ビーチ・ボーイズの『SMiLE』どーする?

40数年間封印されていたビーチ・ボーイズの『SMiLE』が遂に発売になった。が、買ってはいない。

その前に、今回はビートルズの話から。
『LET IT BE』(1970)というアルバムがある。言わずと知れたビートルズの傑作アルバムだが、記憶では映画『レット・イット・ビー』の"オリジナル・サウンドトラック"として扱われていた様な気がする。しかし、実際にはサントラではなく、サントラ風とでも言うべきか…つまり、映画で使われた音源もあるが、映画のそれとは大きく異なるものである。
ビートルズはアルバム『THE BEATLES』(通称:ホワイトアルバム。1968)のセッション以降、メンバー間の不和が決定的なものとなり、バンド自体の存続を危惧したポールは、その原因が多重録音の様な個人を主体とした曲作りにあると考え、次期セッションの為にある提案をする。主な取り決めとしては、メンバーのみの演奏で、多重録音は一切せず、また演奏ミス等の差し替えもしない、というもの。簡単に言えば、ほぼ一発録りである。これが、かの悪名高き"Get Back Sesson"(1969)である。Get Backとは、デビュー当時の自分達に立ち返れといった意味だ。しかし、この目論見は見事に外れ、正式な録音が始まる前に、ジョージは現場から出奔してしまう。結局は周囲の説得に応じたジョージだが、古くからの付き合いであったビリー・プレストンを参加させる。この時点で、約束事のひとつは反故にされたわけだ。ジョンは既にビートルズには興味を示さず、結局は口うるさく自身の音楽論を展開するポールが、ひとり空回りという状態に陥り、セッションは頓挫してしまう。この時録音された膨大な量のテープはフィル・スペクターへと託されたわけだが、彼はメンバーが言うところの"ゴミくず同然"のテープを完璧なまでに編纂…あるものは切り刻まれ、あるものは繋がれ、あるものは壮大なオーケストラとコーラスを被せられ、ポールの思い描いた一発録りとは程遠い、それでも彼らの魅力を余す事なく後世に伝える大傑作アルバム『LET IT BE』として世に送り出されたのである。
それから年月はぐ〜〜〜〜んと流れ、2003年。発売当初からフィル・スペクターの『LET IT BE』に不満を漏らしていたポールの意向が働いたかどうかは判らないが、『Let It Be... Naked』なるアルバムが発売となる。Get Back Sessionの取り決め通りに、当時の音をそのまま再現したという触れ込みである。が、しかし、である。このアルバム、音源そのものは当時のもの以外使っていないのだが、曲そのものは継ぎ接ぎ(ツギハギ)だらけなのだ! 細かなミスは修正され、2曲の良い部分を繋げて1曲にする等、デジタル技術を大いに駆使して、でっち上げの「ネイキッド」を作り上げてしまったのだ。なるほど、これがポールの意図したアルバム像だったのかもしれない。しかし、継ぎ接ぎの時点で、ポール自身の提案した約束は、結局ここでもまた反故にされたわけだ。当時、もし出ていれば、という"たられば"の世界などに興味は無いし、アルバム『Get Back』が出なかった、という事実は本作品をもっても覆すことは出来ない。このアルバムが、例えば、『架空のレットイットビー』の様なタイトルであれば、自分の中でのわだかまりは少なかったと思う。しかし、(リンゴが口にしたと言われる)『裸のレットイットビー』ではどうしても承服できないのである。
…終わり。じゃねーw さて本題。と思ったが、えらく長くなったので、この項、続く。

レット・イット・ビー

レット・イット・ビー

レット・イット・ビー・ネイキッド

レット・イット・ビー・ネイキッド