『ザ・ビートルズ 1+』 ~デラックス・エディション~(完全生産限定盤)(CD+2Blu-ray) BD編。

今回紹介しているパッケージは、CD『1』のリミックス・リマスター盤と、ビデオクリップ映像が収録された『1』のBlu-ray、さらにその限定盤となる『+』のBlu-rayがセットになったものである。CDの方に関しては前回紹介した通り、リミックスという性質上その方向性が自分には全く合わなかった。とはいっても、そもそも彼等の音源は録音・保存状態がいいし、作業は全てデジタル環境下で行われるので、音質的な意味でいえば高品質である事には変わりない。音圧は従来より上がり、各楽器やコーラスといった埋もれた部分に焦点が当てられており、そういった目新しさが新鮮に映る人も多いだろう。ただ、自分には納得の行く解釈ではなかった。


左から、スリップケース、本体+ブックレット、解説書(対訳)

さて、今回はその映像版となるBlu-rayのレポートとなる。前述の通り今回のパッケージはCD『1』の映像版となるため、Disc-01はCDと同じ曲目である。さらに、限定盤となるDisc-02はこれにとらわれない構成、すなわち、1位を獲れなかった作品やシングル化されていない作品も収録されている。まあ、そういった意味で限定盤扱いされているのだろう。まずはDisc-01から。曲目はCDの『1』と同じだが、映像に付けられている音源は様々で、そもそもがライブ音源であったり、例えば「Hey Jude」の様にバックトラックとその時に録音された音が使われているものもある。だが、Disc-02も含め、今回CD用にリミックスされた音源は使用されていないと思われるが、別音源に差し替えられたものは幾つかある。特筆すべきは、Blu-rayに収録されていいる音源はすべて96kHz/24bitで収録されているという事。もちろん、元の音源がそれ以上のものを持ち合わせていないのだから、激的に音質が向上する事はないのだが、少なくともCDのそれよりは有利となる。個人的な感想を述べれば、今回のリミックスCDの音よりも、こちらの映像に付属した音の方がずっとしっくり来るし、何よりも作品本来の形を崩していないのがよい。各作品の撮影データ等は解説書に詳しく紹介されているので、そちらを参考にしてもらいたい。さて、肝心の画質だが、そもそもの画質が悪いもの、例えば、TV録画したビデオ(しかもダビング)から起こしたと思われるものなどは、どう頑張っても劇的な画質の改善は見込めない。逆に、シェイ・スタジアム画像の様に、元々が超高画質のフィルムで撮影され、それがきちんと保存されている場合は信じ難いほどに劇的なレストアが可能だ。従って、本作では作品によって、画質にかなりのバラつきがある。それにしても、今回のプロジェクト作業の様子を紹介したプロモビデオでは、丁寧なレストア作業が映し出されていたが、実際には酷い画質のものの方が多い。「Something」のフィルムに付いた大きな傷が修復される場面があったにも拘わらず、『LET IT BE』関連の映像を使った作品では大きなゴミがそのまま残っており、あの作業は一体何なんだったのかと思わず首を傾げてしまうこともしばしば(既存映像を編集して作った作品は遡って弄れないという事だろう)。確かに激的に改善された作品もあるが、過度の期待は禁物だ。
限定盤扱いとなるDisc-02だが、やはり、『1』のコンセプト上抜け落ちてしまった「Rain」や「Strawberry Fields Forever」等が収録されているのが大きい。というより、それこそがこのパッケージを購入した最大の理由だ。やはり、これらの前衛的な作品は中期ビートルズの要となるものだから、どうしても外すわけにはいかない。まあ、逆に考えれば、このDisc-02に、超貴重な映像が含まれているという事はない。むしろ、『BBCライブ』や『LOVE』発売時に作成されたクリップが多く、馴染みがないばかりか、観ていて思わず苦言を呈したくなるような作品もある。熱烈なファンならば、海賊盤等で慣れ親しんだ作品ばかりだから、今更という感もあるし、この2枚から抜け落ちてしまった映像作品も沢山ある。というわけで、今回の映像盤は、イマイチ消化不良といった印象だ。


解説書とパッケージ。Disc-02のみを取り出すのは難い。


付属のブックレット(ケース本体に貼り付けてある)だが、完全に開いたらバラけそうで怖い。


さて、今回の全7パッケージの総括だが、マニアにしてみれば、このパッケージ=『ザ・ビートルズ 1+』 ~デラックス・エディション~(完全生産限定盤)(CD+2Blu-ray)以外に選択の余地はない。もちろん、映像盤のDisc-02が目当てだ。もしも映像盤Blu-rayがDisc-02を含めた2枚組で発売されていたら、迷わずそれを選んでいただろう。解説書(対訳)は非常に有益だが、必要なければ輸入盤をお勧めする。なにしろ3,000円、定価で比較すれば5,000円程度安く買えるのだから。

1[CD/2 Blu-ray]

1[CD/2 Blu-ray]