あの時期のイエスを買ってみた

今一歩購入に踏み切れなかった、イエスの5枚組ボックスセット。ここのところ円安傾向が続き、ただそれだけの理由で踏ん切りがついた。なにしろ、この時期のアルバムじゃあ2,000円を越えると食指が動かなくなってしまうからだ。因みに、同じシリーズのヴァン・ヘイレンなどは6枚組で1,646円と超お買い得だ。
さて、ボックスセットの中身は、時系列順に『究極』("Going For The One"1977)、『トーマト』("Tormato"1978)、『ドラマ』("Dorama"1980)、『ロンリー・ハート』("90125"1983)、『ビッグ・ジェネレーター』("Big Generator"1987)の5枚である。なぜこの5枚なのかと言えば、彼等の歴史の中で大きな区切りを付けるとしたらこの時期以外には有り得ないからだ。『究極』の前が『リレイヤー』("Relayer"1974)であるが、その後、メンバー全員がソロアルバムの制作に取り掛かり、イエス本体は活動を休止してしまうのだ。その間、リック・ウェイクマンの後釜として正式メンバーに加わったパトリック・モラーツが、主に言葉の問題(彼はスイス人で、英語による意思の疎通が上手く行かなかったと言われている)で脱退し、この『究極』よりウェイクマンが復帰するのだが、この時期、世界的な音楽のうねりは大きく、特にパンク以降、彼等お得意の冗長かつ長大な作りの曲は敬遠され、そればかりか、いわゆる"テクニック至上主義"までもが否定され、円熟の域に達しつつあった彼等の演奏技術は大した意味を持たなくなってしまった。まあ、そういった時期の5枚組であるから、アルバムの内容は大きな変化を見せている。この5枚を更に分類すれば、『究極』『トーマト』の2枚、『ドラマ』を挟み、『ロンリー・ハート』『ビッグ・ジェネレーター』の2枚でとなる。メンバー的には最初の2枚が要となるが、『ドラマ』の時期はジョン・アンダーソンとリック・ウェイクマンが脱退し、残されたクリス・スクワイア、アラン・ホワイト、スティーヴ・ハウの3人は、バグルス("The Buggles")のトレヴァー・ホーンジェフ・ダウンズを引き入れ、新生イエスとなるのだが、思っていたよりも強烈な違和感の様なものは感じなかったと記憶している。が、やはりこの時期は別物といった印象が強い(もちろん、バグルスの2人は大健闘ではあったのだが…)。そして最後の2枚だが、個人的には否定的なアルバム内容である。もちろん、アメリカなどでは大ヒットしたし、トレヴァー・ホーンによる"オーケストラル・ヒット"は音楽界に革命を起こしたといっても良い。ただし、これはかつてのイエスではなく、イエスというバンドが、80年代に迎合し曲を作れば、こんなアルバムになるよ、といった意味しか持たない。

さて、実際のブツだが、例によってUS盤お得意の似非紙ジャケットである。ライナーノーツ等を一切省いた作りは、ある意味プラケよりも安上がりと言える。もしもこれが日本製の紙ジャケだとそうは行かないだろうw 曲はボーナストラックが一切無しといった潔さで、音の方はリマスター音源を採用しているが、どの時期のものかは判別できない(というか、そもそもこの時期のCDは全て所有していなかったので、比較のしようが無いのだ)。ボーナストラックは確かに聴いてみたい気もするのだが、その為に、1枚1,000円超のお金を出してまで買う気にはなれないのだ。
この時期、いわゆる大物バンドの多くは停滞し、解散したりもした。しかし、彼らは、なんとかこの氷河期を乗り切ったのである。ただ、その後はご存知の通り、プログレバンド間でメンバー同士が脱退と加入を延々と繰り返すという、聴く側にとっては単に混乱を招くだけの行為をダラダラと繰り返し、その度にダラダラとアルバムを発表して行くという、なんというか、プログレ互助会というか、大御所の寄り合い所みたいな活動を続けていくのだ。結局のところ、プログレはその名前とは裏腹に、超保守的な音楽集団に成り下がってしまった…哀愁こそ漂うものの、その姿はまるで墓守のようだ。


Yes Original Album Series. 1枚あたり400円以下と超お買い得だが、逆に考えれば、この時期のアルバムの人気の無さが伺える。

Yes Original Album Series

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