芋虫 丸尾末広 (原作:江戸川乱歩)

丸尾である。完全なるモノクロにも関わらず、パノラマを完全に描き切った前作『パノラマ島奇譚』(原作:江戸川乱歩)により、“第13回手塚治虫文化賞 新生賞”を受賞したが、その反動のせいか、今回はエログロ度が高まっており、まるで80年代的アングラ手法に回帰したかの様である。確かに、あれだけの大きな賞を受賞してしまえば、もはやアングラでも何でもないが、この作品が普通の書店店頭に平積みになっている姿には何か違和感を覚える。それは、世間一般の、表現としてのエロに対する許容量が大きくなりすぎて、その希少性が薄れてしまった事によるものだろう。誤解されると困るが、この作品を子供が手に入れること自体は、何も問題はない。むしろ、手に入れて欲しいが(そもそも、活字としての乱歩に触れるのは、小学校高学年が普通だろう)、ただ、問題なのはその方法である。要するに、“子供は見ちゃいけませんよ”と言われた作品を、何とかして手に入れる事にこそ重大な意義があるのだ。大賞を頂いて、お墨付きになった作品を容易く手に入れたところで、何一つ少年のためにはならないのだ! 
少年よ!妄想を抱き、危険を冒して、エロを目指せ!


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