ホムセで見つけたビートルズの『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』(税込み309円)を聴いてみる。

先日ホームセンターで時間を潰していた時の話。よく、ワゴンに本人歌唱、だとか、オリジナル音源、だとか銘打って、格安で並んでいるCDなんかを見かける。最近では、昔のディズニー映画がワンコイン(500円じゃなくて100円ね)で売っていたりする。そこで見つけてしまった!ビートルズの『Please Please Me』〜『Sgt.Pepper's Lonely Hearts Club Band』の激安CDを。プラケもジャケもなく、ただの厚紙のCDケースに剥き出しのCD盤が入っているだけ。お値段はなんと税込み309円だ! これ、ビートルズのCDを持ってる人なら、正直必要ないもの。だよね、普通は。でも、普通じゃないのがマニアって事なんだろう。つまり、そこで、ここに収録されている音源って、一体何なんだろう?という疑問が湧いてしまったのです。つまり、もしもオリジナルのコピー品であったら、こんなに堂々とは売れないはず。しかもJASRACの文字まで印刷されている。確かに、量販店でビートルズのCDは見かける事はよくある。しかし、その殆どはごく初期の作品を使ったベスト盤で、記憶では、せいぜい『Rubber Soul』の作品くらいまで。もちろん、輸入品扱いで、日本語のジャケットであっても、外国でプレスされたものだ。だから、アルバムまるごとの商品が売られているのはちょいと異常。よって、ここに収録された音源は、オリジナルとは違うはず!という結論に至ったわけです。そういうわけで、買い物かごに中にはいつの間にかこの『Sgt』が入っていたというわけです。はい。『Sgt』を選んだ理由は特になく、しいて言うなら、聴き込みの度合いが割と高い、といったところかな。






さて、このブツ。とりあえずは聴いてみない事には始まらない。スピーカーから流れてきたその音は…あれ、これは最初にCD化されたものの音じゃない! もちろん、09リマスターの音でもない。それは、もう、相当聴き込んでますから、違う音だとすぐに判別できる。ただ、テイクは全く同じだ。ちょいとばかり謎が深まっていく。更に聴き進んでいくと、決定的なやつが出た。08.Within You,Without You.の最後、笑い声が入っていない! これは大ごとだ!何故って、自分の知識の中には、笑い声のカットされたバージョンなんて全くないから。すぐさまググってみるも、そんなバージョンは一向に見つからない。一旦諦めて、曲を聴き進めていくが、決定的なものはもうない様だ、と、思った瞬間、またしても凄いのが出た! 13.A Day In The Life. の最後、「犬のための音楽」とテープのコラージュ、一般的に「Sgt. Pepper Inner Groove」と呼ばれる部分が丸々カットされているではないか! そこで、このバージョンも調べてみると、なんと、キャピトル盤のLPには、このInnner Grooveは収録されていなかったのだそうだ。確かに、キャピトルがUKオリジナル盤と全く同じものを作ったのはSgtからだが、実際には、送ってもらったテープを使ってカッティングをしているわけで、この最後の部分を送り溝に収録するなんてのはかなり高度なテクを持ったカッティング・エンジニアじゃなきゃ無理というもの。そもそも、そういう指示があったのかも判らないし、この部分の音がはなからテープに収録されていなかった可能性だってある。でも、まあ、このカットされているLP盤が実際に存在していたという部分に於いては納得のできるものだった。しかし、謎なのはWithin You〜である。念のため、各音源を…すなわち、1987年盤と2009年盤ものをリプして、解析してみようと思ったのだが、そういえばリッピングソフトにはデータベースにアクセスしてファイル情報を取得するシステムが搭載されているので、それを使えば正体が判るはずだ! 因みにここのデータベースは曲数とタイムが合致し、かつ他のデータと曲名が著しく違わなければ、自己申告でも情報として登録されてしまうようで、必ずしも正しいデータが反映されているとは限らない。
結果、MFSL(モービル・フィデリティ・サウンド・ラボ)or Dr.Ebeetts。ただ、MFSLは、ビートルズではアナログ盤は存在しているが、CD盤は存在しないので、Dr.Ebbettsという事になるのか。では、このDr.Ebbettsなる盤はどういうものかというと、CDからリプしたファイルを独自にリマスターを施し、高音質盤CDとして勝手に販売している海賊盤ということらしい。MFSL盤とされるものは、この高音質に目を付けた他の業者が、MFSLの名を冠して売りに出したという事なんだろう。この背景には87年盤のCDの音質が次第に時代にそぐわなくなってしまい、マニアは高音質のCDを望んでいた。更に、87年盤では一部のアルバムでステレオ盤、モノラル盤が廃盤になってしまったという問題があった。最初はそれら廃盤となったアルバムを高音質でCD化したという経緯があり、その後、正規盤を上回る音質とされるCDが製品化されたのだろう。ただ、最後まで残ってしまったのが、Within You〜の問題だ。おそらく、相当なマニアが関わっての製品化であるだろうに、なぜ笑い声をカットしてしまったのだろう? 何か理由があるような気もするのだが、もうこれ以上の労力は無駄な様な気もする。
最後になるが、結局のところ、これは海賊盤である。しかも、Dr.Ebbettsをまるごとコピーしたものだ。パッケージの日本語表記からみて、企画製作は日本の会社と思われるが、MADE IN TAIWAN である。これは、著作権の抜け道の様な気もするが、とりあえず、JASRACの表記があるのだから、きちんと徴収はされているのかもしれないけど、そういう事に敏感な人は買わない方がいいでしょう。マニアはそういうところを超越しちゃってるので、話のタネとして買ってもいいかもしれません。正直、聴感上の音質は87年盤よりもいいかもしれません。また、他のアルバムにもオリジナルとの相違点があるかもしれませんが、個人的にはもういいですw 以上。