ECMの超名盤『THE KOLN CONCERT』『return to forever』『BRIGHT SIZE LIFE』が初のSACD化!

高校生の頃に行われたジェフ・ベックの来日コンサート。その時帯同していたのは、ヤン・ハマーではなくスタンリー・クラークだった。当時はベーシストにスポットライトが当てられていた時代で、ルイス・ジョンソンジャコ・パストリアスと並んで人気があった。そのスタンリー・クラークが先か、チック・コリアが先か忘れてしまったが、"リターン・トゥ・フォーエヴァー"に辿り着いた。どうしてもその音を聴いてみたいという衝動に抗えず、なけなしの金を持ってバンドのギターと一緒にレコード屋へ行ったのだが、どのアルバムを買えばいいのかがさっぱり判らない。ただ、今では考えられないが、当時のレコード屋には試聴という荒業が存在していた。当時はアルバムがシールドされていなかったので、売り物のレコード盤を取り出して、頭の部分を少しだけ試聴できたのだ。試聴したのは2枚。予め調べておいたECMの『リターン・トゥ・フォーエヴァー』(チックコリア名義)と、たまたま置いてあった『ノー・ミステリー』だ。最初に聴いたのは前者だったのだが、もう人を不安に陥れる要素しか見当たらない「Return to Forever」のイントロを聴いた瞬間、これじゃない…かな。一方後者は、(恐らく)当時の最新盤で、エレクトリックサウンドがメインで、音的に派手だった。2人で協議した結果、断然後者に軍配が上がる。まあ、まだ高校生だし、当然そうなるわなw しかし、今にして思うのだ。もし、現在のようにYouTubeなんかで全曲を聴いていたらどうだったのだろうと。そして、前者を買っていたら、何となく今とは違った音楽生活を送っていた様な気がしてならないのだ。そのアルバムは、数年後に出た『ザ・コンプリート・コンサート』(1977)を聴いてから遡って買ったと記憶している。

今回のSACD化はタワーレコードの企画で実現したもの。当然ながら限定プレスとなっており販売もタワレコのみ。今を逃すと、今後入手が困難となる可能性が大だ。しかし、このリイシューはその方面ではかなりの衝撃だったらしい。なにしろ、ECM創立者のマンフレート・アイヒャーは音源を厳しく管理しており、CD化の際のリマスターも本人が行い、以降リマスターは行われていないとのこと。まあ、SACDがマニアのものだからこそ、音質的な意味でECMの方針と合致したのかもしれないが、音楽ファイルでのやりとりが一般化している今、いまだパッケージ販売が主流の日本でだからこそ実現したのだろう。
今回の3枚はそのどれもが名盤である。しかし、当時、一部のジャズファンからは、ジャズという範疇から逸脱した音楽と捉えられていたのも事実だ。したがって、今では考えられないような批判も多かったと聞く。しかし、これらの音楽は、後にクロスオーバーやフュージョンと呼ばれるようになり、やがて大ブームを巻き起こした。この3枚はその歴史の始まりでもあるのだ。キース・ジャレットの『THE KOLN CONCERT』は全編即興によるピアノ演奏のライブ。当時のジャズ界を震撼させた。そのキースと、マイルス・デイビスのもとで席を同じくしたチック・コリアの『return to forever』は、後のバンド、"リターン・トゥ・フォーエヴァー"への礎となった作品だ。ジャズでは一般的でなかったローズを前面に押し出し、スタンリー・クラークの先進的なベースもアルバムの要となった。かなりポップな歌モノから、B面全部を使った大作までと、最後まで飽きることのないアルバムだ。パット・メセニー『BRIGHT SIZE LIFE』。初のソロアルバムで、発表当時はまだ21歳という若さだった。ジャコ・パストリアスの斬新なベースも作品の根幹を形作っている。メローサウンドにも通じる大量のリバーブが印象的だが、後年の作品よりはまだジャズ色が濃い。

前述の通り、この3枚は売り切れ必至の超貴重アイテムだ。後悔する前に買え!