マイネルのターボクラッシャー(MEINL TURBO CRASHER LARGE )を手に入れた!

コロナ禍以降、バンドやプロジェクトが立ち消えたり、或いは新たに発足したりと、中々落ち着かない日々ですが、そんな中でパーカッションの類を充実させようといった目論見があって、まあ、それは自分自身の自由度を上げようという考えでもあるんだが、とりあえずは小物類から始めようと思い立ち、このブログでも度々紹介してきたわけです。一応は2万を超えない範囲で、という縛りは設けたんだが、それにしたって塵も積もればなんとかでさ(笑)、結構な出費だったりもします。それが、音そのものに関するもの…例えば楽器本体なんかであれば納得いくんだが、それを固定するためのアタッチメントの価格が、本体を上回ってしまったりすると、なんだかなあと思ってしまう、まあドラマーあるあるなんですがね😅
さて本題。今回はマイネル(MEINL)のターボクラッシャー(TURBO CRASHER)のレビュー。この製品はSとLのサイズがあるのだが、今回購入したのはL(ラージ)で、中々安い店を見つけられずにいたのだが(サウンドハウスで3千円ちょいで売ったいたのだが、現在Lは取り扱っていない)、なんとか送料込みで4,451円の店を見つけ出してゲット! まあ、サウンドハウスの足元にも及ばないが、恐らく最安値だったと思う。

ところで、このクラッシャーという楽器、一体何に使うのかと訊かれると中々返答に窮するところなんだが、簡単にいえば、アクセントを付けたり、逆にすかしたり、シンバルで言えばスタックとか、そういった類の物で、構造としては、金属の板を数枚重ねて緩くネジ止めしたもの。正直言って、これといった定義は存在しないので、手作りでもイケるし、YouTubeなんかでも作り方を紹介している動画もある。一番簡単なのは、割れたりして使い物にならなくなったシンバルから板を切り出して、それを数枚重ねるといったもの。もちろん、形成や火入れなどの作業工程もあるが、基本的には自由なので、素材も様々な金属板で試すことも面白そうだ。
ともかく、この様に基本的には自由な楽器で、例えば、パールのクラッシャーは金属板にジングルが2個取り付けてあったりするが、このマイネルのクラッシャーに関して言えば、上部に2枚の波形の金属板を使用しており、それによってウォッシュボード的な効果(スティックを横に滑らす)を出すことも出来る。
音量的には、最初、室内で試奏してみたらあまりのデカさに驚いたが、実際にスタジオでドラムセットに組み込んでみたら、そうでもなかった(笑)という。まあ、どうしてもスネアのオープンリムやハットの音には負けるといった感じだが、ジャンルによっては…例えばアコースティックセットなどでは逆に大きすぎたりする可能性もある。実際の音量については下の動画を参考にしてもらいたい。

パーカッションに組み込んでみたが、振動で上のジャムタンバリンと音が干渉してしまったので、このセッティングは失敗だった。

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「東京燈夜」の夜。

9月18日、「東京燈夜」と銘打たれたフェイ・ターンさんとKOWさんのライブが碑文谷APIA40に於いて行なわれた。会場に入ると、フェイさんの手によるひょうたんアートがステージの各所に配置され、内蔵されたLEDが怪しげに光り、場内を異空間のごとく照らしている。

フェイさんによるあいさつ代わりの演奏が始まると、空気が何やら柔らかくなっていくのを感じる。実は、テルミンという楽器、不確定要素が強く、不安な気持ちにもなる楽器なんだが、彼女の演奏は極めて正確で、まるでエレクトリックな二胡の様な音にさえ聴こえてくる。
さて、第一部はKOWさんによる演奏。今回は新曲から旧曲まで幅広い選曲だったが、新参者の私にとってはどれもこれもが新鮮に感じる。特に「透明なドラゴン」のアコースティック・バージョンは強く心に刺さった。というのも、この曲はKIATバージョンを最初に聴いていたので、自分にとってはそちらがオリジナルといった感が強い。KIATはメンバー4人が全員手練れで、それぞれが表現力豊かなミュージシャンであるため、実は自分の中ではこの透明であるはずのドラゴンが3Dモデルとして存在していたのだ。それはまるで、ファンタジーRPGに登場するドラゴンの様でもあり、ELPマンティコアやタルカスの様な得体の知れない存在の様に頭の中で具現化していた。しかし、(ライブ終了後に知ったのだが)この曲のオリジナルは約20年前に発表されたアルバム『透明なドラゴン』こそがオリジナルで、そもそもが極めてアコースティック色の強い演奏だったのだ。この透明なドラゴンは、未来を指し示す水先案内人なのか、それとも自分自身の内で暴れる退治すべき存在なのか、それとも対峙し続けるべき存在なのか、或いは自分自身の分身な様な存在なのか、歌詞の内容や意味は、演奏楽器や演奏形態、或いは演奏場所によって変容を遂げる。そんな事を考えながら聴き入っていた(と、ライブ終了後、KOWさんに話した)。
この後、おまたんこと小俣慎一さんとのユニット、ファーカンダの演奏が始まる。私事だが、十日ほど前に母を亡くした自分にとって「ロータス」は心に染み入る曲で、何よりもの供養となった。

