『花に染む』第1巻  くらもちふさこ

くらもちふさこの新作『花に染む』の第1巻が発売になった。コミック雑誌は定期的に購読していないので、お気に入りの漫画家に関しては、コミックの発売を持って、初めてその情報を知る事になる場合が多いのだが、今回の作品は正直面食らった。何故かと言うと、この『花に染む』は『駅から5分』の続編、いや、正確にはその逆、時間軸的には『駅から5分』のプロローグ的な存在に当たるものだが、『駅から』は完結のアナウンスがされていなかったので、次はてっきり『駅から5分』第4巻が発売されると思っていたからだ。これは、作者が『駅から』を描いている時にそういった構想が持ち上がったのか、それとも、そもそもこの様な展開が想定されていたのかは窺い知る事は出来ない。ただ、個人的にはこの展開は非常に喜ばしいものであった。
『駅から5分』は“花染町”の“花染駅”から5分以内の場所に住む、或いはそこを訪れた人たちの織り成す一話完結のストーリーだが、それぞれの作品が時間と空間を共有するため、各ストーリーの中で、別作品の人物達が必ずリンクする様に構成されている。従って、あるストーリーでは何の意味も持たない様に見えたひとコマが、あるストーリーの中ではとても重要な一場面であったりする。それが、話を読み進めていくうちに、段々と解き明かされていくのだ。この様にパラレルに進んだ個別のストーリーは、やがてひとつになり、大きなエンディングを迎える…と、勝手に想像していたw ところが、この予測をあっさりと(良い意味で)裏切り、全くの独立したストーリとして、この『花に染む』という作品が登場したのである。
この作品は、個人的には非常に期待できる内容で、例えば、今回の主人公“花乃(かの)”にしても、これは作者自身がが非常に気に入りそうなキャラクターであると思えるのだ。それは、例えば『いつもポケットにショパン』の“麻子(あさこ)”の様な印象を受けるのである。正義感が強く、芯が通っているが、我が強く、意見を曲げない、そういった性格が見て取れるのだ(個人的には『東京のカサノバ』の“多美子”や『おしゃべり階段』の“加南”みたいな依存心の強い妹キャラが好きなんですけどねw)。
さて、この『花に染む』、今後どのような展開を見せるのか非常に楽しみで、思わず「コーラス」を買っちゃいたい衝動に駆られてしまう今日この頃である。


『駅から5分』第1〜3巻と、新作の『花に染む』第1巻。是非とも、合わせて読むことをお勧めする。