ウイスキーに合うアルバム No.04 - ルー・リード 『トランスフォーマー』(1972)

前回は『ヴェルヴェット・アンダーグラウンド III』を紹介したが、となれば、流れとして、ルー・リードを取り上げないわけには行かないだろう。この『トランスフォーマー』"Transformer"(1972)は、言うまでもなくルーの代表作だが、このアルバムがヒットチャートを賑わすほどの存在となったのは、やはりプロデューサーのデヴィッド・ボウイとミック・ロンソンの力に拠るところが大きい。デヴィッド・ボウイの持つ圧倒的な知名度が功を奏したのは勿論だが、それまでのルーには無かった、洗練されたアレンジが、ポップス寄りで判り易かったのだ。だからといって、曲自体の持つ鋭さが丸くなるような事はなく、むしろ、心に深く突き刺さったまま抜ける事が無い。とにかく、名曲揃いである。そして、どれもがウイスキーに合う。1曲目の「Vicious」 でSMチックな背徳の世界へと、一気に持っていかれる。それと打って変わって、あまりにも平穏すぎるのが「Perfect Day」だ。公園でサングリアを飲み、動物園で餌をやる。その後、映画館へ行って、家へ帰る。そんな一日を君と過ごせたことが嬉しい。なんて完璧な一日なんだろう…。唯の日常を描いた、そんな歌に涙が止まらない。VU時代からルーが得意としてきた、第三者の物語を歌う手法は、「ワイルドサイドを歩け」("Walk On The Wild Side")で完成の域に達したと言ってもいいだろう。黒人女性のコーラスに心は揺れ、酔いも回るよ、"the coloured girls go, doo dodoo..."。そして、宇宙的な俯瞰から歌い上げる「Satellite of Love」。例えばそれは、人工衛星はやぶさ」が帰還した時に、誰もが感じ取ったであろう、彼(彼女)が、壮大なる宇宙から見つめ続けた人類に対する愛と似た感じではないだろうか?


パバロッティと競演した時の「Perfect Day」。冒頭、2人の並ぶ絵図を見た時に、思わず、ちょっと待て!と叫んでしまったw


「Satellite of Love」。シングル盤の邦題はそのまんま「愛の人工衛星」だった。


ありふれた日常から広大な宇宙までをひとっ飛び。そして、今夜も、傾けたグラスに、いくつもの想いを重ねるのだろう。


いろいろと、アレな裏ジャケットw

実は、ルーの曲には、「The Last Shot」や「Underneath The Bottle」といった、ウイスキーそのものが登場する曲がいくつか存在する。まあ、彼のアルバムならば、どれを取ってもウイスキーには似合う。たとえそれが『メタル・マシーン・ミュージック』"Metal Machine Music"(1975)であってもだ!

TRANSFORMER-UPGRADED VERS

TRANSFORMER-UPGRADED VERS