ラジのCBS/SONY時代のアルバム(初CD化3作品を含む)が、ついにリイシュー! 

かつて、EMIレコーディング・スタジオ(現アビー・ロード・スタジオ)の第2スタジオには、ビートルズが録音したものはどんなものであろうと破棄してはならないという決まりがあった。それが、きちんと明文化されていたのか、或いは不文律の様なものであったのかは不明だが、当時は、アウトテイクが後に莫大な利益を生むなどという考えは無く(何しろ、テープは消して使い回したほうが得なのだから)、むしろ芸術的な観点から、作品を保護、継承しようという意識が強く働いていたのだと考えられる。もちろん、物理的な理由でやむを得ず破棄、或いは消失してしまったものも幾つかはある。ただ、そういった手厚い保護のお陰で、「Her Majesty」なんて作品が世に出る事になったわけだし(ポールが「要らない」といって切り取ってゴミ箱に捨てた「Her Majesty」のテープ片をスタッフが拾い上げて、「The End」のお尻に貼り付けておいた)、貴重なボツ音源なんてのも海賊盤で出回る事はなく、多くの人たちはそれを耳にする事もなかったはずだ。
しかし、ビートルズの様な例は非常に稀で、他のアーティスト達の作品は、有名無名に関わらず、その保存状態は劣悪なものが多いし、既に消失してしまったものも数多くある。長らく消失していたと思われていた、キング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』のオリジナル・テープがスタジオにあった台所の収納庫から、約30数年ぶりに発見された、な〜んて嘘みたいな話すらある。要するに、どんなに歴史的に価値のある芸術作品であっても、それがきちんとした形で後の世に継承されて行くとは限らないのだ。

さて、この度リイシューされたラジ(Rajie)のCBS/SONY時代の全作品だが、このうちの後から3枚はなんと初CD化である。特に、プロデューサーである高橋幸宏YMO人気で飛ぶ鳥を落とす勢いだった頃の2作品、『キャトル』と『真昼の舗道』に関しては、なぜ34〜35年もの間CD化されなかったのか不思議でならなかったのだが、今回のCD化にあたり行われたエグゼクティブ・プロデューサー高久光雄氏のインタビュー記事(CDに同封)によると、彼がCBS/SONYから別会社に移った際、彼が手掛けた作品には誰も触る事が出来なかったらしい。しかし彼は、『真昼の舗道』は当時きちんと評価されていなかった、とも発言しているが、これは大きなセールスに結び付かなかった、という事なのだろうか? 個人的な感覚では、この作品が売れなかったとは到底思えない。まあ、YMO人気にあやかって、制作側が過度の期待を抱いていたのかもしれないが、少なくとも全く振るわなかったという事は考え難い。多くのYMO関連の作品で、これらの作品のみすっぽりと抜け落ちていたという事実は、誰が考えても異常な状況だったし、もちろん、YMOマニアからのラブコールも多かったはずだが、それにしても実現までに30年以上かかるとは…。毎回の様に書いているのだが、レコード会社は、多くの人が望むCDを発売もせずに、CDが売れない売れないとほざいてるんじゃねえ。


今回購入したのは『キャトル』と『真昼の舗道』。リマスターはオリジナル作品のエンジニアでもある吉田保である。紙ジャケ仕様で、盤はBSCD2仕様だが、紙ジャケは(多分)本当のオリジナル・ジャケットに忠実な作りで、『キャトル』は重厚な作りだが、『真昼の〜』はペラだ。
今回のリイシューは「ソニーミュージック音源再発計画」としてリイシューされたが、販売はブリッジの通販のみで、他に流通はしていない(但し、取り寄せは可能)。詳しくはこちら