今年のお布施『ナイアガラトライアングル vol.2 30th Edition』を聴く

毎年恒例となった、ナイアガラ関連のリイシュー盤発売。今年のブツは『ナイアガラトライアングル vol.2』の30周年記念盤。またか!の声も聞こえてきそうですが、まあ、ナイアガラーにとっては年に一度のお布施ですからw
では、さっそくその内容について。今回はDisc-1がオリジナル、Disc-2が前回の『ロングバケーション』30周年記念盤で好評だった純カラオケとなっており、そのうち、「A面で恋をして」のみコーラス有りと無しの2バージョンが収録されている。リマスターの内容は、前回同様、殊更レベルを上げる様なことはせず、アナログ盤の再現を目指したものとなっている様だ(前回も書いたが、ビートルズの090909リマスターにより、全世界的な規模で、レベル上げ競争に終止符が打たれたのだ)。従って、今回も音が丸い。それは、優しいと言い換えることも出来る。本盤については『レコードコレクター』(2012年4月号)誌で特集が組まれているのだが、使用された音源や具体的なリマスター方針の記述が全くないので、詳細を語る事は出来ない。興味のある方は、是非ご自身の耳で確かめてもらいたい。
そもそもこのアルバムは、佐野元春杉真理大滝詠一、それぞれのサイドで音作りに違いがある。ミュージシャンには重複があるものの、レコーディング・エンジニアは別々で、プロデュースはそれぞれ本人達が担っているのだ。もちろん、アルバムを通しての音質的なすり合わせはあるが、三者の微妙な音の傾向の違いも、このアルバムの聴き所である。また、『レココレ』でも述べられているが、大滝言う所の佐野、杉の"ビートルズ・イデオム"、即ち、ケレン味無くビートルズを展開できる世代の表現法がいい。大滝ならパロディでしか成立しないであろう表現も、彼らはさらっとやってのける。それが「彼女はデリケート」であったり「Nobody」であったりする。アルバムは全体的な流れとして大滝へと合流し(9曲目に「週末の恋人達」が来るのは、前半での佐野が置いてきぼりを食わない為の配慮か?)、最後「ハートじかけのオレンジ」で大団円を迎える。
最後になるが、『レココレ』に大滝の興味深い発言がある。この時期、CBS/SONYとしては第二の『ロンバケ』発売を切望していたのだが、大滝はこのアルバムにおいて片面分だけそれをやったのだという。そして残る片面は、松田聖子の『風立ちぬ』のA面(こちらも、通称:大滝サイド)である。その内「風立ちぬ」と「オリーブの午后」、「一千一秒物語」と「白い港」、「いちご畑でつかまえて」と「ハートじかけのオレンジ」、「ガラスの入江」と「ウォーター・カラー」はシンメトリー関係にあるという。それぞれを編集して聴くと面白いかもしれない。


それぞれの"大滝サイド"がシンメトリーな関係にある『ナイアガラトライアングル vol.2 30th Edition』と松田聖子の『風立ちぬ』。

風立ちぬ

風立ちぬ

今年に入り再々リイシューされた『風立ちぬ』。初回限定版はLPサイズ。本文の写真にある盤は"CD選書"で、実はプリエンファシスCDである。