キャンディーズのCD

今月号の『レコード・コレクターズ』(2011年07月)はキャンディーズの特集だ。もちろんこれは、メンバーのスーちゃんこと田中好子の逝去を受けてのそれであるが、実のところ、この雑誌がこの様な形で特集を組むのは、最近では稀な事である。ご存知の通り、CD業界も出版業界も近年不振続きで、CDのリイシュー盤(復刻盤)発売に合わせて、各誌が連動するといった形式で特集が組まれることが当たり前になっているからだ(この傾向は、この雑誌本来の趣旨である、オリジナルのレコード蒐集の為のガイド、という点からは微妙に外れてきている感があるのは否めない)。しかし、キャンディーズのオリジナルアルバムのCD盤は現在では販売されていないし、彼女の逝去により、具体的な企画が浮上している等の話はまだ聞こえてこない。だから今回のこの特集は、そういった意味でも快挙なのだ。
キャンディーズが活躍していた時期、自分にとって彼女達は十分お姉さんだったので、その時点ではまだアイドル音楽の重要性についての認識は全く無く、従って、オリジナルアルバムは1枚も所有していない…というか、そもそも、日常的にアルバムを買えるほどの経済的環境に達していなかったというのが実情で、ましてや、ライブを観に行く、などという発想はその小さい脳味噌の片隅にも湧いてこなかった。随分と大人になった自分が、ようやく手に入れたのは、解散20周年に企画された編集盤『CANDIES HISTORY』(98年)という6枚組。全123曲で、全シングルと代表曲が網羅され、更に、未発表のライブ音源、ボツバージョン等も収録されている。現在は廃盤で、後年、全てのオリジナル及びライブアルバムをパッケージした『CANDIES PREMIUM-ALL SONGS CD BOX』が発売(04年)、また、これを補足するかたちで『キャンディーズ・タイムカプセル』が発売(08年)されたが、現在は供に廃盤である。オリジナルアルバムが単品リイシューされない理由はいくつか考えられるが、まず、アルバムの作りが(特に初期に於いて)やっつけ的なものが多い。例えば、1stアルバムに収録された曲を作り直し、2ndで改題して再収録したり、同じシングル曲が重複収録されたりと明確なコンセプトが打ち出されていない。また、予算の関係からか、同じCBS/SONY所属アイドルのヒット曲をカバーしたり、洋楽のカバー曲が異常に多いのもリイシューを阻む原因かもしれない。しかし、洋楽のカバーは彼女達のライブでは重要なパートを占め、かなり黒いキャンディーズを聴く事も出来る。これらが、後年の彼女達の音楽的な成長へと直結している事は間違いない。因みに解散コンサートでの第一幕目は全曲洋楽カバーによる構成であった。話を戻すと、要するに、オリジナルアルバムとしての完成度が低く(特に初期)、また、オリジナル曲が少ないため、特に単品販売では、確実なセールスへと結びつく要素が足りないというのが正直なところだと思う。
この様に、オリジナルアルバムのリイシューは困難を極めると思われるが、図らずもメンバーの死という悲しい出来事によってその機運が盛り上がってきた様だ。不本意ながら、この機会を逃すことなくそれが現実のものとなることを切に願う次第である。


今月号の『レココレ』と『CANDIES HISTORY』。曲は時系列に収録されており、彼女達の凄まじい成長ぶりが感じ取れる。後半、コーラスはより強固なものとなり、メインボーカルを受け持つランちゃんこと伊藤蘭のボーカルは、完成の域に達する(特にビブラートが素晴らしい!)。
現在、オリジナルアルバムが入手困難な為、この様な編集盤でもネットオークションや中古市場では、かなりの高額で取引される。