オリジナル盤でよこしやがれ! その1

最近では新譜よりも旧譜を買う事の方が遥かに多いのだが、レコード会社が変更される度に、新たなリイシュー盤が発売されるので、正直な話、際限が無い。まあ、基本的には同じアイテムを延々と買い続けなければならないのだから、売る方だって、新たなリマスタリングを施したり、ボーナストラックを追加したりと、それなりの事をやってくる。
以前にも書いたと思うが、イエスの『危機』(Yes "Close To The Edge"1972)なんてのは、手元に3枚所有しているのだが、現在の最新盤はボーナストラックが追加されているバージョンで、RHINO盤である。しかしこの音源、実は以前日本でLP時代に使用されていたものとは違う。LP時代は、現在の様に世界同時発売なんて事は不可能で、基本的には、本国盤がオリジナルのマスターを使い、他の国はそのテープのコピーを使う事が多かった。また、テープではなく、プレス用の原盤をコピーしたものが使われたりもした。この『危機』の場合も、LP時代の国内盤(日本盤)はマスターテープのコピーが使われていたのだが、このテープの音質は最良とは言えず、例えば、「危機」のOPのSE部分(滝の流れる音や、鳥の囀りが聞こえる部分)では、何やらボコボコといったノイズが乗っていて気になるし、中盤のパイプオルガン部分では、音割れが存在していた。最新のリイシュー盤CDでは、これらの部分には何の問題も無い。ただ、ここに収録されたボーナストラックの「危機」シングルバージョンは、恐らく、マスターからのコピーを使用して作成されたと思われ、音の感じが、ひとつ前のリイシュー盤に似ている(音質は悪く無い)。


最新の、RHINOによるリイシュー盤でボーナストラックが4曲追加されている。

プログレついでにもう1枚、『クリムゾン・キングの宮殿』(King Crimson "IN THE COURT OF THE CRIMSON KING"1969)。いわずと知れたロックの名盤中の名盤だが、このアルバムも3枚所有しているがw これも『危機』と全く同じで、2006年発売〜現在までのリマスター盤は正真正銘のオリジナルマスターだが、それ以前のリイシュー盤の音源は全てマスターからのコピーだ。このオリジナルテープは長年行方不明だったのだが、近年、ようやく発見…というか、このレベルになると、発掘、と言ってもいいが、とにかく見つかったのだ。しかも、スタジオにある流しの戸棚の奥からw とにかく、歴史的な音源が、ダメージも受けずに残っていたのは何よりだったが、これにより以前のリイシュー盤の価値は半減してしまったというわけだ。この様に、オリジナルLPの発売から40年近く経ってから、ようやくオリジナルの音源を使ったCDが発売されるなんてのは、非常に感慨深いけれど、逆に言えば、音楽業界のいい加減さがよく判る事例でもあるわけだ。


こちらは1999年のリイシュー盤。エンボス仕上げによる紙ジャケット、金蒸着ディスクと豪華だが、音源はオリジナル・マスターのコピー。この後、幾度となくリイシューが繰り返されたので、今や大した価値はない。
この項、続く。

危機

危機

クリムゾン・キングの宮殿 (ファイナル・ヴァージョン)(紙ジャケット仕様)

クリムゾン・キングの宮殿 (ファイナル・ヴァージョン)(紙ジャケット仕様)