ウイスキーに合うアルバム No.13 - リンゴ・スター 『リンゴ』(1973)

久々のこのシリーズ、前回は一体何時書いたのかな〜と思って調べてみたら2014年の1月。ありゃ〜、もう1年以上も前だったのか…。その時の記事はジョンの『心の壁、愛の橋』だったんだけど(こちら)、んじゃあ、今回は安易にリンゴにしてみようかなw
リンゴ・スターって、例えば80年代にビートルズを知った様な世代では、音楽的なヒットみたいな所からは無縁な人って思われてるみたいだけど、自分の様なもうちょっと前の世代からすると、FAB4の他のメンバーと同じくらいヒット曲を量産していた人というイメージが強い。それは自分が、リアルタイムで発売されたベスト盤『思い出を映して』("Blast From Your Past"1976)を愛聴していたせいなのかもしれないなぁ。まあ、解散後のスタートダッシュにポールが出遅れたってのもあるんだろうけど。とにかく、当時のビートルズファンは、個人の活動にすがるしかなかったわけだ。



彼のソロ第3作にあたるこの『リンゴ』("RINGO"1973)は、恐らく彼の最高傑作であろう。アルバム・ジャケットは『Sgt Peppers〜』を意識したとも言われているが(アルバムの共演者がイラストで描かれている)、それくらいバラエティに富んだアルバムである。その1曲目はジョンの作曲による「I'm the Greatest」。いわゆる"失われた週末"直前に作曲されたもので、歌詞の中には、オレはかつて"ビリー・シアーズ"と呼ばれていた…と、「With A Little Help From My Friends」のビリー・シアーズ(サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド専属の花形歌手、という設定)が登場する。母親からは、あなたはグレートな子、やれば出来るのよ的に励まされ、勘違いのまま大物になっちゃったアーティストの話だ。ウイスキーを嘗めつつこの曲を聴いていると、何故か気が大きくなる曲で、それこそ勘違いで何かやらかしかねないから要注意だ!



2曲目「Have You Seen My Baby」はGにT・REXのマーク・ボランがフューチャーされたミドルテンポのロックンロール。しかし、この曲、作曲はランディ・ニューマンだけど、ボーカルを取り除いたら完全にT・REXの曲になっちゃうところが凄い。3曲目はがらりと曲調が変わって、ジョージとリンゴの共作である「想い出のフォトグラフ」で、シングルカットされ大ヒットした。当時はこの2人の共作というのが最大の目玉だったのだろう。サックスは"失われた週末"でジョン、リンゴと行動を共にする事になるボビー・キーズなので、もうそれだけの理由でウイスキーに合ってしまうのだ。4曲目「Sunshine Life For Me」はジョージの作品だがアレンジはリンゴを意識してカントリー調で、しかもバックはザ・バンドの連中と来たから、酔いも回るというものだ。5曲目の「You're Sixteen」はカバー曲でオリジナルはジョニー・バーネットだが、個人的にはもうリンゴの曲みたいな扱いになってる。タイトル通り、ちょいロリ入った歌詞だけどw
7曲目(B面2曲目)、「Oh My My」、こいつは渋い。正直、この曲だけ繰り返し聴きながら、チビチビとウイスキーを嘗めていたい気分になる。ヴィニ・ポンシアとの共作で、彼はロネッツなんかに曲を提供していた人らしい。8曲目「Six O'Clock」。曲はポール&リンダ。確かにリンゴをイメージして提供したのかもしれないけど、これはポールの甘ったるい一面が出すぎて、いささかウイスキーには合わない。よって、グラスに氷を足しに行く時間として使わせて頂くよ。
そうこうしている内にいつの間にやら最後の曲、「You and Me」。ジョージとマル・エヴァンスによる共作? マル・エヴァンスは作詞? よく判らないけど。まあ、とにもかくにもお別れの曲だ。最後にふさわしく、リンゴによる謝辞が語られアルバムは幕を閉じる。なんというか、こいつは、ウイスキーをとことん楽しく飲めるアルバムなんだな。リンゴを人格者と呼ぶ人も多いけれど、自分は決してそうは思わない。だが、このアルバムにはリンゴの人柄が色濃く反映されている。アルバムを作ると言えば、多くのミュージシャンがこうして惜しみなく力を貸してくれる、そんな誰からも愛されるキャラ、それがリンゴなんだ。

リンゴ

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