とりあえず、ビートルズの『青盤(Tha Beatles 1967-1970)』の最新リマスター盤を聴いてみた! その2

…続き。
いよいよその音質に迫ってみるのだが、今回のリマスターはブックレットの最後に明記されている一文(All Tracks Didital Remaster P 2009…)からも判る通り、2009年にリマスターされているが、問題なのはその時期で、090909プロジェクトで作成されたものをそのまま流用しているのか、それともその後に作業が行われたのかという部分である。が、まあ、とりあず、聴いてみなけりゃ始まらないw CD盤をセットしSPから第一曲目である「Strawberry Fields Forever」イントロが流れ始める。暫くしてリンゴのドラムが鳴ったその刹那、俄かに色めき立った! おぉ、高音の伸びが異常にいいではないか!これは、どう考えても、今風のリマスターだ! …と思ったが、まあ、慌てるな。他の曲を聴いてみるまでは、まだ何とも言えない。曲が2曲3曲と流れていくうちに、なんだか最初の印象が薄らいできた。あまりにも期待が大きかったが故のプラシーボ効果だったのか? Disc1、2と一通り聴き終わった後で、もう一度最初に戻って聴き直す。う〜む、興奮が冷めてみるとそうでもないw とりあえず、1曲目の「Strawberry Fields Forever」を090909盤と比較してみる。あれ?090909盤は記憶していたよりも音がいい…というか、もっと音の塊というイメージだったのだが、意外にも高音の伸びがいい…というか、同じじゃん!wwww
他の数曲も090909盤で聴き比べてみるが、うーん、やはり、その差はあまり感じられない。例えば問題視された「Somethig」のヒス・ノイズ。こういった部分は全く解消されていないわけで、つまり、もし、差が感じられるとすれば、それはもうちょっと別の部分、つまりバラバラの曲をひとつのアルバムとして並べる際のすり合わせの様な作業の結果で、それが個別で良くなったとか、悪くなったとかといった部分では語るべき問題ではないということであろう。
さて、次はバージョン違いについてである。旧盤発売当時は赤盤、青盤共にCDのオリジナル・アルバムに未収録の音源が収録されていたので、全てのCDを買い揃えていた人でも、食指が動かされた。即ち、赤盤におけるいくつかのステレオ音源と青盤におけるバージョン違いの音源である。旧青盤におけるバージョン違いは「A Day In The Life」と「Back In The USSR」の2曲で、前者はオリジナルがクロスフェードのため、本来であればOP部分に前曲の「Sgt Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)」のエンディング部分の歓声が被っているのだが、これがそっくり消されて、アコギの一音目から聴こえるバージョンだ。しかし、これはそもそも、映画『イマジン』のサントラとして使われたもので、CD音源としても初出ではなかった。後者もクロスフェードの曲で、こちらはエンディングに被っているべき「Dear Prudence」のイントロが消されている。つまり、バージョン違いといっても、曲本編にはなんら変化は無いので、それ程価値のあるものではない。
さて、新盤におけるこの2曲だが、旧盤を踏襲し、同じバージョンが採用されているが、両者共、ある音だけが完全に消去されているのだから、これはマルチ・マザーまで遡って音源を弄ったことになる。厳密に言えば“リミックス”である。個人的には、赤盤・青盤の発売を見越して作業を行っていたと考えるが、他のオリジナル・アルバムと同時に発売する予定であった可能性も考えられる。肝心の音質はというと、やはり、これらが含まれている090909盤のオリジナル・アルバムに収録されたものと変わりは無いように聴こえる。
今回の赤盤・青盤発売に際して、音質の大きな変化を期待する向きもあった。しかし、個人的には、アナログ盤が入り口だったということもあって、090909盤の音質には非常に満足しているため、変化が感じられなかったことに対しては何ら落胆はしていないし、別段述べるべき感想も無い。しかし、これはいつも感じていることではあるが、データ(音源)を収めるマテリアルに最終形が存在しないのであれば、CDの時代はもう終わっていると考えるのが普通だ。ソリッドな再生方式によって駆動系の電気的なノイズから一切開放されるのであれば、オーディオはもう根本的にその形を変えるしかないのだと思う。そういった意味で、今回のリマスターがCD盤における最後の作業であると思いたい。