植芝理一 『謎の彼女X』 第10巻

外国じゃあどうだか知らないけど、日本ってのはつくづく年中行事の多い国なんだなあと思う。でもそれが悪いってわけじゃなく、諸外国のあらゆる文化を貪欲に吸収し、独自のスタイルに変形させ、定着させるってのは、ちょっと他の国じゃ真似出来ない、いかにも日本人的な芸当だと思うんだなぁ。それでも、人生の中で死ぬまで続くイベントってのは、そんなに多いわけじゃく、例えば文化祭なんてのは、地域のサークル活動なんかを除けば、学生限定のものだし、バレンタインデーが、人生の一大イベントになるなんてのも、若いうちだけだ。もちろん、町内の老人会でモテモテのじーさんに、残りの人生の全てを賭けてチョコを渡すばーさんがいてもいいけどさw
さて、『謎の彼女X』である。巻数の方は10巻の大台に乗ったが、あらためて第1巻をめくってみると、卜部の顔が全然違う事に驚く。最初はクリッとした瞳だったのが、今じゃ、でっかい三白眼(まあ、他のキャラも似た様なもんだけど)。といっても、この漫画を初めて読んだのが去年の話だから、いかに自分の中で、今の卜部が定着しているのかが判る(もっとも、最初の入り口がアニメだったので仕方ないか…)。
ところでこの漫画、話数も76話と、べらぼーな長さの学園生活になって来たが、考えてみれば登場人物達は年を取らないなあ。季節的には二巡目くらい? しかし、回を重ねるごとに、彼女のミステリアスな部分が減少して行っているのが残念だ。それは、もちろん、彼女達が年を取らない事に由来するわけだが。なにしろ、高校生が進級や進路について何ら気を遣う事無く、永遠の恋愛を楽しんでいるのだから。しかも、プラトニックのままで何ひとつ進展していない! これはもう、『ビューティフル・ドリーマー』の世界だ。それが彼、彼女の望む世界であり、また、そこに住む登場人物の、或いは、読者や作者の望みでもあるのだろう。だからこそ、彼女の謎は、永遠に明かされないのだ。


植芝理一謎の彼女X』 第10巻。文化祭、クリスマス、お正月、バレンタインデー、ホワイトデーと、青春のイベントがてんこ盛りだ!

謎の彼女X(10) (アフタヌーンKC)

謎の彼女X(10) (アフタヌーンKC)