『ARDBEG TEN』 (アードベッグ テン)

アイラモルトに嵌るきっかけとなったのが"ラフロイグ10"。その後何種類ものシングルモルトを体験したが、やはりアイラからは抜け出せそうにないというのが、正直なところ。現段階では"ラガヴーリン16"が最高のお気に入りだ。その芳醇な味わいと滑らかな口当たりは、まさに至高の逸品と言うべきものである。
ところで、ショット・バーなどで頂く場合、その印象が後にぼやけ気味になる事が多いのだが、それには理由があって、まず、いきなりシングルモルトを飲みには行かない。要するに、ちょいといい気分になって、気が大きくなったところで、いい酒を飲みに行こう…となるからだ。だから、とりあえずこの時点で何でも美味く感じるw 逆に考えれば、この時美味かったからと言って、後にボトルで買い直して失敗する場合もあるわけだ。が、アイラの場合は違う。どんなに酔っていても、その味を忘れることはほぼ無いからだ。ただ、細かなニュアンスは、やはりじっくりと家飲みで堪能したいというのがある。
さて、今回は、ラガヴーリンと対を成す関係にある"アードベッグ・テン"だ。対の関係とは、ラガヴが上品かつ芳醇であるならば、こちらは、粗野で荒々しい。アイラの特徴で表現するなら、とことん煙臭く、ピーティーでヨード臭に満ち、塩辛い。判り易い構図としては、ラフロイグがこのふたつの中間に当たると考えればよいだろう。しかし、このボトルを初めて開栓した瞬間は、煙が目に沁みる!と錯覚したほどw いや、大袈裟でもなんでもなく、それくらい強烈にスモーキーなのだ。また、1杯目をグラスに注ぎ、鼻を突っ込んだ瞬間に思い浮かんだのが、厩舎の臭いだ。あの、藁が饐えたような強烈なやつ。
…と、ここまで読み返してみると、とてもじゃないが、美味いモルトの紹介文とは思えないw しかし、ある意味それは当たっているのかもしれない。なにしろ、アイラモルトは、一口目で気に入るか二度と飲まないかのどちらか、と言われているからだ。そんなアイラの中でも、かなりワイルドな奴と考えれば、こんな紹介文になってしまうのは当然とも言える。
さて、今宵は、この煙臭に包まれながら、どんなお気に入りの音楽を聴こうか? これこそが至福のひと時なのである。


アードベッグの現在の所有者はLVMH=モエヘネシー・ルイヴィトン社(グレンモーレンジ社)だ。
非常にケルティックなロゴが印象的な外箱がいい。