とりあえず読む、ただひたすらに!

ここのところ色々と忙しく、読まれぬままの書籍がかなり溜まってしまい、徐々に寝床を侵略し始めたのだが、ここに来てようやく一息入れることが出来たので、現在猛烈な勢いでこれらの本を読み進めている次第。さて、今回はそんな大量の書籍の中から、文庫本の一部を紹介したい。

まずは、このブログでも何回か記事として取り上げている、北方謙三の『史記(武帝紀)』であるが、最新刊は第6巻で、現在第5巻を読み進めているところである。
再び匈奴の侵攻を許した漢。帝(劉徹)は20万もの大軍を遠征させるも大敗を喫する。僅かな歩兵部隊のみを率いて敵陣深く攻め込んだ李陵は戦いに敗れ捕虜となる。劉徹から戦いについての意見を求められた司馬遷は、李陵こそが唯一正しい戦いをしたのだと訴えるも、劉徹の怒りを買い、腐刑に処される。…とまあ、話は物語の佳境に突入している。この後、司馬遷史記の執筆に人生の全てを捧げて行くわけだが、さすがに北方版だけあって、この巻では様々な漢(おとこ)の生き様が展開されて行く。李陵だけでなく、同じく匈奴の俘虜となった蘇武は極寒の地に放逐されるのだが、自然の厳しさと大地の恵みの中で新たな生き方を模索し始める…といった具合。途中、傷ついた狼を助け、そいつを相棒にする件は、犬好きにとっては堪らない展開だ。
恐らくこの「武帝紀」は7巻で完結すると思われるが、とりあえずあと2巻読めるだけでもありがたい! 



さてお次は、4月よりNHKドラマで『銀二貫』が放送される、今や超売れっ子作家となった高田郁の話題作、『ふるさと銀河線』である。今回は初となる現代を舞台とした短編小説なのだが、タイトルからも判る様に、それぞれが必ず電車を絡めた物語となっている。しかし、この小説、個人的には気に入らない。例えば、同じ車両にいつも乗り合わせる何人かの乗客。共通しているのは、彼等の乗る車両から見える、とあるアパートの部屋を覗く事なのだが、ひとりのつぶやきから、突然彼らが会話を始めるシーンがある。う〜ん、なんだろう、この安っぽさは。何か、ひどくつまらない舞台の脚本を読んでいるようで、いつもの時代小説で見られる、深みの様なものが全く感じられないのだ。申し訳ないが、『みをつくし料理帖』シリーズには遠く及ばない。
さて、その『みをつくし』だが、最新刊は『美雪晴れ』である。こちらは読む前から鉄板であると信じているので、現在、未読である。こちらはじっくりと読んでみたい。



最後に紹介するのは、J.D.サリンジャーの『フラニーとズーイ』の村上春樹翻訳版である。タイトルの『ゾーイ』が『ズーイ』に変更されているが、この新訳版も現段階では未読である。前回の村上の手による『ライ麦畑でつかまえて』の新訳、これ、正直に言うと野崎版と大した違いを感じなかったんだな。要するに、原作が偉大すぎて、一生懸命訳しても、結局は野崎以上にはならなかったといったところか。今回の新訳はどうなるか楽しみではあるが、過度の期待はしないでおこう。



史記 武帝紀 5 (ハルキ文庫 き 3-20)

史記 武帝紀 5 (ハルキ文庫 き 3-20)

史記 武帝紀 6 (時代小説文庫)

史記 武帝紀 6 (時代小説文庫)

ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫)

ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫)

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)

フラニーとズーイ (新潮文庫)

フラニーとズーイ (新潮文庫)