ほくろの話(前編)

今から3年前の丁度今頃、私はとある総合病院の最上階にある手術室の手術台に横たわっていた。顔面には一部がくり抜かれた布が掛けられ、今まさにメスが入れられようとしていた… と書くと、なにか大変な事故で顔面に傷でも負ったか、或いは何か大病を患ったのかと勘違いされそうだが、実は、ほくろの除去手術を行ったのである。
実はこの数年前から、顔面にあったほくろが少しずつ大きくなり始め(直径7ミリ程度)、それがどうにも気になって仕方がなくなってしまったのだ。悪性では?との心配があったのは言うまでもないが、何よりも、日常生活で、例えば、顔を洗ったりする度に爪で引っかかないように気を遣い、また、タオルで汗をぬぐったり、寝返りをうったり、服を着替えたり(Tシャツを脱ぐ時にこすれる)、その他にも様々な場面で常にほくろに対して神経質になっていたのである。もうね、オレの世界はほくろを中心に回ってるんじゃないの?っていうくらいw そんなこんなで、ようやく病院へ行く決断を下し(大袈裟w)地元の総合病院の皮膚科へ向かった。診察室に入り症状を説明するや否や担当医(女医さんでした)はこう一言言い放った。「いいほくろだと思います」…一瞬、意味が飲み込めない。よく考えれば"いいほくろ"とは"悪性ではない"という意味だったのだが、なぜかこのほくろを褒められたと勘違いしてしまったのだ。そして次に、きっぱりとこう言い放った。「従って、治療も薬も必要ありません」。ああ、そうですか…いや、そうじゃない! 私はこのほくろとは、もう縁を切りたいんです、と切々と訴えると、では○○病院の××先生を訪ねて下さいとの返答。どうやら、この女医さんは外科的な手術が出来ないようだ。返す刀で、とは行かないが、数日後、その医師を訪ねると、ほくろをしばらく観察した後に「確かに大きいね」と言い、続いて「じゃあ、手術しましょう。明後日どうですか?」とのあまりにも軽い返答。エーーーーーーーーッ! ちょっと、そんな簡単に決めちゃっていいの? それに、手術費用とかどうなのよ? 入院とかすんの? いや、そもそもこのほくろは良性なの?悪性なの? …様々な疑問が頭の中を駆け巡る。どうすりゃいいの?オレ!(この項続く)