大滝詠一『アーリー大瀧詠一』のリマスターCD+ハイレゾ音源収録DVD-ROMが発売!

松田聖子のCD/SACDハイブリッド盤ですっかりお馴染みの、雑誌「ステレオサウンド」より、今回は大滝詠一の初期ナンバーを収録したベスト盤、『アーリー大瀧詠一』がリマスターCDとハイレゾ音源を収録したDVDの2枚組で発売された。(注:当時のアーティスト名義は"大瀧"である)
実はこのアルバム、オリジナルのLP盤も、その後ボーナストラックが収録されたCD盤も、更には2014年に発売されたLP盤も所有していない。というのも、このアルバムがベスト盤という事もあり、ここに収録された全ての音源を所有しているからだ。ここに収録された音源は…

01.「空飛ぶくじら」02.「恋の汽車ぽっぽ(第一部)」は共にシングル盤で、これれは『シングルスはっぴぃえんど』等に収録された。
03.「外はいい天気だよ」04.「田舎道」は、はっぴぃえんど名義での最後のオリジナルアルバム『HAPPY END』から。この時期のはっぴぃえんどは事実上解散していたが、ベルウッドを立ち上げた三浦光紀氏の提案、"アメリカでのレコーディング"という餌に見事に釣られて制作された。
05.「指切り」06.「びんぼう」07.「乱れ髪」08.「あつさのせい」は大滝の1stである『大瀧詠一』より。

09.「空飛ぶうららかサイダー」10.「ココナッツ・ホリディ」は、アルバム『ライブ!! はっぴぃえんど』からの音源で、名義は"大瀧詠一とココナッツ・バンク"だ。
実はこのアルバム、最初の発売時には、カセットのみA-06.に「五月雨」が収録されていた。さらにCDでリイシューされた際にはボートラが追加され、全17曲となった。つまり、今回のリマスター盤は現行のCD盤ではなく、オリジナルのLP盤を目指してリイシューされたという事になるので、特別音にこだわりのない人にとっては、買う必要のないものである。

これらのアルバムで収録曲はカバー出来てしまう。
さて、本題。今回のこのアルバムの最大のポイントは、全ての音源を、曲毎のオリジナル・マスター・テープを使ってリマスターしているという点だ。前述のリイシュー盤=CD盤、2014年LP盤に収録された音源は(ボートラを除き)、全て当初作成されたLP用のマスター・テープを使用している。つまり、各音源をコピーしてひとつにまとめたテープを使用しているという事だ。今回は、正真正銘のオリジナル・マスターからという事で、おそらく、アルバム全体の音の摺り合わせはしていないんじゃないかと思われる。従って、各曲の録音状態にかなりの差が認められるのも確かで、全体としての録音の評価はなかなか難しいものがある(なにしろ、ライブ音源まで混じっているのだから)が、特別に酷い劣化、例えば松田聖子SACDで認められた音のヨレみたいなものは今の所発見していない。実はこのアルバムは(当時の)選曲の際に、録音のいいものを第一に優先したそうだ。つまり、そもそもの録音が良いという事で、考え様によっては、少なくともその当時劣化はしていなかった、という裏付けになるのかもしれない。最も、その当時は10年程度しか経過していなかったわけだが。
最後にハイレゾ音源だが、これはDVD-ROMに記録された音声ファイルなので、DVD-AUDIOとは違う。従って、再生の際にはハイレゾファイルが再生可能なオーディオ機器が必要となる。ファイルは192kHz/24bitのWAVファイルなので、PCに取り込めばPCで再生可能となるし、それをUSBメモリにコピーすれば専用のオーディオ機器で再生できる。それにしても、CDを再生した後にこの音源を聞いてしまうと、正直、もうCDでは満足出来なくなってしまうほど、音の細かな表情までが完璧に再現されている。もちろん、前述のとおり、録音にバラつきがあるのは仕方ないが、それでも、01.「空飛ぶくじら」でのクラリネットやらの管楽器類の音は、あまりにも生々しくて、音が流れた瞬間に総毛立ったほどだ。

オレンジがCD、グリーンがDVD-ROMとなっている。
今回、ステサンの通販サイト(こちら)では、オリジナルテープの箱写真が掲載されており、ここに記された曲目の欄には様々な注意書きが見受けられる。例えば、殴り書きで「キレイに巻けない!」とか、「MONOとしか思えない」(実際にMONOなんだけどねw)とか、或いはタイトルの誤表記みたいなものを見ると、この世に考古学が発生した理由がよく判るが、やはり40年以上の歴史の重みみたいなものを感じてしまうのだ。実は、今秋には1st『大瀧詠一』も、このシリーズで発売される事がアナウンスされており、既に今から待ち遠しいのである。


ステサンのサイトより(実際の写真はもっと大きい)。