さて、いよいよフェイさんの演奏。そもそもテルミンの生演奏を聴いたことが無かったので、自分にとっては未知の領域と言ってもいいだろう。と思っていたら、テルミンはスルーしてピアノの前に。そして「地層」が始まる。地球という生命の営み。途切れそうになっても何とか生き残って、また途切れそうになっては生き残り、この繰り返し。
そして、この繰り返しこそが地球という生命そのものでもあり、今生きる私達そのものである。地層が物語るこの地球という生命が、実は自分自身であることを強く認識させられる、そんな力強くて壮大な作品だ。彼女曰く、この曲が出来たとたん、やり切った感が強くて、曲が作れなくなってしまったそうで、まあ、それくらい全てを出し切った大作なのだろう。
そして、今度こそテルミンの出番。どうやら、今回展示されているひょうたんからインスパイアされた曲のようで、なるほど、潜水艦にも見える大きくなり損ねたひょうたんだ。途中、鵜飼恭子さんをゲストに迎えるが、彼女の世界観に没頭するあまり、テルミンを弾かなかったのは大英断。まあ、あっても良かったんだろうが、鵜飼ワールドを知ってもらいたくて、自分も一緒に聴いていたのだとか(笑)。実際、彼女の世界も独特で、しかも、フェイさんが宇宙ふたごと言っていたように、ふたりはどことなく近い世界で繋がっている。だからこその相性抜群の演奏なのだろう。
さて、テルミンの曲をじっくり堪能したところで、四人によるアンコール。この四人が集まると「チーム電波」となるらしい。最後はKOWさんの代表作のひとつである「蔦」。KIATのアルバムにも入っているし、先月のファーカンダでも演奏された。どこにも分類されることのない音楽としてのプログレ。自分ではそう勝手に思い込んでいるのだが、曲の長さを全く感じさせない超大作である。


左から、鵜飼恭子、フェイ・ターン、KOW、小俣慎一

あっというまに時間は過ぎたが、2時間30分以上はあったんじゃないかな? とにか、この長丁場を全く飽きさせることなく聴かせるのは、ただ曲がよいというだけじゃなくて、演奏力や、ユニットによる変化など、様々な要因があるが、そのうちのひとつが"ひょうたん"であったことは間違いない。素敵なライブだった。

アルバム、左:フェイ・ターン『地層』と、右:KOW『透明なドラゴン』

ファーカンダの夜。 ~ファーカンダ『夜のファーカンダ』レコ発ライブに行く~

8月20日、KOW(曽我部晃)と小俣慎一のユニット、ファーカンダのレコ発ライブへ出かけた。
ファーカンダは、メンバーである、おまたんこと、小俣慎一(アコーディオン)と、今回サポートを務めたバックのうち2人が、私と同じバンドのメンバーで(現在はオリジナル楽曲の製作に勤しんでいる…と言っておこう)、まあ、そういったバンドマン繋がりで知ることとなったのだが、KOWさん(アコースティックギター)は、メンバーとのつながりが強く、度々話題に上る人だったので、どうしても会ってみたかった。
場所は四谷のDoppoというライブハウスで、JR四谷駅から程ない場所にあるなかなか素敵なハコ。コロナが再び猛威を振るう中、客席がほぼ埋まるほどの盛況ぶりだ。今回はファーカンダの1stアルバムとなる『夜のファーカンダ』のレコ発ライブということで、アルバム全曲を演奏するとのこと。これ、言うのは簡単だが、アルバム1枚をほぼ完全に再現するというのは、なかなか難しい事なのだ。

