ビートルズのリマスター盤、とりあえず『ABBEY ROAD』を聴いてみた!その2

1969年初頭、ジョージは超巨大なサウンドモジュールからなる電子楽器、ムーグ・シンセサイザーを購入し、同年5月、アルバム『ELECTRONIC SOUND』をApple実験音楽専門レーベル“Zapple”よりリリースした。当時、不評だったこのアルバムだが、これが『ABBEY ROAD』におけるシンセサイザー導入の布石となったことは言うまでもない。ポールは「Maxwell's Silver Hummer」に於いてリボンコントローラーで演奏、ジョンは「I Want You」に於いてノイズを作った。他の曲於ける演奏の殆どをジョージが担当した。
アナログ盤で言う所のB面での聴き所は、言うまでもなく、このシンセサイザーである。当時目新しかったこの楽器を、極めて控えめに導入しているのは、恐らくジョージ・マーティンの指示であろう。バンドサウンドとオーケストラ、そしてこのシンセが、渾然一体となって織り成す至高のサウンドは、ある意味、ロックが目指した到達地点といえるだろう。(その後ロックは、自らの手でその立場を破壊してしまうのだが、それはまだ7〜8年も先の話だ。)
さて本題に入ろう。B面1曲目にあたるジョージの「Here Comes The Sun」。冒頭のアコギの引っ掛かり具合の生々しさからして期待が持てる。中間部のリフレインでシンセが被さってくる部分。まず、シンセの低音の図太さに歓喜し、更に、高音へと向かう毎に高揚感は増し、それはピークを迎える。まさに至福! 個人的には、このアルバムのベストと言える。そして「Because」。またもシンセが重要な役割を担う。OPはジョージ・マーティンの弾くエレクトリック・ハープシコードで、ちょっとホルン風な音が、ジョージの弾くシンセだ。ここでも、低音部分で相当分厚い音が出でおり、リバーブの掛かり具合も綺麗に聴き取れる。因みに、ハーモニー部分はジョージ・マーティンの綿密なスコアと指導による、3人3声=9声によるコーラスで、ノイズの少ない静寂なリマスター作業が功を奏している。
さて、いよいよこのアルバムのハイライトである後半のメドレー部分に突入する。ジョンに言わせれば、自分の作った曲も含めて“クソ”なのだそうだが、やはり、世界最高のバンドの最後のアルバムが、終わりに向かって行くその凄まじいエネルギーは、聴く者全てを圧倒する。正直に言えば、聴いているうちに、もうリマスターなんてものはどうでも良くなって来るw 曲自体が、それ位のパワーを持っているのだ。確かに、音質が上がれば、曲やアルバム自体の持つ本来の意味が、よりはっきりと見えて来る。それが、リマスターという作業である。ただ、繰り返し述べたが、私たちが本当に必要なのは、当時そのままの彼らの音であって、決して今風に調整されたものであってはならないのだ。
いっときの静寂の後に訪れる彼ら最後のお遊び「Her Majesty」が、初めてこのアルバムを聴いた時の様にあなたを驚かせたのなら、あなたにとってこのリマスター盤は必要であったのだ。