ほくろの話(後編)

徐々に大きくなっていったこのほくろは、右こめかみ横の少し下に位置する場所にあったのだが、直径7ミリ程度で、目立つといえば目立つ大きさであった。しかし、私を幼い頃から知る友人達には、このほくろと私の顔はセットで記憶されていないらしく、切除した話はこちらから切り出さない限り気付かれないし、話しても「さっぱり記憶に無い」と返されることも多かった。まあ、他人の顔なんぞ、事細かに記憶してないってのが普通なんだろう。
話を戻そう。手術の告知からだ。医師曰く「これは良性だが生体検査のため全切除します」。ん〜、これは健康保険に絡んでくる部分なのだろうか?要するに、美容としての手術ではなく、あくまでも外科的なそれであるという確認なんだな、と、なんとなく理解。気になる費用だが、手術代や処方箋込みでも1万円を越えることは無いとの事。そして、術後は少しの休憩でそのまま帰宅出来ると聞き、ほっと一安心。
さて、手術の当日。この日は非常に気温が高く、徒歩で通院した為、血圧と体温が上がったまま下がらない! 30分以上の休憩の後、ようやくGOサインを頂く。手術室へ向かうと担当医がニコニコしながら迎えてくれる。今回の担当は他に、成り立ての女医さんと、成り立ての看護婦さんの3人だ。な〜んとなく一抹の不安がよぎるw 手術は患部以外の顔部分が布で覆われている為、何をされているのかを見ることは出来ない。が、患部が耳の近くなので、いきなりメスが肉を切り裂く音が"ギリギリ"と聴こえる! 切除はすぐに終わったが、縫合には時間が掛かる。というのも、患部より少し大きめな1センチ四方の皮膚を切り取ってしまう為、この部分を覆う為の皮膚が無いわけで、これをどうするのかというと、実は患部下方の皮膚をコの字型にメスを入れて剥ぎ、それを強引に上方向へ引っ張り上げて切除部分と縫合するという力技を使うのである。しかも、縫合作業は若い女医さんが担当したので、軽く30分以上掛かってしまった。ただ、見習い看護婦さんがとても無邪気で、話すことがいちいち可愛くて(実は容姿もアイドル並みに可愛かったw)、笑いをこらえるのに苦労したため、この長時間の縫合にも耐える事が出来たのである。
術後の話。この皮膚科にはもうひとり、お婆さん看護婦がいてwこの看護婦さん曰く「早く取って良かったでしょ?」「一度気になりはじめると(精神的に)参っちゃうから」…なるほど、解っていらっしゃる。本当に、それまでのイライラやモヤモヤは何だったのだろうと痛感する。たかがほくろ、されどほくろ。たった数ミリの事で随分と悩んだものだ、と思えど、今はまた、もう病院には行きたくない、とは、何とも度し難い、が、まあ、人間そんなものなのだろうw