ところで、この『夜のファーカンダ』とは一体どういう意味なんだろう?と、おまたんに訊いてみると、ファーカンダは沖縄の言葉で、孫と祖父母との関係の様に、世代を繋ぐという様な意味があるのだとか。更に、この「夜の」の意味は、そもそもファーカンダは育児をする母親とその赤ちゃんの為の音楽、というのがコンセプトのユニットだったらしいのだが、次第に彼等の如何わしい部分が大きくなり始め、本質を覆い尽くしてしまい「夜のファーカンダ」になった、という事らしいが、逆説的に考えれば、その如何わしさこそが彼等の本質であったという事か。

演奏が始まる。アコーディオンが異国情緒を醸し出すが、その異国がどこなのかがよく判らない無国籍性。しかも何か悪意の様なものも見え隠れするが、これが"夜の"という事か。サンバやボサノヴァの要素が見え隠れする曲もあるが、それは、例えば、ピエール・バルーフランシス・レイのサンバとシャンソンの実験的な融合を想起させたりもする。曲調は多岐にわたるが、子供の頃、どこかで聞いた事があるような不思議な旋律は、懐かしくもあり恐怖ですらある。

ファーカンダ。左から、小俣慎一、KOW。右はサポートのドラム、高橋克典

右、サポートのVo、新井圭子。

左、サポートのベース、天崎直人。

それにしても、サポートミュージシャン達の卓越した演奏能力には脱帽。同じバンドマンとして、忸怩たる思いが沸々と湧き上がるのを感じつつも、思いあがるなと自戒の念を強める。幾つになっても、練習と勉強しか道はないのだ。
話が逸れた。とにかく、今回のライブは大満足で、音楽的に何かを掴む切っ掛けとなったのかもしれない。演奏後、KOWさんや他のメンバーと話が出来たのも嬉しかった(無理矢理乾杯の場にまで参加してしまった)。
最後になったが、フロントアクトを務めた中込祐さん(+パンデイロの柳元武さん)達の演奏も、もの凄く良かった。ファーカンダに繋がるものを感じ取ってくれたら嬉しいみたいなことを言っていたが、なるほど、きっと、何かが、どこかの、とある次元で交錯しているのだろうと感じる歌と演奏。思いがけずアルバムをプレゼントされたが、これがまた大傑作! 独特な詩の世界に、洗練された音のチョイスには目を見張るものがある。機会があれば是非もう一度見てみたいものだ。

左、ファーカンダ『夜のファーカンダ』。右、中込祐『ノオト』

 

今年も咲いたよヒメスイレン、2022。

今年も見事に咲いてくれました!ヒメスイレン
まあ、実際に咲いたのは一週間前なんですけどね。ただ、開花の数週間前に雹が降って、まだ小さくて新しい葉に亀裂が入ってしまったのでちょっと心配だったが、なんとか大きく成長してくれた。今年は何輪の花を咲かせてくれるのか、今から楽しみだ。

 

Pearl COMPACT TRAVELER / パール コンパクトトラベラー (PCTK-1810BG) を叩いてみた! その2

さて、今回はいよいよ叩いてみる!

と、その前に、このコンパクトトラベラー、その見てくれから、音が小さそうで、家でも叩けそう…なんて想像している方も多いみたいですが、これをそのまま家で叩いたら大変なことになります(笑) 正直、普通のドラムセットと何の遜色もないくらいにデカい音が鳴ります。せっかくコンパクトなのにもったいない…誰もがそう思うでしょう。そこで、REMO社から発売されている、メッシュタイプのヘッド、「SILENT STRORKE」なるものを買ってみました。実はこれ、小規模会場のライブで使おうと思って購入したのですが、いかんせん、音が小さすぎて使えませんでした。ということは、恐らく、家での練習ならば最適だと思います。もちろん、力任せに叩いたり、オープンリムを多用する方には不向きですが、普通に叩く分には全く問題ないと思います。シンバルなんかも、サイレントタイプのものがありますので、併せて使えば完璧でしょう。

