どうしよっかな〜、BD版 『銀河鉄道の夜』

アニメ『銀河鉄道の夜』(1985)は、宮沢賢治の原作をますむらひろしが漫画化したもののアニメ作品である。監督は『タッチ』などでお馴染みの、杉井ギサブロー、脚本が別役実、音楽は細野晴臣…と、まあ、最初から名作となる事が約束された様な制作陣である。もちろん、大傑作だ。
個人的には、細野の音楽に重きを置く。当時、氏の音楽は、ワールド・ミュージック的なアプローチの作品が多く、自らのレーベルである、"ノンスタンダード(NON-STANDARD)"と"モナド(MONADO)"をテイチクレコードより展開しており、このサントラはノンスタンダードより発売された。サントラ単体で聴いても、文句無く面白いのは言うまでも無いが、映画を見た後であれば、作品の価値は大きく高まる。個人的には「別離のテーマ」は何度聴いても涙を誘う。それは、ジョバンニとカムパネルラが決して一緒に居られぬ世界の境界線上での出来事であるからだ。原作でも、ますむら作品でも、それを読み始めた瞬間から、常に漂い続ける死の匂い。それがなんであったのかを、この一瞬で理解するのだ。死はやがて現実となり、その瞬間より生を理解するのだ。エンディングを飾るメインテーマの「銀河鉄道の夜」もまたいい。映画ではここで常田富士男のナレーションで『春と修羅』の序が同時に流れるのだが、ここは鳥肌モノである。


わたくしといふ現象は
仮定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといつしよに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です
(ひかりはたもち その電燈は失はれ)

これらは二十二箇月の
過去とかんずる方角から
紙と鉱質インクをつらね
(すべてわたくしと明滅し
 みんなが同時に感ずるもの)
ここまでたもちつゞけられた
かげとひかりのひとくさりづつ
そのとほりの心象スケツチです


春と修羅』の序。(著作権消滅作品)

さて、BD版の発売である。購入のポイントは、DVD版からどれだけ画質・音質が向上したのか、この一点のみである。Amazonのレビューを始めとして、この評価が出るまでは、購入を控えていたのだが、現時点では、何とも判断付きかねる状況である。まあ、いい事はいいんだが、レストア作業の粗が目立つという事らしい。もちろん、全体の質が向上しているのは間違いない様なんだが…。あと、いつも思うんだが、ビデオカセットやDVDで発売されていた際に付加された映像特典なんかは、削ったりせずにそのまま収録して欲しいものだ。この作品にも、そういった特典映像が付いていたらしいんだが…。さて、果たして、買うべきか否か…う〜ん、どうしよっかな〜。


細野晴臣銀河鉄道の夜』。アルバムタイトルは、宮沢賢治が傾倒していたエスペラント語にて表記されている。


なんと、全編がYouTubeで観られる!(英語字幕付)

銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