お正月に何を聴く? 2012 後編

前回より続き。

"デトロイト"という言葉から想起する音楽は世代によって大きく異なる。80年代後半〜90年代前半頃に音楽に接した世代であれば、それは恐らく"デトロイト・テクノ"という事になるだろう。個人的に、デトロイ・トテクノですぐに思い浮かぶのはUR(Underground Resistance)なんだが、リリースされたレコードやCDの名義が多岐に亘る為、立役者の一人、ジェフ・ミルズ脱退後も含めて、その活動自体が体系的によく理解出来ない。そんな中で、今回チョイスした『X-101』もそのうちの1枚で、トレゾア(Tresor)からの発売でレーベルはBMI(Black Market International)だが、プロデュースがUR+THE VISIONで、アーティスト名義及びタイトルがX-101となっている(次のCDではX-102)。トレゾア以外でも名義が一定しておらず、カタログは混沌としていた。


この当時、テクノ関連で購入したアルバムと言えば、このURやT-99、L.A.STYLE、2UNLIMITED、といったところか。白状してしまえば、この時期のテクノ事情がイマイチ飲み込めていない。例えば、ハードコア(デス・テクノ)といったジャンルに対し、背景的にデトロイト・テクノがどの様な影響を及ぼしたのかもよく判らない。実はこの頃、個人的には洋楽に対して、徐々に興味が薄れて行った時期であった。例えば、欧米のテクノがクラブシーンの外で成り立ち難いのは、実は、音楽としての側が提示されているだけだからという気がしたのだ。だからこそ、聴く側の精神的な部分の多くを委ねる装置=クラブ環境がどうしても必要だったのではないか? もうちょっと突っ込めば、例えば、テクノ・ポップ以降のテクノがオランダ発信だったりするのは、とある環境が容易に作り出せる国であったからなのでは?とも思ったのだ。先にトランスありきで音楽が存在する様な関係性が好きになれなかったのかもしれない。もちろん、テクノそのものを否定するというわけではなく、当時はそういった雰囲気に襲われていたのだ。
というわけで、(合法的ガソリンを補給しつつ)今度はこの時期の国内に目を向けてみた。"凍結"宣言により活動を休止していたP-MODELが91年に"解凍"。アルバム『P-MODEL』で復活。翌92年には、更にテクノ度をアップした『Big Body』を発表。凍結以前の平沢進は、自分達の音楽を"テクノ"または"テクノ・ポップ"とは呼んでいなかった、というか、忌み嫌っていた様な記憶がある。だから解凍の理由として、またテクノをやりたくなったといった旨の発言をしたのには正直驚いた。また、『Big Body』というアルバムタイトルを聞いた時も非常に驚いた。というのも、このタイトルから想起したのが「ソウル」や「ファンク」であったからだ。テクノから遠く離れた、何かもっと肉体的な、汗臭い音楽を想像してしまったからだ(実は、自分と全く同じ感想を抱いたファンが沢山いたという事を後年になって知った)。この"Big Body"とは、統合された人格の様なもので、アルバムの曲では"ホモゲシュタルト"(Homo Gestalt)という事になるのだろう。ただ、実際のステージでは肉体的で汗臭いw というわけで、元日最後に選んだのは、この『Big Body』という事になった。


NHKPop Jam!より"Big Foot" メジャーより発売された為、積極的にTV出演などもこなしていた


ひとつ前のアルバム『P-MODEL』より、"Wier Self"で締めくくる事としよう。テクノは手法じゃなく、心根なのだよw



P-MODEL』と『Big Body』。下はDIW/SYUN(disk Union)から発売されたライブ盤『PAUSE』。


'04年に発売されたの2in1のリイシュー盤。ルビジウム・クロックを使用してリマスタリングされた。隠しトラックを再現する為に、アルバムの収録順が逆転している。


最後に一言。アイラ・モルトはテクノには合わないw