『J・A・シーザーの世界』が[完全版]となって復刊!

廃刊となっていた『J・A・シーザーの世界』が[完全版]となってついに復刊した。どうやら寺山修司生誕80年記念の一環らしいのだが、オリジナル版の奥付を見ると発売が2002年4月とあるので(増刷がないとすれば)、実に約14年ぶりの復活となるわけだ。実は事前に何の情報も得てなかったので、書店でこれを見つけた時には正直驚いた。ただ、今回の復刊は[完全版]と銘打っているが、オリジナル通りというわけではない。


左:オリジナル版(白夜書房)、右:復刊版(DU BOOKS)

まず、今回の復刊にあたって、あらたな追加記事がある。それは2015年のシーザー最新インタビューと詳細なバイオグラフィだ。実際、この記事がなかったら購入は見送っていたかもしれない。これ以外の変更点としては、オリジナル版にあったCD(CD-EXTRA仕様)『冥蔵歌-J・A・シーザー ライブ封印歌集』が付属していない。このCDには過去のライブ音源や貴重な映像が納められていたのだが、現在はシーザーの音源もかなり発掘、製品化されたため、あえて付属させなかったのかもしれない。ただし、このCDに含まれる全ての音源が現在入手可能というわけではないので注意が必要だ。しかし、オリジナル版では(恐らく)このCDのおかげで、定価が4,700円とかなり高額になってしまっていたので、今回の選択はある意味正しかったのかもしれない。
次に、装丁。オリジナルはハードカバー(上製本)で中の紙質も厚手で重量感があったのだが、今回はソフトカバー(並製本)、中身も薄い紙に印刷され、カラーページも廃止されたのでかなり安っぽい印象。一番の変更点は、フォントをかなり大きくして段組を廃止しページ数を大幅に増やした事。オリジナルでは、かなり小さなフォントで5段組という、まるで週刊誌をそのまま縮刷したようなレイアウトだったので、今読もうとすると、とてもじゃないけど虫眼鏡でも使わないかぎり、まったく判読できない。まあ、天井桟敷時代からのファンも含めれば、完全に高齢の域に達しているので(ウテナ時代からのファンですら大半が30代だろう)、この変更は大正解だろう。


上:オリジナル版、下:復刊版。段組廃止、フォントの変更で、146頁だったページ数が324頁と大幅増。価格は4,700円から2,800円に。

ただ、ディスコグラフィのページではオリジナルが鮮やかなカラー印刷だったので、今回はかなり地味な印象を受ける。そのディスコグラフィだが、オリジナルでは派手に扱われていた『少女革命ウテナ』のサントラ盤各種が、ジャケット写真も曲目も外され、タイトルと型番のみの紹介になってしまった。ウテナのムーブメントはシーザーの歴史の中でもかなりのウエイトを占めている事は確かだろう。ただ、前述の通り、ウテナからのファンももうほとんどが30代以上なのだから、あえてここに拘る必要もないし、ウテナを中心に置いたシーザー論からもそろそろ脱却すべき時なのかもしれない。因みに、オリジナルサントラ盤は現在廃盤らしいが、2016年3月に『少女革命ウテナ/わたし革命ファルサリア<<起源譜>>』、『(同)<<変身譜>>』という2種類の編集盤が発売になる。これはウテナのサントラからシーザーの楽曲のみを抜粋し編集したもので、当然、リマスターが施されている。当時、音質的にはお世辞にもいいとは言えなかったので、どれだけ改善しているのか気になるところである。

昨年発売となった『身毒丸』DVD-BOXのトレーラー。