SILENT STRORKE。サウンドハウスにて、10"が980円、バスドラ用18"が1980円とお手頃価格だ。

では本題。上述のように、かなりの爆音が出るので、スタジオを使って実践してみる。以下、動画を参照して貰いたい。
まずは本体とハイハットカウベルの組み合わせ。ジャムタンバリンやシンバル等を追加してもいいが、転倒のリスクが大きくなるので、せいぜい2~3点にとどめておきたい。ハイハットは右側にセットしたが、両手を使った細かなフレーズを叩きたければ左側にセット…というか、正直どこでもいい。このアタッチメントは開閉は不可能だが、開き具合は任意の間隔をキープできるので、ハード系にも対応できる。
次に、スネアのスナッピーを切って、タム代わりに叩いてみる。今回はタオルでミュートした。かなりパーカッシヴな音が出るので、カウベルアゴゴベル等と組み合わせれば、ラテン系のパーカッション代わりにもなる。更に、手持ちのスネア(Ludwig Supraphonic LM402)を追加してみる。

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お次は、例の小径シンバル達を追加してみる。もうこうなると、コンパクトトラベラーなんてのは関係なくて、ただの偏執気質の変態ドラマーの動画って気がしないでもないが、出てくる音は至ってシンプル、一聴すると普通の音にしか聞こえません。この小径シンバルを使う意味というのは、まずコンパクトなので重ねてしまえば小さなバッグに収納でき、大した重量にもなりません。また、サスティンが極めて短いので、一瞬のうるささはあるものの、それが持続しないので、デカイ音という印象が残りません。そして、複数枚のシンバルを一気に並べるとかなりの威圧感があって、インパクト効果は抜群です。動画を見て貰えば判りますが、シンバル類の全重量が真下に向かっているのが判ります。これはバスドラのシェルが無い分、距離を詰めることが可能なため、この様なセッティングが可能となるのです。ただし、転倒、脱落の危険は多少なりとも伴うので、これらの変態的なセッティングは、あくまでも自己責任でお願いします。そして、これだけの量のシンバル、アタッチメント類をセットしてしまうと、それなりの撤収時間が必要となります。バンド練習で、せーの、で撤収しても、ドラムだけ全然片付かない、な~んて事はよくあります。ドラマーあるあるです。

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コンパクトトラベラーとはあまり関係の無い動画になってしまいました。編集はイマドキのYouTuberみたく、ルーズな間をカットするなどして極力短くしてみました。まあ、確かに飽きない動画になるけど、セッティングや撤収など、リアルタイムで必要となる時間の把握は困難になりますね。

この項、完。

Pearl COMPACT TRAVELER / パール コンパクトトラベラー (PCTK-1810BG) を叩いてみた! その1

初めて手に入れたドラムは、パールのChallenger MRKⅡという入門用のモデル。安かったせいか(といっても当時7万円台)、ドラム本体以外の耐久性が皆無で、シンバル類、ペダル、スローン等が次々と壊れて行き、結局少しずつ買い直して行くはめになった。今ではプレイテック辺りで、フルセットがサンキュッパで買えたりもするが、こんなもん、まともにプレイできるんだろうか?といつも思っちゃう。でも、案外良かったりするんだよね、あんなのが(笑)
さて、今回はパールのれっきとしたドラムセット(カタログ上もここに分類されている)、コンパクトトラベラー (PCTK-1810BG)のレビューである。購入したのは今年の2月頃なので、そろそろ4か月になる。購入に至った理由は、持ち運びが可能で、収納に困らないことが挙げられる。また、このコロナ禍の自粛期間中に集めた小径のシンバル類を上手く使いたいという目論見があって、シンプルかつ、必要最低限なセットが欲しかった。このコンパクトトラベラーはメーカーサイトや楽器屋でよく使われている写真だと、フルセットに見えるのだが、実際には、バスドラム、スネアの2点のみで、それらを繋ぐジョイントが一体化している(オプションとして、10”と14"のタムセットがあるのだが、今のところ必要ない)。実にシンプルで、本セットと、例えば、シンバルやカウベルのみの組み合わせなら、すぐに出張して、お店や河原(笑)でも演奏可能だし、重くはなるが、豪華シンバル7枚セットを組み合わせることも可能だ。ただ、なかなか購入に踏み切れなかったのは、実際の音だとか、持ち運びの利便性なんかは個人によって大分変って来るので、その辺りが不安であったというのが正直なところ。YouTubeなどもいろいろ参考にしてようやく購入に至った次第。

キャリングバッグ付きだが、本体重量が約10キロあり、ショルダーベルトで運搬するのは可能ではあるが、かなりキツイ。

脚部と、せり出し防止のロッドは、このように折り畳みが可能で、文字通りコンパクトに収まる。押し入れの端っこだったり、冷蔵庫の横の隙間だったりに見事に収まる!

