大滝詠一 『ロング・バケイション 30周年盤』 発売!(前編)

大滝詠一の『ロング・バケイション 30周年盤』(A LONG VACATION 30th Edition with Original Instrument Tracks Album)が3月21日、ついに発売になった!
今回の目玉は何と言ってもDisc-2に収録された"純カラ"だろう。ボーカル・ラインをなぞるリード楽器音の無い純粋なカラオケだ(ボーカル・ラインの入ったバージョンは20周年盤に収録)。
と、その前に、今回の音源について詳しく検証してみたい。まず、最新のインタビューが収録されたレコード・コレクターズ(2011年04月号)には、今回のマスターはアナログであるとの記述がある。このマスターはコピー(2世代目)で、『ロング・バケイション』のアナログ盤シングル・ボックスが企画された1984年に作成されたものとの事(企画自体は中止になった)。このマスターは91年にリイシューされた「CD選書」盤で使用されたとの記述があるが、今から10年前のレココレ(2001年04月号)に掲載されたインタビューには、この時オリジナル・アナログ・マスターの寿命がギリギリで"オーブンに入れてから(88年の作業に続き2回目)回した"が、"完全に死んだ"との発言がある。つまり、オリジナルのアナログ・マスターを回したが寿命が尽きた為、シングル・ボックス用に作っておいたコピーを使用した、と捉えるのが正しいようだ。因みに89年のリイシュー盤で使用されたのはオリジナルのアナログ・マスターだが、これ以上の使用に耐えられなくなるとの危惧から、89年にデジタル・マスターが作成された。しかし、前述のように1991年のCD選書では使われず、2001年の20周年盤で使用された。
…整理してみよう。

◎オリジナルCD(国内盤CDの第1号"35DH1")1982年01月01日発売=オリジナル・アナログ・マスター
◎リイシュー盤(「さらばシベリア鉄道」未収録"27DH5300")1989年06月01日発売=オリジナル・アナログ・マスター
◎CD選書盤(「さらばシベリア鉄道」復帰"CSCL1661") 1991年03月21日発売=1984年作成2世代目アナログ・マスター
◎20周年盤(ボーナス・トラックとしてオリジナル・カラオケ収録"SRCL1661") 2001年03月21日発売=1989年作成デジタル・マスター
◎30周年盤(オリジナル"純カラ"をDisc-2に収録"SRCL8000〜8001") 2011年03月21日=1984年作成2世代目アナログ・マスター



(以上暫定版)
さて、現在、リマスターの世界的傾向は、ビートルズの090909リマスターを筆頭にアナログ回帰にある。これはデジタルを否定するものではなく、かつてオリジナルがアナログ盤で発売されたものは、それに準じた音へ戻そうという意味だ。今回の作業もこの傾向にあり、大滝曰く"上げたところで4デシでいいんだよ"。だから20周年盤のデジタルの勢いを感じさせる音とは違って、音が丸い。もちろん、アナログ・マスターを使っているせいもあるが、同じ勢いでも、押し出される音塊がソリッドではなく、もう少し優しい。もちろん、あのアナログ盤の音を完全に再現、というわけには行かないが、現時点ではこれがベストである事には間違いない。
さて、いよいよ"純カラ"について書こうと思ったが、長くなったので、この項続く。


ロンバケ特集のレココレ最新刊(2011年04月号)とCD発売に合わせて発行されたインタビュー集『大滝詠一 Talks About Niagara』。