映画監督のケン・ラッセル氏が死去

11月27日、英映画監督のケン・ラッセルが死去した。享年84歳。
数々の問題作を発表してきた彼だが、ロック好きとしてはやはり『トミー』("Tommy"1975)を外すわけには行かない。これは、ザ・フー(The Who)の同名アルバム(1969)を映画化したものだが、そもそもこのアルバムにはきちんとしたストーリー(文章化されたもの)が存在しておらず、ただ何となく、個々の楽曲からそれらしきものを紡ぎ出して行く他なかったのだが、映画化の際にはそれらの補強の為に、設定の見直しや曲順の変更・追加などがなされ、より理解しやすい内容となっている。が、それでもまだ難解な内容で、個人的には、抑圧された現代人の精神的解放に至るまでの道程、と勝手に解釈していたw ロックの映画としては最高峰で、これを凌駕する作品は未だ現れてはいない。ハイライトとしてはティナ・ターナーの「アシッド・クィーン」とエルトン・ジョンの「ピンボールの魔術師」であろう。前者は現代版シャーマンといった役で、麻薬を使い精神治療を行うのだが、これが恐ろしい(歌唱力的な意味で)。もう、食われちゃった的な印象しか残っていないw 後者は、実際には「魔術師」=トミーの事で、エルトンはピンボールの対戦相手として巨大なブーツを履いた奇妙奇天烈な出で立ちで登場し、ピンボールも、台に取り付けられたキーボードで玉を操作するという凝り様。映画トミーといえば、このシーンが真っ先に紹介されるほど有名だ。本編ではあまり出番の無いザ・フーのメンバーも、ここぞとばかりに大暴れw ただ、当時エルトンのプロデューサーであったガス・ダッジョンの意向が強く働いて、実際の演奏はエルトンのバックバンドで、全楽曲中この曲のみ、ガスのプロデュースで製作された。





この映画の成功により、高い評価を受けたケン・ラッセルは、同じく、この映画より役者としての評価を獲得したロジャーと組んで、次作『リストマニア』を製作する。音楽は当時脂の乗り切っていたリック・ウェイクマン。前作のアルバム『アーサー王と円卓の騎士たち』に続き、この映画のサントラとして『リストマニア』を発表し、高評価を得た(ヴォーカル曲はロジャー他が担当)。ただ、映画の出来としてはやはりトミーに遠く及ばない。
最後に、個人的に好きな映画として『アルタード・ステーツ』("Altered states"1979)を挙げておく。この映画は、人間の脳には生物が誕生し人類に進化するまでの全ての記憶が詰まっており、それを開放することにより脳のみならず生物の根源にまで迫ろうと考えた、ジョン・C・リリー博士の実際の研究がモデルとされており、アイソレーション・タンクにより完全に隔離された状態で大量のLSDケタミンを服用する事により得られる、現実とも幻覚とも区別が付かない未知なる体験が描かれている(博士は自身を実験台とし何度も命を落としかけた)。しかしこの映画は、別にリリーや麻薬といった知識とは関係なく、実は映画として面白いw 単純に、娯楽作品として非常に良くできた作品であるのだ。動物園の羊を食って翌朝裸で発見される場面とか、ねぇw
冥福を祈る。


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