ウイスキーに合うアルバム No.07 - XTC 『ママー』(1983)

歴史の長いバンドである。とは言うものの、現在はアンディ・パートリッジひとりだけのユニットで、気付けば12年もアルバムは発表されていない(2005年にシングルを発表)。パンキッシュでポップな1st『ホワイト・ミュージック』"White Music(1978)"は国内外に大きな影響を与えたが(例えば、初期P-MODELではその影響が顕著である)、作風はアルバムごとに大きく変貌を遂げ、最終的にはUKを代表するポップスユニットとなった。個人的には、『スカイラーキング』"Skylarking(1986)"が大のお気に入りで、人生に於ける最重要アルバムを10枚挙げろと言われれば、間違いなく選ぶであろう1枚だ。このアルバムは、プロデューサーにトッド・ラングレンを迎えたが、彼とバンドとの間で大きな軋轢が生じてしまう。例えば、アンディがデモを渡した翌日には、トッドによる全く別のオケが出来上がっていたという。この辺りの裏話は、よく、ビートルズに対する両者の解釈の違い、と言われている。また、トッドが、音質をわざと落とし気味に仕上げた為、アンディーはそれを酷評し、その怨念は20余年の時を経て、ついに新リミックスのアナログ盤を誕生させた。

2010年にリミックスされた2枚組アナログ盤。思わずむむむと唸るジャケットw


冒頭からいきなり話は逸れたが、本題に入ろう。ウイスキーというくくりから1枚を選ぶとしたら、断然、この『ママー』"MUMMER(1983)"である。プロデューサーはスティーヴ・ナイ及びボブ・サージェント。サウンド的にはケルティックなアプローチで、アコースティックを前面に押し出しており、リズムもタムやパーカッションを中心に構成された曲が多い。故に、本作は前後のアルバムと比較すると、多少異質ではある(因みにアンディ自身の評価も低い)。ただ、アルバム全体を覆う鬱々とした雰囲気は、何故かウイスキーとの相性が抜群で、1曲目、一気呵成に攻め立てる「ビーティング・オブ・ハーツ」"Beating of Hearts"からコリン・ムールディングの「ワンダーランド」"Wonderland"へと繋がる下りは正に名人芸。一気に夢の世界へと誘われる。続く「ラブ・オン・ア・ファームボーイズ・ウェッジス」"Love on a Farmboy's Wages"は牧歌的で、晩夏の穀物畑が目に浮かんだりして、ウイスキーにはもってこいの曲だ。オリジナル盤ではB面に当たる6〜10には「レディ・バード」"Ladybird"や「ファンク・ポップ・ア・ロール」"Funk Pop a Roll"の様にポップな作品も鏤められており、アルバムを通して、飽きることはない。最後にボーナストラックだが、主に当時発売されたシングル盤のB面で、「ジャンプ」"Jump"や「デザート・アイランド」"Desert Island"は、サウンド的に、本来アルバム本編に収録されるべき曲であったろうと推測される。1989年のリイシューCDでは、ボーナストラックがA面とB面の間に差し込まれたため、オリジナル盤を知る者は混乱した。
一部では失敗作と言われる事もあるが、逆に通好みで、一度嵌ると抜け出せない。一種の試金石なのかもしれない。このアルバムがなければ、反動となる次回作『ビッグ・エクスプレス』"The Big Express(1984)"を経て、『スカイラーキング』へと繋がる事はなかった、と考えれば、非常に重要な意味を持つ作品であると言えよう。
これから本格的な秋を迎えるにあたって、ますますウイスキーとの相性が高まる1枚である。一献いかが?


2001年にリイシューされたものの紙ジャケ盤。

ママー

ママー