では本題。このドラムセット、前述の通りバスドラムとスネアだけの組み合わせである。従って、最低限必要となるのはキックペダルだけという事になるが、現実的には、スローンと鳴り物も必要だろう。まあ、シンバルとカウベルがあれば何とかなると思うが、ハイハットの場合、アタッチメントを使ってセッティングすればスタンドは不要だ(といってもハットの開き具合は固定されてしまうが)。
本体のセッティングだが、バスドラ下部にペダルを固定するプレートとそれを支える折り畳み式の脚、更に演奏中の前方への移動を防止するためのロッドでセット全体を支えるのだが、床によってはせり出してしまうので、個人的に粘着式のカーペットを下に敷いて演奏するのがベストだろう。スネアとバスドラはクランク型のジョイントで固定されるが、スネアの固定部分はぐるりに取付穴が開いているので、ロッドを垂直にしても水平にしても取り付け可能だ。垂直の場合はカウベル等の鳴り物を容易に取り付けることが出来る。

COMPACT TRAVELER (PCTK-1810BG) のフルセット。ロッドを水平方向にセッティングした状態。写真では大きく見えるがスネアは10”とかなり小さめ。

こちらは垂直にセッティングした場合で、カウベル等がそのまま取り付け可能となる。

次に肝心の音の方だが、とりあえず付属のヘッドだと、安っぽい音しか期待できないので、ここは潔く交換してしまった方が良いだろう。自分の場合、手持ちのスネア(Ludwig Supraphonic LM402)に使用しているものと同じ、REMOのエンペラー(US仕様)に換装した。バスドラは想像している様なタイトな音ではなく、ボン突き感が酷いので、やはりそれなりのミュートは必要だ。因みに、付属のバスドラのヘッドはミュートリング付きの構造だがあまり効果はない。打面側には大きなPearlのロゴが入っているが、お客さん側からは全く見えないのであまり意味がない。
お次はスネアだが、まず10"とかなり小径なので、きちんと鳴るようにチューニングすると、かなり甲高い音になってしまうのだが、そもそもスナッピーが約10センチ20線、片側支持のネジによる圧着式なので、調整の幅があまりなく、ちょっとでも締めすぎると全く鳴らなくなってしまうので注意が必要だ。条件が合うのであれば、本物のスネアを追加して、こちらをタム代わりに使うというのもいいだろう。

ご覧の通りの簡単な構造。基本的にバラっとした様な音で、調整はなかなか難しい。

この項続く。

完全生産限定盤BOX仕様『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 VOX』(NIAGARA TRIANGLE Vol.2 40th Anniversary Edition)を聴く!(その2)

散々苦言を呈したところで、次はいよいよその音質である。
前回も書いた通り、『NIAGARA TRIANGLE Vol.2 VOX』本編は、Blu-ray Disc(Blu-ray Audio)に収録されたこのハイレゾ音源のみのである。従って、今回の新しいマスタリングは、通常盤を入手しない限りは、30周年記念盤との比較は出来ない、のである。で、結局通常盤を買わされる羽目になったわけだ…(笑)
というわけで、まずは通常盤の説明から。

Disc-1が本編。
Disc-2が
1.「スピーチ・バルーン 1982」
2. ニッポン放送「スピーチ・バルーン 2012」
3.「A面で恋をして」 [1981/12/3 Headphone Concert]

