松田聖子のSACD/CDハイブリッド盤を聴く〜『Snow Garden』編

クリスマスまでのカウントダウンも残り少なくなってきた今日この頃。今を逃すと意味がなくなる?というわけで、オーディオ誌"Stereo Sound"のSACD企画による松田聖子の『Snow Garden』。今回で第3チクルスとなるこの企画だが、例によってCDとSACDのハイブリッド盤で、基本的にはオリジナルマスターからのリマスターよりDSD化されたもの。CDはこのDSDファイルをPCM化したものである。
本作のマスターテープは一部を除きハーフインチのアナログ・テープに収められていたが、同時発売の『金色のリボン』と同じく、SACDによる既発曲はそこで使われたDSDマスターを使用している(ただし、9.「Let's Boyhunt」はスキーのSEが挿入されているので別マスターだと思われる)。



実はこの『Snow Garden』、発売された1987年当時はまったく興味がなかったため、その存在すら知らなかったほど。しかし、今から数年前、ふとこのアルバムを調べたら、そこに収録された「雪のファンタジー」が「星のファンタジー」の歌詞違いと知り、俄然聴きたくなって中古盤を探し回って(もちろんネットだけど)手に入れた。従って、『金色のリボン』の様に死ぬほど聴き込んではいない。このアルバムが発売されたのは、丁度アナログ盤からCDへの移行期で、アナログではA面が新録音の「Today's Avenue Side」、B面が既発音源から構成される「Yesterday's Street Side」となっている。1曲目「Please Don't Go」は7分超の大作だ。クリスマスで賑わう街角で、見知らぬ路地へ迷い込む。ふと気付くと目の前に巨大なステーションが現れた。もうすぐ異次元行きの列車が発車するのだ…みたいな(以上空想)w ここまでが導入部となり、次にブリッジとなるジャズ風のイントロが始まるが、本当に1曲目に突入するのは2分53秒辺りからである。音楽的な部分とはかけ離れるが、この冒頭部分での様々なSEはオーディオ的には面白いかもしれない。ただ、個人的には冗長すぎてやり過ぎという気もする。せめてOP部分を1曲とみなして、飛ばせるようにしてくれれば良かったと思う。3.「Pearl-White Eve」はシングル盤と別のバージョン、と言われても買った当時はオリジナルを知らなかったので、よく判らないが…。しかし、2コーラス目でバッキングがコーラスだけになり、やがてストリングスとメインボーカルが絡んでくる辺りは、このアルバムの最大の聴きどころかもしれない。SACDでは混然一体となりながらも、各音の輪郭がはっきりと聴こえるが、それぞれが主張しすぎる事もない。非常に繊細でバランスの取れた音を聴かせる。4.「恋したら」。この曲はちょっと和風テイストで、バックの鈴の音がかろうじてクリスマスを想起させるが、なかなかの名曲っぷりで、このサイドを締めくくるにはぴったりだ。空間系のエフェクトが異次元感を醸し出すが、暗闇に照らし出された彼女のボーカルがくっきりとその行方を指し示す。10.「雪のファンタジー」は松本隆監督の映画『微熱少年』のサントラに収められた曲だ。歌詞の良さははオリジナルの「星のファンタジー」に軍配が上がるが、映画に絡めた意味があるのかもしれない(小説は発表当時熟読したが、映画は未見)。それでも、最後の最後、ウィスパーヴォイスには何回もヤラレル。