オリジナル盤でよこしやがれ! その4(パート2)

LP盤時代に(主にライブ盤で)収録時間の関係からA面とB面を跨ぐ形で収録されていた曲は、CD化の際にそれを繋げて収録するのが正しいといった意見を、その3(こちら)で述べたが、前回紹介したEL&Pの『展覧会の絵』は組曲なので、厳密に言えば、A面とB面は繋がっている。LP盤をよく聴くと判るが、A面の最後でのフェードアウト部分と、B面の最初のフェードイン部分は、ほんの数秒間だが重複している部分があるのだ。だから、これをCD化する場合、この重複部分をカットしてFO、FI無しで繋げる、というのが一番正しいと考える。前回述べた通り、1stリイシュー盤は完全にやっつけなので、こういった作業は行われておらず、従って、重複部分はそのまま残されており、曲は繋がってはいない。一方、紙ジャケ盤の方は、曲が切れ目無く繋がってはいるがFO、FIしており、インターバルは無し、といった処理の方法である。もちろん、このFO、FIの再現は異論があって、個人的に再現しなくともよかったと考える。たが、繋がった、という事実は非常に大きな意味を持つ。なにしろ、現実の時間の流れを始めて体験できたのだから。
さて、EL&Pネタばかりで申し訳ないのだが、前回紹介した「悪の経典#9」(Karn Evil #9)という曲。このオリジナルは『恐怖の頭脳改革』("Brain Salad Surgery"1973)というアルバムに収録されているのだが、これは3つの曲からなる組曲でLPではA面最後に「第一印象(パート1)」B面頭から「第一印象(パート2)」「第二印象」「第三印象」の順に収録されている。さて、ここの問題なのは、最初の「第一印象(パート1)」「第一印象(パート2)」の扱いについてである。これは組曲であるから、全てを通して1曲と考える、というのは正しいし、収録時間の関係上、パート1とパート2に分かれてしまったのだから、これを繋げて収録する、というのも解る。しかし、この曲はちょいとばかり特殊なんだな。最初に結論を言ってしまえば、このパート1と2は分けるべきである。その理由はこうだ。まず、この曲の収録位置がなぜこうなったのかを考えてみる。つまり、この3曲(正確には4曲)は組曲だから続けて収録したいという意思があったはずだ。もし、そうでなければ「第一印象」をぶった切る必要は無く、例えば、A面の頭に「第一印象」を丸ごと入れて、その後と、B面の頭に、その他の小作品を入れれば良いからだ。でも、そうしなかった。この組曲は、続けて収録したかったからだ。さて、そこで考える。ぶった切られてしまった曲に、何らかの意味を与えようと。そこで考えたのがパート2の冒頭の歌詞だ。「"Welcome Back My Friends To The Show That Never Ends"」つまり、B面に戻ってきてくれた事に敬意を表し、しかも、この曲はまだ終わっていない、という意味の歌詞を与えたのである。要するに、LP盤ならではの、歌詞による仕掛けを施したというわけだ。だから、この曲は、インターバルが在って(盤面をひっくり返して)初めて意味を持つのだ。従って、この曲は、繋げるべきではない!のである。
さて、この曲は実際にはどう扱われているのだろう? 手持ちの紙ジャケ仕様のリイシュー盤(1999年)ではこうだ。

1.「悪の経典#9」を1曲と見做し、トラック番号はこれに対して付加されているだけである(TRACK-5)。
2.「第一印象」「第二印象」「第三印象」にはIN:DEX番号が付加されており、インデックス・サーチにより頭出しが可能である。
3.「第一印象(パート1)」「第一印象(パート2)」はFO、FIでインターバルがあり、繋がってはいないが、ひとくくりの扱いである。このため、パート2部分を頭出しする事は不可能である。


以上の様な扱いであるが、実は、所有していたもう1枚のリイシュー盤(似非紙ジャケ仕様で、中央のメデューサの顔部分に切れ込みがなく、観音開きにならない)…実は現在行方不明で検証のしようが無いのだが、この盤では、パート1と2が切れ目無く完全に繋がっていたという記憶がある。まあ、それはそれで新鮮な感じがして良かったのだが、以上の様な理由から、この仕様には賛同できなかった。現在の最新リイシュー盤ではどの様な扱いになっているのかは不明だが、個人的には、4曲全てに(つまり、パート1と2にも)トラック番号を付けるのが正しいと考える。まあ、異論はあるとは思いますが…。
この項、続く。


オリジナルLP盤との比較。
イラストはH・R・ギーガー。"Brain Salad Surgery"のタイトルは暗にフェラチオを表現したもの。当然、ジャケットのデザインもそういった意味を持つ。



カリフォルニア・ジャムにおけるパフォーマンス。「悪の経典#9 第一印象」のパート2に相当する部分。カール・パーマーのドラムソロがフューチャーされている。Eギターでソロを弾くグレッグ・レイクも貴重だ。

恐怖の頭脳改革 デラックス・エディション

恐怖の頭脳改革 デラックス・エディション

このデラックス・エディションでは各曲ごとにトラック番号が付けられている模様