となっており、Disc-2の1.2.は大滝自身が語る解説音源と、ラジオ音源なので、今回はオミットさせていただく。因みに3.のみVOXとのダブり。


では本題。実は、NTV2のマスターはロンバケと違って、オリジナルマスターが1本しか存在しない。もちろん、セイフティーコピーなんかは存在するのだろうが、とりあえず、オリジナルアルバムから40周年記念盤まで全て同一のものを使用している。また、マスタリングを手掛けたのが、ロンバケ40周年記念盤と同じ内藤哲也氏であることから、同じような音の傾向を目指したのであろうことは容易に推測できる。まずはトップを飾る「A面で恋をして」。自分の場合、CDは「選書」から入ったクチだが、この曲、実は89年リマスター盤ではカットされるという憂き目に遭っている。一聴して、30周年より、滑らかさが際立つのが判る。この曲のキモは何といっても多彩なSEに尽きるが、ロンバケでは上手く収まっていたSEの類が、NTV2ではそこだけ浮いてしまっている感が強かった。ちょっと、やり過ぎと言うか、デジタルすぎたというか、だが、今回は、鮮度があるのに完全に溶け込んでいるという感じ。佐野サイドに入ると、冒頭の語り(大滝曰くハナモゲラ語)は相変わらずだが、リズムが鳴った瞬間の今までと違う感じに驚く。実はこのアルバム、三人が全く別のプロジェクトで録音していたため、それぞれの音の違いが顕著であるのだが、今までのどの盤よりもすんなりと入り込んできた。というか、その辺りの摺り合わせ具合が絶妙。杉サイドでも全く同じ。もちろん、各々の違いは厳然として存在しているのだが、違和感の様なものが取り払われた感じが強い。特に杉サイドでは、昔から、ちょっとはっちゃけた感があって、その辺りが他のサイドとズレていた気がしていたが、今回は、もちろん多少のヒステリック感は相変わらずだが、それ程の違和感を感じないのは、40年の歳月により、耳の機能が加齢で低下したからというだけではあるまい(笑)。

さて、お次は、今度こそVOX本編の内容を聴いてみよう! というわけで、Blu-ray Disc(Blu-ray Audio)に収録されたハイレゾ音源である。一聴して判るのは、やはり空気感の様なものが感じ取れるという事。CDでのこじんまりとした印象から、余裕のある広がりを感じる。「A面で恋をして」では、あたかもサラウンドかと錯覚するような、音の奥行と広がり感に圧倒される。バックで終始鳴り続けているスレイベルも、CDでは何かうるさい高周波みたいな金属音でしかなかったが、ちゃんと鈴の音してる事にまずは驚かされた。佐野サイドは、通常盤で書いた通りだが、音の摺り合わせ具合が完璧だと判る。「Bye Bye C-Boy」はコーラスがより際立って、大滝の言っていたリヴァプール・イディオムの意味を完全に理解する瞬間でもある。杉サイド「Nobody」。やや団子状に鳴る音が、あの辺りのビートルズの音である事に気付かされる。「夢見る渚」は夏気分満載のシンセに思わず80年代初頭に引き戻されるが、中音域がやや膨らみ過ぎて、大げさに鳴り過ぎる感がある。「オリーブの午后」では、ロンバケの世界再びみたいな世界が広がる。「A面で」と同じく、終始鳴り続けているスレイベルやジングルの類がノイジーにならないのが驚きで、更にベースラインの細かなディテールがはっきりと聴こえ、実はこの曲のキモとなっているのがよく判る。大滝のアルバムには曲ごとにミュージシャンのクレジットが記されていないので、これが、長岡道夫か後藤次利かは判別できないが、ベースラインや音の細さから次利の可能性が高いと思うが、スラップ(当時はチョッパーと言っていたが)はほぼ入っていない。変わって「白い港」。これは誰が聞いても次利のそれと判る。ただ、こんなに表に出ていたかなあ?と思うほどベースが効いている。もっと雄大なゆったりとした曲の流れだと思っていたが、小気味よいベースが今までの印象を覆す。最後「♡じかけのオレンジ」。CDと比較すると、シンセベースが僅かに前面に出ているが、これは長岡道夫のベースをプロフェット5でなぞって打ち込んだらしい。ブラスも結構ラウドに鳴っているがわかる。
ところで、ロンバケはVOX発売後、SACDがパッケージ化されたが、NTV2はどうだろうか? (その1)でも書いた通り、この40周年記念盤が結構ギリギリのところで成立している様な気がしてならないので、発売してくれたらありがたい、くらいのところかな。ロンバケの様に、シングルレイヤーのみでの発売はキツイかな?とも思う。
(この項、完)