核P-MODEL 『гипноза』

ビートルズに洗礼を受けて以来、基本的にどんなジャンルの音楽でも、新旧問わず貪欲に吸収してしまうタイプなのだが、現在活動しているバンドが、音楽的に1960年代前後のいわゆるモッズ・サウンドを標榜しており、更には何本かのライブを控えていたため、ここのところ、当時の音楽を聴きまくっていた。もちろん、気になる新譜(リイシュー盤ではない)も何枚かはあって、そこはじっと我慢していたのだが、ここに来て丁度ライブとライブの期間が開いたので、今のうちに新しいものをたっぷりと吸収しておこう。
さて、そんな中からの1枚が、核P-MODELの新作『гипноза』(Gipnoza ギプノーザ(2013.11.06発売))である。新作と言っても、前作『ビストロン』より9年もの歳月が流れている。P-MODELと核P-MODELの違いはなんぞ?と訊かれても、実際のところ上手く説明できないが、とりあえず、平沢進名義のソロ作品よりも、テクノ度が高いのだけは確かだ。例によってこのアルバムには物語的なバックグラウンド(アシュオン)が有るのだが、今回はそれを語ることはしない。因みに"ギプノーザ"とはロシア語で"催眠"という意味らしい。
さて、この新作、音的にはというと、これは前作を完全に踏襲したもので、チープなテクノっぽさが前面に押し出されている。要するに、安っぽい機材で構築された様な音であるが、だからといって、音がスカスカという意味ではない。バンド名に無理やり意味付けをするのであれば、テクノのコア(核)な部分が剥き出しになった様なサウンドで、テクノ度は前作同様、かなりのものだ。初期P-MODELに於いて、このチープな音の最重要ファクターであったのはキーボードであるが、今回、その奏者であった田中靖美が、ゲストプレイヤーとして参加している! 実質的に音楽活動から遠ざかっていた為、今回の共演は実に30年ぶりとなる。彼が参加している曲は02.「それ行け!Halycon」1曲のみだが、彼のこのKeyソロは、アルバムの白眉と言ってもいい。この音色とプレイを聴いて血を滾らせる古参のファンも多い事だろう。よって、この曲が収録されているという事実を持って、このアルバムに最大級の評価を与えても良い。


ライナーには太陽系亜種音гипноза編「盗まれたアシュオン」の物語が掲載されている。


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гипноза Gipnoza

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