大滝詠一『NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-』

ついに発売になった、大滝詠一NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-』。amazonからの発送メールが来たのはいいが、一向に着く気配がない。ネットで追跡調査してみたら、何故か関係のない郵便局へ配送されて「遅配」扱いになっており、発売から2日過ぎた頃にようやく到着となった。逸る気持ちを押さえつつ開封。あれ〜、いつものように初回限定の三方背のアウターカバーがない…というか、あれはなくていいんだよ。いちいち開封するのが面倒だし。だから、逆にシンプルでよかった。さて、肝心なのはブックレットの中身。これは、前回の記事で苦言を呈したが(こちら)、大滝亡き後、このアルバムがどの様な経緯で発売に至ったのか? 大滝本人は、このプロジェクトにどこまで噛んでいるのか? その辺りを明確にしてほしかったのだ。が、そういった類の記述は一切なく、逆に、それこそが大滝が一切関わっていないんじゃないかという疑念を一層強くした。今月号の『レココレ』(2015年9月)特集で、この辺りに言及した記事が掲載されていると有り難いんだが…。



では、早速聴いてみよう。前回も書いたんだが、何はともあれ、ちゃんと楽しんで聴きますよ。出ちゃったんだからw まず、Disc-1。こちらは1995年にリミックスされた音源を、当時あった構想の曲順で収録したもの。このリミックスがどういった経緯で作成されたのかについては、一切記述がない。ただ、この95年は、ナイアガラのCDが廉価盤で一気にリイシューされた前年に当たる。従って、このリミックスは、正規盤として発売されなかったボツバージョンと考えるのが妥当だろう。音質は文句なくよい。
お次はDisc-2。こちらは、77年6月に行われたライブ「ファースト・ナイアガラ・ツアー」の『Moon』関連の音源だ。とにかく貴重なものと思われるが、こういう音源がきちんと管理されているあたりは、さすが大滝!と驚嘆する。録音状態も音質も文句なくよい。…と、なにやら、ブート盤の評価をしているような錯覚を覚えるがw それにしてもこのライブ、大滝詠一というミュージシャンの実像がリアルに浮かび上がってくる。歌唱はほとんどべらんめー口調。おそらく、『ロンバケ』あたりの大滝しか知らない人にとっては、あまりにもイメージとかけ離れていると感じるはずだ。歌詞は細かな部分をライブ向けに変更しているし、歌い間違えても軽く受け流す辺りは、はっぴいえんどのライブで鍛えられた余裕のようなものを感じる。
さて、最後のパートは、75年のオリジナル盤に先がけて作られたアルバムのラフ・ミックスのフル・バージョンだ。これは、大滝が生きているうちは、やはり日の目を見なかったんじゃないかと思う。そう思うと、何か罪悪感の様なものすら感じるのだが、やはり貴重なものだから、それは有り難く拝聴するのが正しい接し方なんじゃないかな。音源の方は、完成形に近いものから、そうでないものまでまちまちだが、保存状態は良好で、一部ドロップアウトする箇所も認められるが、音質は総じてよろしい。

この40周年記念盤は、大滝の意志(遺志?)で作られたものではないのかもしれないが、マニアにとってみれば必携のアイテムであると言えよう。ただ、「40周年記念盤」という表記は何か違うような気がするし、帯の表記に至っては、40周年の文字は小さく、普通にリイシューされた正規盤のようにすら見える。もうこれは、正規盤とは全くの別物ですよ、くらいの、徹底した差別化があった方がいい気がする。例えば、『Niagara Moon アンソロジー』とか。要するに、大滝のカタログはただでさえ解りづらいのだから、これ以上の同名タイトルは必要ないと思うのだ。今後、ナイアガラ関連の音源がどの様に扱われて行くのかは不明だが、きちんとしたコンセプト無しにアルバムを乱発するのだけは勘弁してほしい。

NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-

NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-