丸尾末広『トミノの地獄 1』 花輪和一『呪詛』

たま〜に、そう、数年に一冊くらいしか新作が発表されない作家や漫画家の情報ってのは、当然ながら頻繁にチェックはしない。だから、何気にネットを眺めていたら、おっ、出てたんだ!みたいな感じで新作に出くわすと何か嬉しい。で、今回は二大巨頭のそれに出くわしたんだが、最初は丸尾を発見して、まぁ、丸尾が出てるんなら花輪もって調べたら、こちらも出てました!みたいな、二重の喜びw もちろん、ほぼ反射的にポチッていた。amazonは新作以外の配送に関しては速いね。大抵は翌日か翌々日に着く。まあ、配送センターが近いってのが大きいんだろうけど。では早速…。

今回は両作品とも去年(2014)の暮辺りに発売されたものである。彼等の作品はデビュー当時から全くブレる事がないので、必ず"買い"なのである。言い方を変えれば、もう嫌いな人は永遠に買わないって事ですけどね。



まずは、丸尾の『トミノの地獄 1』。例によって、見世物小屋と人攫いとエログロ。望まれずに生まれた双子の男女の子供が、ただただ不条理な世界に曝される。コミックビームに連載されているので、作品はこの後もコンスタントに発表されると思われるが、恐らく物語は不条理なまま完結して、カタルシスの様なものは決して訪れないと予測できる。世の中が不条理である事を全肯定して描き続ける作家はそう多くはない。そんな作家の一握りが、丸尾末広、そして花輪和一なのである。



花輪の『呪詛』は、タイトル通り、不条理を情念や怨念といったエネルギーに転化させて生きて行く人々の話だ。花輪の場合、ちょっといい話になったり、救われたりする場合もあるんだが、必ずしもそれが正しい方法によって行われるワケではない。人の道を踏み外さずに、仏の教えを守り続け生きていても、人生の苦痛からは一向に救われず、最後にキレる主人公ってのは、この作品に限らず今までも数多く登場してきた。不条理に対するこのキレ方ってのはやはり花輪独特の表現だと思う。ところで、今回の作品で驚いたのは、画力の復活である。この作品は約10年間に亘る連載作品の単行本化だが、とにかく繊細で緻密な描き込みには目を見張るものがある。出所後に連載を完結させた『天水』辺りはずいぶんと酷い画だったが、徐々に復活。ただ、『風童』『みずほ草子』における画力の低下は否めなかった。今回の単行本化に際して、加筆修正があったのかは不明だが、ここ数年の作品では一番の作画だと思う。さて、次に出るのは何年後だろうか?

呪詛 (幽COMICS)

呪詛 (幽COMICS)