"Drum Crazy"Bonzo!!

今月号の『レコード・コレクターズ』(2012年6月号)の特集は、先月の「20世紀のベスト・ギタリスト100」に続いて、「ベスト・ベーシスト/ドラマー100」だ。ギタリスト編では1位がジミ・ヘンドリックスと、誰もが期待し、予想していた通りの結果となった。そして、今回のベーシスト、1位はポール・マッカートニー、ドラマーがジョン・ボーナムであった。ベーシストについては、今回ここでは割愛させていただき、ドラマーのボンゾことジョン・ボーナムについてのみ書かせていただきたい。今回の1位という結果については、当然という思いもあるが、それ以上に、自分がガキの頃から敬愛してきたドラマーなので、やはり、誇らしいといった思いが強い。死後数十年経ってもなお愛され続けているのは、テクニックやアイデアだけでないだろう。ただ、実際のひととなりを、一般の多くの人々は知る由もない。レコードの音源だったり、映像であったり、写真であったり、インタビューであったり、たったそれだけの情報で、彼を何十年も好きでいるのだ。逆に言えば、たったそれだけの事が、世界中の人々を共感に導き、あるいは驚愕させたのである。ジョン・レノンはああいった死に方をしてしまったので、以後、その扱いが、殉教者の様になってしまったが、個人的には違和感を覚える。ボンゾの死因はジミと同じく、酔っ払って吐瀉物を喉に詰まらせた事による窒息死であるが、こういった、どうにもバカらしい死に方が、いかにもロックンローラーだと思う。そりゃ、根っから悪い奴なんてそうそういるもんじゃないから、死んじまえばいい人になちゃうけど、やはりバカな死に方をしたなあと、言われ続ける存在であって欲しいのだ。
さて、ボンゾのプレイについては、特に近年になって研究される様になってきたが、最も有名なものと言えば、「グッド・タイムス・バッド・タイムス」(Led Zeppelin"Good Times Bad Times"1969)での例の頭抜き3連バスドラムだろう。他にも、多用される3連、6連の例のフィルも見逃せない。世界一有名なドラムのサンプリングはザ・ウィンストンズの「アーメン、ブラザー」(The Winstons"Amen, Brother")(通称:アーメン・ブレイク)だが、それに次いで有名なのが「レヴィー・ブレイクス」(Led Zeppelin VI"When the levee breaks"1971)だろう。個人的には、ポップとヘヴィーが同居した「オーシャン」(Houses of the Holy"The Ocean"1973)や「夜間飛行」(Physical Graffiti"Night Flight"1975) がお気に入りだ。
それにしても、ボンゾのプレイには歌心がある。まあ、リンゴ・スターキース・ムーンもそうなんだが、こういった歌心やグルーヴ感が今の世代へ受け継がれているのかといえば、甚だ疑問である。ライブといえども、ガイドを付けて演奏する様な今の世の中じゃあ、こんなドラマーが育つ事は皆無なんじゃないか?と心配してしまう。偉大なる"ドラム・クレイジー"ボンゾ様も、草葉の陰でさぞお嘆きの事だろう!


リットー・ミュージック刊 『真像 ジョン・ボーナム』。本体価格2,300円。伝記以外のドラマー単体の単行本は、極めて珍しい。ドラムセットの詳細やセッティングの変遷等、資料的な価値も高い。

ボンゾが実際に使用していたセット(実機)を解説。

こちらはパイステ社と交わされた契約書と発注リスト。ライド・シンバルは24inだ!
右はドラムとシンバルのセッティングの変遷。

http://www.youtube.com/watch?v=QM5NkLnVzVY
個人的な、ボンゾのベスト・プレイは79年ネブワースで演奏された「ロックン・ロール」(Rock And Roll)だ。
最後、ソロでのスネア、タム、バスタム、バスドラの絶妙なコンビネーションプレイは、ボンゾの真骨頂! まさに鬼太鼓!
左手のスネア、タムの上下の往復運動は簡単そうだが、初心者には意外と難しいプレイだ。

※例によってプレイヤーを埋め込めませんでした。こちらはニコ動。

レコード・コレクターズ 2012年 06月号

レコード・コレクターズ 2012年 06月号