかったのだろう"とか"1967年7月にレコード盤に針を落とし、世界が一変したその瞬間を、なぜ世界中の人達と共有出来なかったんだろう"とか、真剣に悔しがったりしたものだった。
さて、ストーンズである。1962年がメジャーデビューなのはビートルズと同じだが、今もって現役であるから、今年で51年目という事になる。んじゃあ、彼等の活動と自分の人生がリンクしている期間はビートルズよりもずっと長いんだから、当然、思い入れのある曲もたくさんあるんだろう、と思われるかもしれないが、実はそれが殆ど無い。だって、ビートルマニアだからw だが、一般的によく言われる様な、ストーンズ派、ビートルズ派ってのは、自分の周りには存在していなかった。ブルース系で言えば、圧倒的にクラプトン派(ロック小僧の間ではクリームが絶大な支持を得ていた)が多かったので、初期ストーンズのブルース作品はほぼオミットされていた。もちろん、ロックが大好きだったのだから、彼等の音楽は必ず耳にしていたのだが、それが、どの時代のどのアルバムに収録されていたのか迄は、なんとなく当たりは付けられるが、時系列順に正確に並べろと言われると自信が無い。なにしろ、夢中になって聴いたアルバムもほんの数枚といった体たらく、これじゃあいかんと思いつつも、いきなりアルバム全部揃えるのも大変だ。だから、その前に、なにかお手本になるというか、入門編よりももう少し骨のあるベスト盤みたいのが欲しかった。
渡りに船とはこの事か。思わずGRRR!と唸るオールタイムのベスト盤が去年の11月に発売になった。ところで、このベスト盤には様々なグレードが存在していて、一番高価なものは4枚組で80曲入り、安価なものは2枚組40曲入り、そして、その中間にあたるのが3枚組50曲入りとなっている。少し骨のある、といった観点からチョイスしたのは3枚組50曲のもの。日本盤はSHM-CDという高音質盤仕様で、かつ輸入盤との価格差がそれ程でもなかったので、国内盤に決定した。実は、このグレードには更に上位の盤があり、それはハードカバーのブックレット付きなのだが、価格がいきなり2,000円も跳ね上がってしまうという、よく判らない仕様である。
ところで、国内盤のライナーノーツは、音楽業界から退くと言っていたレココレの前編集長、寺田正典氏。さすがにこの依頼は断れなかった様だが、それはともかく、名前だけで信頼できる解説ってのはそう多くは無いだろう。その解説書を熟読しつつ、こうやってほぼ時系列順に並んだ彼等の名曲に身を晒すと、その時代のうねりの様なものがヒリヒリと肌に伝わってくる。3枚組みという長尺モノは何の苦にもならず、あっという間に時間は過ぎていく。そうして、やっぱりこう思うのだ。あぁ、なんでオレは、ブライアン・ジョーンズが居たストーンズを知らない時代に生まれちまったんだろう、と。


ザ・ローリング・ストーンズ『GRRR!』SHM-CD3枚組で2,980円と、かなり取っ付き易い価格だ。

GRRR!  ~グレイテスト・ヒッツ 1962-2012

GRRR! ~グレイテスト・ヒッツ 1962-2012